自分のこだわりを武器に変える! 個性を掘り下げ「唯一無二の価値」へと高めよう

Sales Lab(セールスラボ) 代表取締役社長 小椋 亮さん

Ogura Ryo・大学在学中に一度起業しビジネス経験を積むも、事業は譲渡。2007年にネクスウェイへ入社し、エンタープライズ向けのWebマーケティングに関わる。2016年から事業部長として、当時日本で認知度のなかったインサイドセールスに本格的に取り組み、2017年一般社団法人インサイドセールスコンソーシアム開設。2020年にSales Labを設立し、現職

この記事をシェアする

学生時代から今後の社会のカタチに関心

現在代表を務めているSales Lab(セールス ラボ)を起業する前に、実は学生時代にも1度起業しています

当時心理学部で学んでおり、学生が3年以上かけてテーマの調査・研究をおこない、論文を書いてアウトプットしても、その成果が現実社会に活かされないのを歯がゆく感じていました。企業にとっても有益な情報は多いと思い、企業と学生・研究成果をつなぐための会社を立ち上げたのです

今なら個人事業主としてもできそうな事業ですが、約20年前の当時は今ほどフリーランスが地位を得ておらず、起業という形を選びました。この経験でやりたいことを実際に形にする面白さや手応えを実感できました

一方で起業という形を取らなくても、自分のやりたいことはやっていけると気づき、大学卒業後はIT系のベンチャー企業、ネクスウェイに入社しました。

一般にIT技術が根付いている時代ではありませんでしたが、当時大企業で導入が始まっていたので、今後は中小企業にもIT技術が必要とされる日が来ると確信していました。

世の中に必要とされることを、自分の力で成し遂げたいと思ったんです。今後の社会を見据えてみると、自分が貢献できること、やりたいフィールドが見えてくると思います。

本を読み、データを探り、人に会う。「唯一無二の価値」を見出そう

2007年に入社したネクスウェイから、分社独立する形で、2020年にSales Labが設立されました。さまざまな情報やツールを効果的に駆使して遠隔で営業をする「インサイドセールス」を専門におこなう会社です。

振り返ると、ネクスウェイでインサイドセールス事業を始めた2016年当初、インサイドセールスがどんなものか、日本で理解している人はほとんどいませんでした。

その時目をつけたのは、インサイドセールスを解説する1冊の本でした。労働人口が減り、これからますます人手不足が進行する日本社会で、絶対に必要とされるサービスだと感じました。

ですが社内はおろか、世間を見回してもインサイドセールスをかかげている企業もなく、どうやって事業化していくのか途方にくれましたね。そこで、とにかく情報やノウハウを知りたいと、著者に直談判しました

我ながら突飛な方法でしたが、きっと会ってくれるという根拠のない自信がありました。もともと人脈作りなどに特に力を注ぐタイプではありませんが、毎回必要とするときに必要な人とつながることができています。

その秘訣は、「正面突破」と「相手の文脈を考える」ことでしょうか。

相手にとってもうれしく、良い出会いだったと感じられるような文脈を考えて、真正面から「教えてください」とアプローチします。この方法で断られたことはないんじゃないかな。結果的にのちの事業の中核となるような構想を得ることができました

必要な情報・人脈を得るには

インサイドセールスを社内の1事業だけでなく、別個の独立した会社として推進していきたいと考えたのは、インサイドセールスそれ自体の可能性を強く信じていたからです。その宣言として、会社という形にして世間に訴えることは絶対必要でした。社名もそのまま理解してもらいやすいよう、「Sales Lab=営業研究所」としました。

なにかをおこなうときに、それが価値があるかを意識した方が良いと思います

私にとって価値とは、唯一無二であること。大規模である必要はありません。自分の個性を活かしたり、世の中にとってちょっと良くなる新しい視点があったり。そこにビジネスの種があるし、キャリアの核があると思います。

仲間、顧客、社会の3者にとって良いことを

キャリアにとって必要なことは、次の3つだと思います。

  • 仲間が楽しいか ー 社員などチームメンバーの充実

  • 顧客が満足しているか ー 目の前のお客さんの喜び

  • 社会問題に関わっているか ー 誰かの何らかの問題を解決

これらが全て達成されたとき、私はキャリアの充実を感じます。自分が楽しいことはもちろん、仲間やお客様、その先の大きな社会も視野に入ってくると、達成感は非常に大きいです。みんながうれしいという状況が最高ですよね

もちろん仕事である以上、「お金を稼ぐ」「利益を出す」という観点は必要ですが、お金を稼ぐことそのものに目的意識はあまり感じないタイプなんです。

お金を稼いでその利益を享受するって、あくまでも1人の楽しみですよね。仲間や社会と共有できる楽しみの方が、断然面白いと思うんですよ。ぜひ一度、仲間で喜びを分け合う感覚を味わってほしいです

小椋さんからのメッセージ

社会への最初の一歩を踏み出すとき、何を指標にしてどうやって行動すればいいのか、悩みは尽きないと思います。まずは、自分の個性を掘り下げてみることをおすすめします

自分にとって楽しいこと、ワクワクすること、嫌ではないこと。シンプルに好き嫌いや欲望に向き合うと、自分がどんな人間で何をしたいのか、見えてくるのではないでしょうか。

