目的を明確化しなければ成功への道筋は描けない|自分の長所を伸ばした先に理想のキャリアが見つかる

monocla(モノクラ) 代表取締役 山田 真史さん

masafumi yamada・1983年、北海道出身。リクルートカーセンサーにて営業推進や、販売管理の設計、リクルートグループの新卒研修などを担当した後、2018年にグルーコードの社長室長に就任。グルーコードグループ全体の事業戦略責任者として企画、サービス運用設計に携わる。2021年にグルーコードのグループ会社であるmonoclaの代表取締役社長に就任

この記事をシェアする

「やりたいこと×現状の自分に足りない能力」でキャリアを切り開いていった

若い頃はやりたいことでしかキャリアを考えていなかったですね。子どもが好きだから目指した保育系の仕事は体験学習で断念したり、好きな音楽に携わるために進学した音響系の専門学校では機械音痴が発覚して進路を変更したりと、踏んだり蹴ったりでした。

そんな中で自分にとって本当にやりたいことを考えた際に人の人生にかかわる仕事をしたいと思ったんです。それが結婚式に携わるウェディングプランナーでした。

私には高校時代、初恋の相手に4回告白して振られた経験があります。ただ、人との出会いを学ぶことができたり、大切な人を笑顔にしたいという思いが芽生えたりと大きな経験でした。そんな背景から価値観がマッチしたウェディング業界を選びました。

やりたい仕事を選んだ新卒時代ですが、30代の先輩プランナーの給与を聞いて絶望してしまいました。将来を考えると転職するしかないと思い、ウェディングにかかわる仕事で思いついたゼクシィを目指しました。ただ、現実は甘くなく不採用。

ゼクシィにどうしてもリベンジしたい気持ちもあり、面接で落ちた理由を分析しました。その結果「トーク力が足りないのではないか? 」という仮説に辿り着きました。そこで人の人生にかかわることができ、トークスキルが身に付く新車の営業を3年だけやろうと転職しました。この辺から目標に対して、自分の足りない能力を補うこともキャリア選択で考えるようになったと思います

キャリアを見つめ直せた上司の他己分析

新車の営業では北海道の売上ランキング2位になるなど順調にスキルを伸ばしその後、想定していた3年で退職、しかし、肝心のゼクシィへの転職は叶いませんでした。それならと、自動車業界で学んだ知識を活かして同じリクルートグループに潜り込もうと考えました。そして、自動車事業を展開するリクルートカーセンサーに転職しました。

リクルートカーセンサー時代は最終的に販売管理周りのプレイングマネージャーを任されました。就業時間のほとんどは約400名の営業マンの対応をしたり、上層部へのプレゼンをしたり、部下のマネジメントをしたりするため、販売管理のフローやルールを作成することやマネジメント計画を立てるなどの自分の仕事は、定時後にするしかないほど目紛しい日々でした

器用貧乏である私は大体の業務は8割程度のレベル感でこなせていました。ただ、器用貧乏な人間は事業戦略や営業推進などを専門的におこなっている本職の人に勝てないことに気づき、「自分は何ができるんだろう? 」と無力感を覚えました


そんな悩みを飲みの場で吐露したら、上司が「今からお前の良いところを挙げていこう」と言ってくれました。「お前は普通にやってるから当たり前になっちゃってるけど、周りにやらせてもこんなことできないぞ」といった感じで、私にできて周りの社員にできないことを2時間びっしり教えていただき、それを私はひたすらメモっていました

これを機に自分というものの価値を把握できたり、今後すべきことが明確になったりと意識が明らかに変わりましたね。

企業選びの判断基準はヒト・モノ・カネの何を目的として仕事をするか

基本的に人が働く目的は「誰かのために働く」「いいものを作りたいから働く」「お金を稼ぎたいから働く」という3つに分かれると思っています。私の場合は仕事をした結果、半径3メートル以内にいるような人たちに良い影響が出て、笑顔が生まれる状態にすることが原動力になっています。

たとえば、「良い車を提案してくれてありがとう」とエンドユーザーに近い新車の営業職は良い影響が出ていることが分かりやすいですね。ただ、リクルートカーセンサー時代の私のように直接人と対峙することがない場合は「誰かのために働く」意識が薄れてしまうかもしれません。

それでも、いつも一緒に切磋琢磨している営業が販売店様から褒められたとか、身近な人がカーセンサーを利用して車を買った際に、「カーセンサー分かりやすいよね!いい車と出会えた!」と聞いたりすると、間接的な感謝でも、誰かのために働く原動力になる場合もあるでしょう。

