明確な目標に情熱を注ごう|徹底した逆算思考で掴んだ美容医療業界No.1

SBCメディカルグループホールディングス CEO/湘南美容クリニック創業者 相川佳之さん
Aikawa Yoshiyuki・神奈川県出身。日本大学医学部卒業。麻酔科研修後、都内大手美容外科に勤務。2000年に神奈川県藤沢市に湘南美容外科クリニックを開院。その後、経営の多角化を図り、不妊治療、歯科、整形外科などの保険診療分野に進出。医療機関の経営支援事業をおこなうSBCメディカルグループホールティングスCEOとして、2024年9月の米国NASDAQ市場上場を陣頭指揮したほか、日本美容外科学会理事、先進医療医師会参与などを務める
テニスの成功体験がヘタレな自分を変えた
人生のテーマは「情熱」です。
創業時に掲げた「日本で一番患者様が来てくれる美容医療グループになる」という夢に、誰よりも情熱を注いできました。創業時の夢を叶えた今も「2035年までに日本一の医療グループになる。その後は世界一の医療グループを目指す」という目標へ走り続けています。
今でこそ大きな夢を掲げていますが、昔は日本一を目指すなんて到底考えられませんでした。大学生まではいわゆる「ヘタレ」だったと思います。
薬局を営む薬剤師の両親のもと、子供のころから薬剤師になるレールが敷かれていました。大学受験の時は薬学部を目指していましたが、あまのじゃくな性格からか、このままレール通りに進んで良いのか疑問を抱くようになりました。そして大学入試2週間前に突然進路を医学部に変更。薬剤師よりも医師の方が仕事の幅が広く、モテるんじゃないかと思ったからです。
自ら医学部に入ると決めたものの、当時を思い返すと勉強もヘタレでしたね。医学部に入るなら最低でも1日8時間くらいは勉強するものですが、そこまでは頑張れませんでした。結果的に二浪して日本大学医学部に入学しました。
人生のターニングポイントになったのが、大学入学後の硬式テニス部の活動です。中高生の時に軟式テニスをやっていて、県内3位くらいの成績だったので、大学でもすぐに勝てるだろうと思っていました。しかし周囲には小さいころから硬式テニスをやってきた人たちばかりで、その中で勝つことは非常に難しかったです。
思うように勝てないことが悔しくて、「一番になりたい」という気持ちを抱くようになりました。関東の医学部・歯学部生が集まる大会があり、そこで優勝することを目標に掲げました。
それからはとにかく練習しました。勉強よりテニスをしている時間の方が長かったと思います。そして大学4年生の時、やっとの思いで優勝を叶えました。「自分は努力すれば結果を出せる人間なんだ」。これが自分を信じられるようになったきっかけです。

業界を変えたい一心でNo.1にまい進
美容医療業界に興味を持つようになった理由は、経験値を多く積むことができる成長環境です。ゆくゆくは薬剤師になり家業を継ぐ約束をしていたので、医者として短期間で成長したいと思っていました。通常の外科でも手術は3日に1回くらいですが、美容外科は毎日手術をします。
他にも救命救急や、当時激務だと言われていた日本大学の泌尿器科で迷っていた中、決め手となったのは「患者の気持ちがわかる医者になる方が良い」という父の言葉です。私は子供のころから背が低く、このコンプレックスに悩み続けていました。
美容外科には、同じようにコンプレックスを抱える患者様が訪れます。美容外科であれば、患者様の悩みに心から共感することができる。そう思い、卒業2週間前に美容医療の道に進むことを決断しました。
その後は美容外科での勤務を経て、2000年に湘南美容外科クリニックを開業。
今では身近な存在となった美容医療ですが、当時は費用が非常に高く、今では数百円でできる両脇の脱毛が、当時は高いところで100万円。一部のお金持ちだけが利用していました。
美容医療はやれば効果があるからこそ、コンプレックスに悩んでいる人々がもっと気軽に利用できないか。美容院のような身近な存在になってほしい。業界を変えるには、業界でトップになるしかない。だからこそ、創業時から一貫して「日本で一番患者様が来てくれる美容医療グループになる」という目標を追い続けました。