やりたいことなんてない」という前に、自分に素直になって個性を掘り下げてみることはできるはずです

少しでもワクワクの形が見えてきたら、しっかりと伝えましょう。学生だからとか、経験がないからとか、遠慮する必要はありません。思い描いていることを言葉にできて初めて、実際の行動や形にもできるのだと思います。

言葉に出すことのメリットはもう一つあって、経営者と価値観やカラーがマッチするか、確認できることです。自分の個性が少しでもわかっていれば、インターンや面接などで会社との相性を確認しやすくなります。

経営者や経営層の方針が自分の考え方とかけ離れている場合は、どんなにその他の要素が魅力的でも、入社は避けた方が無難かもしれません。同じ方向を向けない中で働くのは心身の負担になります。本当にしんどい場面でその会社にいられなくなります。

自分の価値観は時間の経過とともに変わっていくとしても、初めて社会に出るときに、自分とは何者か、会社はどんな場所かを一度しっかり考えた経験が生きてくるはずです。

経営者として「働く仲間の個性」を重視し、適材適所へ

経営者としても、社員の個性に期待していますし、できる限り尊重したいとも思っています。

同時代を生きる人間なので、飛び抜けて違いがあることは少ないのですが、誰でも似ているようで似ていない面があり、それが個性だと思います。

経営者によっては、自分のカラーや会社の社風に染め上げて、統率をとりたい人もいますが、私は違います。一人ひとりの得意を見極めて、適材適所で輝いて欲しいんです。私の言ってることなんて大したことはなく、さまざまな社員の才能こそが会社の宝だと感じています。

個性が磨き上げられると、こだわりになり、それが生かされる場面が今後増えると思います。経営者はそこまで見守り後押しすべきですし、どんな人でも自分を大切に歩んでほしいです。それが大きな利益・価値につながります。

だから個性を捨てないでください。ぜひ自分のクセややり方を貫いてみてください

こだわりを捨てないことが「必要とされる人材」になるための第一歩 

今後はAIやロボットが社会の至る所に導入され、より個性のある人間であることが価値になっていくと思います。誰でもやれる仕事は無くなっていくので、自分がやる意義がある仕事を見つけることが重要です

個性を磨くとこだわりになると先ほど言ったように、自分なりの考え方・動き方ができれば、必要とされる人材になれると思います。一旦周りからの評価や客観的なジャッジを忘れて、自分のやり方や問題意識にフォーカスすることが、後々の成功につながると思います。

もう一歩先に行くなら、そのこだわりの先にやりたいことがあるといいですね。やらされているのではなく、やりたいことを宣言して、仕事をとってくる。キャリアには、言ったもんがちの場面もありますから、常に思いを持って、ここぞというところで伝えられると強いです。

挫折をしても心が折れさえしなければ、いつまでも成功のチャンスはある

もちろん、キャリアを積む中でうまくいかないこともあるでしょう。今までのキャリアで一番困難を感じたことは、分社独立までの奮闘です。

これまでネクスウェイから分社独立した例はなく、なかなか決裁がおりませんでした。苦戦を続けた4年の間に、一緒に独立しようと話し合っていた仲間がしびれを切らして辞めてしまって、周りを失望させていることにも辛さを感じました。

それでも折れずに続けたからこそ、現在に至っています。当初の計画時期に独立が叶えられなかったことで諦めていたら、今の会社はありません。成功の鉄則は成功するまでやることです

一方で折れないためには、少しだけ逃げるのも必要だなと思っています。自分で自分を褒めて「よくやってるなー」と客観的な目線で見ることで、煮詰まった状況を打破できることもあります。あきらめないためには、少しだけ力を抜く、自分を褒める余裕を持っていたいものです

就職活動は「社会をのぞき見」できる貴重な機会

新卒の就職活動は、人生でも2度とない貴重な時間だと思います。それは「新卒カード」というような就職ゲームで語られる話ではなく、先入観を持たずにさまざまな業界や企業をのぞき見できるという部分においてです。全く利害なく、業種を問わず話を聞いたり、企業訪問やインターンをしたり、経営者と話したり。こんなことができる期間は他にあまりありません。

そこでさまざまな話を聞けば、どの業界も業種も職種も、良いことをしていて各々頑張っていることは見えてくるでしょう。だから就職活動において、必ずしも業界や職種を絞らなくても良いと思いますなんとなく好きなんとなく興味がある、くらいのとっかかりでいくつかの業界を志望するのもアリです。

では、どんな観点で会社を選べばいいのか。ここでも「個性の尊重」が一番重要なことだと言いたいです。

個人を尊重し、個性を活かし、人にしかできない事業を進めていくことでしか、これからの企業は生き残っていけません。マニュアル化できることは、自動化されていきますから、それ以外の部分で付加価値が必要ですよね。

かつて私が就活をしていた時には、就活マニュアルのようなものが流行っていて、決まりに則って面接に挑んだこともありました。そのまま大手からスルッと内定が出てびっくりしましたが、自分を出せたとは思えない内容で合格なんてこっちから願い下げだ、と内定を辞退したこともありましたね(笑)。

自分勝手もはなはだだしいのですが、それから何年も経っているので、なおのことマニュアルは排除すべきものになっていると思いますよ

個性を歓迎する会社で、どんなことをして、自分がどう成長したいのか。その未来が見える場所で一歩づつ成長していってほしいです。

小椋さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

この記事をシェアする