明確な目標を設定することが成長への近道|自身の「夢中体験」からキャリアの軸を見つけよう

HALF TIME(ハーフタイム) 代表取締役 磯田 裕介さん

Yusuke Isoda・1987年大阪府生まれ。大学卒業後、人材紹介会社のインテリジェンス(現パーソルキャリア)入社、全社MVP含め社内MVP賞を6度受賞。 同社の海外事業拡大のためシンガポール、ベトナム法人に出向。その後、スポーツ業界特化型の英系ヘッドハンティングファームSRI(Sports Recruitment International) のシンガポール法人で初の日本人として入社し、日本事業の立ち上げに従事。シンガポール勤務の後、日本へ赴任し、欧州の国際競技団体やサッカークラブなどの採用支援をおこなう。2017年8月にスポーツビジネス領域で採用、PR・ブランディングサービスを展開するHALF TIMEを設立し現職

この記事をシェアする

主体性が重要となる時代。何かに夢中になって努力する体験をしてほしい

これからの時代は、とにかく主体性が問われる時代だと思っています。

新型コロナウイルスによって働き方が大きく変わりました。世界的にもリモートワークが主流になったことで、側に上司や先輩がいなくても一社会人として自己をマネジメントする能力が今後もとめられるでしょう。

目標を設定し、それに対して自分自身でモチベーションを維持しながら仕事の進め方を考え、積極的に仕事に取り組んでいかなくてはいけません

そこで大切になってくるのが、学生時代の「夢中体験」であると考えます。自分の興味があることであれば、人って自然と努力ができるものです。何かに夢中になって一生懸命努力した経験の積み重ねが習慣となり、仕事をするときにも生きてきます。だからこそ、好きなことを追求し、無我夢中で取り組む体験をたくさんしてほしいと思います

とくにスポーツを経験してきた人であれば、目標を立ててその目標に向かって努力することを当たり前のこととしてやってきたはずです。それはしっかりと習慣化されているはずなので、仕事でもその力を存分に発揮できるはずです。

スポーツに限らず、音楽でも勉強でも趣味でも、何かに夢中になったという経験が大事。これからの時代に求められる人材はまさに、自分で動ける、生み出せる主体性のある人です

これからの時代に求められる人材・スキル

  • 仕事での具体的な目標を設定できる

  • 目標を行動に落とし込める

  • モチベーションを維持できる

  • 仕事のやり方を自ら考えられる

プロサッカー選手を目指した学生時代。伝えたいことを伝えられない「言語の壁」を痛感

私自身は、サッカーを通じて、目標を設定しそこに向かっての努力を重ねるという経験を積んできました。サッカーを始めたのは5歳。プロサッカー選手になることを目標に、高校はサッカー推薦で大阪の強豪校に進学。高校時代は大阪府大会で優勝も果たし、大阪府高校選抜にも選ばれました。

プロサッカー選手になるには何をすれば良いかを考え、しっかりと行動に落とし込み、愚直に努力してきた自負があります。その結果、大阪府高校選抜として晴れてイングランド遠征へ行く権利を獲得。プレミアリーグのユースチームと試合をすることができました。

しかし、世界の壁は高く、DFだった私は、イングランドチームのFWとマッチアップしたのですが、その体格差からまったく太刀打ちできませんでした。

さらに、負け以上に悔しかったのが、プレー中に体がぶつかった際の小競り合いで相手に何も言い返せなかったことです。英語で言われても英語で言葉を返せなかったことに、当時は強い危機感を感じました。

この遠征で世界の壁を目の当たりにしたこともあり、大学に進むタイミングでプロの道はあきらめました。と同時に、真っ先に考えたのは、絶対に海外に留学しようということです。とにかく英語の勉強に取り組もう。大学に入学したとき、そう決心しました。

イングランド遠征前後の磯田さんのキャリアプラン

それまでサッカー中心に生きてきたので、まずは自分自身の「習慣を変える」ことが大事だと考えました。大学への通学に片道1時間半かかったので、その移動時間を活用して英字新聞を読むことから始めました。でも、はじめは単語が全然わからなくて、当然ながら苦しむことに。

ただ、大学の交換留学制度を使っての留学を考えていたので、わからない単語が出てきたら一つ一つ調べるなどして、諦めずに少しずつ英語の勉強を習慣化していきました。単語帳での学習は退屈すぎて続かないので、洋楽を聞いたり、海外ドラマを見るなど工夫もしました。