逆算思考でスモールステップを積み重ねよう
これからキャリアを歩み始めるみなさんにも、ぜひ目標を明確に持ってほしいと思います。無謀なものでも構いません。自分が叶えられると本気で信じられる夢であれば、その力が備わっているものだと思っています。
私は「世界一のお金持ちになる」という夢を持ったとしても、それを叶えられる自信はありません。ですが「世界一の医療グループになる」という夢は、自分なら叶えられると本気で信じています。
目標を決めたら、あとはマイルストーンを敷いていくイメージです。目標から逆算し、スモールステップを積み重ねていきます。たとえばスポーツで日本一になりたい夢があるなら、まずは同じ部活の同級生3人の中で一番になる。それができたら10人で一番になる。それを繰り返すことで、着実に目標に近づいていきます。

目標を決めずに足し算で考える人もいますが、私はゴールから逆算することを徹底してきました。世界一の医療グループになるには、まずは日本一になる必要がある。それを2035年までに達成できるように努力し続けています。
こうやって大きな夢を追求し、一生懸命やり続ける。私にとって、これこそが自分を愛せる状態です。だからこそ、夢に向かって情熱を注ぎ続けることをやめられません。
技を盗むことが最速の上達
キャリアを歩むなかで、もちろん壁にぶつかることもあります。そんな時、自分の能力や経験だけで解決しようとする人もいますが、それでは非効率です。たとえばゲームを攻略したい時、マニュアル本に頼ればすぐにクリアできますよね。人生も同じです。
大学のテニス部では、強い大学へ見学に行って、練習メニューやコーチの取り入れ方などたくさん真似をしていました。だからこそ優勝する夢を最速で叶えられたと思います。
開業してからは、美容医療業界は女性スタッフが多く、マネジメントのやり方に悩まされました。当時は女性のリーダーシップの本を読みまくっていましたね。今も成功者や上手くいっている企業の本を読んだり話を聞いたりするのが好きで、積極的に情報を集めています。
目標に向けて足りない部分は、すでに上手くいっている人の話を聞き、素直に取り入れる。先輩や本など何でも良いと思います。行動し続けることで、目標に近づいていくはずです。
「一生熱を注げる仕事かどうか」を決めるのは直感
就職先を決める際には、ぜひ自分が好きなことや興味のあることを仕事にしてほしいと思います。いくらお金のために頑張って働いたとしても、その仕事が好きでたまらない人には勝てません。みんなが大変だと思うことや残業だって、楽しくてたまらないのです。
私の場合はそれが脂肪吸引でした。施術方法を研究し、どうすればより良い結果が出せるかを考えるのが楽しくて仕方ありませんでしたね。
好きなことを見つけるためにも、まずはとにかく経験すること・人に会うことが大切です。今の時代は情報過多で、なかなか動き出せない人が多いように思います。ですが結局、動かないと何もわかりません。まずはなんでも良いからやってみる。そうやって経験値を積むことで、自分自身のことや目指す方向性が見えてきます。

そして最後は結局、自分の直感が大事だと思います。インターンシップや説明会に参加するなどして、企業の雰囲気を肌で感じる。そこで違和感を感じたなら、入社してもそれが消えることはありません。むしろ大きくなります。
私も採用する際は、直感を大切にしています。過去を振り返ると、直感で「ん?」と思っても「過去の実績がすごい人だから……」と後から理屈をつけて納得させたような時は、大半うまくいきませんでした。
会社を選ぶ時も同じで、パンフレットを読むだけじゃなく、会社や社員と実際に出会った時の直感を大切にしてください。そうした経験を積むほど、違和感に気づきやすくなります。たくさん行動して経験を積み、自分の直感を磨くことで、自分が夢中になれるキャリアを歩んでほしいと思っています。

取材・執筆:加田絢子