自分がやれることに目を向けてみる

記事中写真

自分のやれることをやるのか、やりたいことをやるのかの判断をする決断もファーストキャリアを選ぶうえでは重要です。やりたいことが明確なら目標を叶えるために最短距離で努力した方が良いと思っています。たとえば、過去の私がゼクシィで働きたいとなった場合は、ちゃんと大学を出て就活をすることが最短距離の努力ですね。

ただ、やりたいことができる企業に就職したいという考えに縛られている新卒生が多い気がします。自分がやりたいことが明確にない場合はそこまで深く考えなくても良いと思います。やりたいことや目標がなければ、取った行動がキャリア形成において成功か失敗か判断できません

その場合は、あまり深く考え過ぎず、学生時代に「あなたはこれが得意だよね」と周りに褒められた経験をもとに企業を選んで一心不乱に頑張ってみるといいと思います。


私は営業以外の職種を目指している際に「営業をやりたくてもできない人がたくさんいるんだよ」と言われて、仕事選びにおいて、やりたいことだけに目を向けず、自分ができることに目を向けて伸ばしていくことも大切なのだと再認識しました。自己分析でも強みは分かりますが、第三者から言われたことを忘れないようにしてほしいですね。「こんなことできるのは当たり前だよ」と卑下せず、言われたことをポジティブに受け取ってみてください

学生からキャリアについて質問を受けたり、SNSを見ていたりしていると、「新卒で入った会社にずっと勤めたい」「自分が目指す形でキャリアアップをしていきたい」というように回り道をしたくない学生が多い印象です。新卒カードを無駄にしてはいけないという考えが強いと思いますが、回り道をしても私のようにキャリアを形成して、生きていけます

がんじがらめになるほど自分のやりたいことを考えるくらいなら、何も考えないくらいの方がフラットな意識で企業を選べるようになるかもしれません。結果的には近道になることも多いと思っているので、回り道をしてもいいと考えるのが大切ですね。

生き残るためにはヒューマンスキルを磨こう

今後は人にモノを教えられる人材や新しいものを生み出せる人材、いわゆるヒューマンスキルが高い人の需要が増すと思います。たとえば、今後プログラミングのコードを自動で書いてくれるサービスが出てきてしまうとプログラマーの需要は減ってしまうと考えられます。

機械に取って代わる仕事が今後はどんどん多くなってきます。

消費者に商品を便利に使ってもらったり、人々の生活を豊かにしたりするためにアウトプットできる仕組みそのものを作る存在は重宝されるでしょう

また、従業員数が多いと縦割りの組織になってしまい、組織間の連携が取りにくい問題が発生します。全体的な成果を最大化させるにはスペシャリストだけでなく、効率化を図るために他部署に協力を仰いだり、他部署のやり方に意見できたりする人が必要になるんです。人と人をつなげられる人やヒューマンスキルを兼ね備えた人が生き残ると思っています。

ヒューマンスキルを高めるには相手のことを理解しようと努力しましょう。たとえば、様々な人間関係においてストレスを感じさせないような振る舞いとは何かを考えたり、サービスを出す時は見えない誰かのことを想像したりすることを大切にしてみてください。

失敗したからといってすぐにやり方を変えない

業務で失敗した場合はすぐにやり方を変えるのではなく、「なぜ、駄目だったのか? 」をちゃんと分析してみてください。「ダメだった=間違いだった」と考えるのは軽率です。やり方に問題があったわけではなく、タイミングなどの別要因かもしれません。ですので、すぐにやり方を変えることが成功につながるとは限りません。

私はリクルート時代に東京本社に異動して、高学歴の優秀な社員と仕事をするようになりました。「俺らが上手くまとめるから、山田くんは思ったことを好きに話していいよ」といった具合に私の発言からおもしろいアイデアを抽出してくれました。

ただ、ロジカルにものを語る彼らへの憧れや同じ土俵に立ちたいという対抗心もあり、ロジカルな思考をしようと思い、自分のやり方を変えたんです。すると、変えた途端に「おもしろいことを言わなくなったね」と評価を落としてしまいました。

私にはロジカル思考ではなく、自分の思考や感情から新たな課題を見つけていくアート思考が合っていたのにそれを変えてしまったことが原因でした。やり方を変えてしまうと自分というものに魅力がなくなってしまうリスクがあります。やり方を変えることは簡単ですが、自分がやってきたことには自信を持ってほしいですね。

就活や入社後の業務でも上手くいかない場面があるでしょう。そんな時こそ自分を信じて、やり方を貫き通す選択肢を検討してみてください。

取材・執筆:丹治健太

この記事をシェアする