一方で、サッカーは私にとって大きな武器の一つであることは間違いないと思ったので、プロの道はあきらめたもののサッカーは続けました。

体育会のサッカー部に入り、実際はサッカーと勉強を両立させた形です。イングランド遠征での体験が大きなモチベーションとなっていて、両立を苦だと感じることはなかったです

困難な状況も「自分に問題がある」と認めることで大きく成長

英語の勉強の甲斐あって、大学3年のとき、アメリカのカリフォルニア州立大学ノースリッジ校へ交換留学という形で留学が実現しました。現地でもサッカー部に入ると、そこでまた貴重な体験をすることになったのです。

サッカーの技術は認めてもらえたので、チームメートは仲間として快く受け入れてくれたのですが、メキシコ系の人たちと白人が中心のチームの中で、アジア人は私一人だったので目立つのです。対戦チームの選手や観客から野次を飛ばされることがありました

さすがの私も、精神的にストレスを感じました。しかし、自分が困難な環境でこそ成長できるタイプと知っていたため、現状をポジティブに捉え「自分のサッカーのパフォーマンスが低いのが問題なのだ」と考えるようにしました。

良いパフォーマンスをしてゴールを決めたら相手は黙るんです。つまり、「野次を飛ばされるのは自分自身の責任であって、良いプレイができなかった自分のスキルに責任がある」と認めることで納得できました。

ヤジを飛ばされたことをバネに、もっと練習しなくてはと高みを目指して頑張ることができましたし、実際スキルも上がったと思います。「他人が悪いのではなく自分に問題があるのだ」とポジティブにとらえると、目の前の課題は自分自身で乗り越えることができる、という思考のスキルを身に付けることができました。今となれば、とても良い経験ができたと思っています。

アメリカ留学時に学んだ考え方

また、サッカー部では「やればできる」という大きな自信も得ました。帰国するときにはサッカー部のチームメイトから信頼される存在になれましたし、ビジネスの世界でも実力さえあれば世界で勝負できるんだという自信をもてました

留学を機に新たに設定した目標は「グローバルに活躍できるビジネスパーソンになる」。アメリカ留学は私の人生にとって大きなターニングポイントでしたね。

「グローバルに活躍できるビジネスパーソン」になるための最短距離を求めて就職活動

留学から帰ってくると就職活動を始めました。「グローバルに活躍できるビジネスパーソン」になるためには、どういう業界に進むのが一番早いかを第一に考えました

海外駐在のチャンスがあるという軸で、グローバル展開をしている大手メーカーや商社、人材業界などを中心に幅広く見て回りました。最終的に入社を決めたのは、インテリジェンス(現パーソルキャリア)という人材会社です

人材業界を選んだ理由は2つはあって、1つは、当時の日系の人材会社は、国内では規模は大きいものの海外でそこまで大きな存在ではなかったので、逆に「今、日本の人材会社に入れば海外に行くチャンスが一定数あるのではないか」と考えたからです。早い段階で海外駐在を経験して、少しでも早くグローバルに活躍できるビジネスパーソンという目標に到達したいとの想いがありました

もう1つは、人にかかわるビジネスに興味があったからです。サッカー中心に学生時代を過ごしてきた中で、組織の力やその存在の大きさを感じる機会がたびたびありました。人材会社の役割は、個人に対しては良い仕事を見つけてあげること・組織に対しては良い人材を採用して組織の成長の加速に貢献できる、という両面があります。人材は組織にとって重要なキーとなると考えたので「人材業界に飛び込んでみたい」と思いました。

インテリジェンスに入社後は、すぐに「3年目までに部署内で一番大きなMVPをとる」という目標を定めました。1,000人規模の部署にいたのですが、3年目の終わりに目標を達成。その後、シンガポールとベトナム支社でキャリアを積むことができました。

「40歳までに世界的な経営者として活躍したい」から逆算してキャリアをデザイン

インテリジェンスで着実に経験を積んでいく一方で、日本文化がまったくない環境でも勝負できる人材になる必要があると感じ始めました。そもそも「グローバルに活躍できるビジネスパーソン」になるために最短距離で成長したいと考えていた私だったので、当然といえば当然の流れでした。

インテリジェンスを退職し、シンガポールにあるイギリス系の人材会社に日本人としてはじめて飛び込むことを決めました。それと同時に「40歳までに世界的な経営者として活躍したい」という目標を設定。目標から逆算をして「20代の間に起業する」という目標も掲げました。

シンガポールのイギリス系人材会社で1年働いた後、ヘッドハンティングを受けスポーツ業界に特化した人材会社と巡り合うこととなり、その会社に転職して1年働きました。

そして、29歳のときにスポーツビジネスの領域で起業をすることとなりました。シンガポールで偶然巡り合った「人材×スポーツ」という仕事は、小さい頃からずっとサッカーをやってきた私にとって特別なもの。スポーツの発展につながる仕事ができて本当に充実しています。

目標さえ明確になれば、進むべき道は自ずと見えてくるものだと思っています。そこに最短ルートで行く環境を選ぶこともできるし、人より早く成長することもできるはずです。すべては目標を設定し、タイムラインをしっかりと引いていつまでに何をすべきかと行動に落とし込むことから始まります

磯田さんが起業に至るまでの、目標設定の変遷

就職活動は、自分を理解することからはじめてほしい

どんな業界が良いかと熱心に業界分析をするより、まずやるべきことは自分の理解を深めることです。「自己分析を最優先にしてほしい」と伝えたいです。

自分自身はどういう人間で、これから何を望んで生きていくのか? 」という道を明確にすること。そのうえで、どういうものを重視して仕事をするかを考えてほしいと思います。

自分を知る方法は、実は過去の行動やその行動に対してどう思ったかというところにすでにヒントが散りばめられているんです。その行動や感じたことの「意味」をきちんと拾って思考する作業をしてみてください。

就職活動の進め方

  • 自分の理解を深める

  • この先何を望んで生きていくのか? という道を明確にする

  • 何を重視して仕事をするかを考える

  • どのような選択肢があるかを知るため、業界研究や企業研究をする

意味」を拾って思考する、一つのエピソードを紹介します。

高校のときに、大阪府大会で優勝したんです。ずっと「府大会優勝」を目標に頑張ってきて遂に優勝できた。すると、満足したとともに「次は全国で優勝したい! 」という想いが芽生えてきたのです。

そこから「私はどんな人間なのか? 」と考えたときに思ったのが、小さな世界で一番になっても満足しない人間なのだ、ということ。仮に全国で優勝できても、次は世界一になりたい人間なんだなと思いました。

一つの目標を達成したら、次はもっと上、もっと上、と目指したい人間なのだから、ビジネスでもグローバルで何かトップになりたい人間なんだと考えて、そこに到達する道を描いて選択をしてきました

誰でもこれまでの経験を振り返れば必ず、自分自身の傾向や感じ方の「意味」を拾うことができるはずです。どんなときに喜びを感じることが多かったのか。たとえば、両親に喜ばれたときなのか、目標を達成したときなのか。自分自身のことを本当に良く理解してから、業界分析や企業訪問を進めていってほしいと思っています

ファーストキャリアは「本当に進みたい道かどうか+直感」で判断

かくいう私も、就職活動では結構苦労しました。内定をもらうまでに時間がかかり、1社も内定をもらえないときはものすごく不安になったのを覚えています。

就職活動を成功させるには、その不安をどう力に変えるかです。自分に何が足りないのか考え修正して行動してみる、それでもだめならばまた考えて修正する、というサイクルを回すしかない。不安を解消するには、自分を信じることです。自分で自分を信じてあげて、修正のサイクルを回して乗り越えてほしいと思います

最終局面で就職先を決める際は、「自分が進みたい道は本当にこの道かどうか? 」を判断することが大事だと思います。これは就職活動をスタートするタイミングでやっておくべきことであって、「自分自身を良く理解しましょう」という話に戻るのですが、自分が進む道が明確になっていれば、最後はその会社が自分の進みたい道であるかを再確認すれば間違いないと思います

もう一つのアドバイスとしては、直感も大事にすること。社員の方と話をする中で、「こっちの社員の人といる方がなんか心地良いな」「こっちの社員の方がなんかかっこいいな」などと感じる感覚を信じて良いと思います。

新卒で「ここだ」と思って入った会社に入り、頑張っていても必ずいつか壁に直面するはずです。そこでモチベーションを維持し、さらに頑張ってキャリアアップできるかどうかは、明確な意思があるかどうかで変わってきます。本当に自分が進みたい道を理解したうえで、社会人としてのスタートを切ってほしいと願っています

磯田さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:小内三奈

この記事をシェアする