就職にこだわり過ぎないキャリアもある。順調でなくても回り道してもやりたい仕事に出会ってほしい
D3(ディースリー) 代表取締役社長 江口 晋之介さん
Shinnosuke Eguchi・1991年生まれ、福岡県北九州市出身。19歳で上京し、東京工業大学在学中に著者のプロデュース業で起業する。その後、事業をWeb制作、システム開発などへ移行し、2020年にD3(ディースリー) を設立。Shopify、Laravel、Odoo、WordPress、LINE APIなどの技術を取り扱い、現在は福岡県北九州市を中心に開発をおこなう
企業詳細:コーポレートサイト
もし今行き詰っているのなら、大胆に環境を変えてみよう
好きなこと、やりたいことがわからず、どういう道に進めば良いか迷っている人には、大胆な変化を起こすことをすすめたいと思います。
自分に合った道を探すとき、たくさんの人に会ったり本を読んでさまざまな考え方に触れるのが最も効果的です。そこから何かしら影響を受けたり触発されることで、自分の方向性を見出していくのが王道だと考えます。
ただし、そうやって自分の意思や行動力で変化を起こせない人、起こす自信がない人は、思い切って私が提案することをやってみるのもよいかもしれません。
1つ目は「引っ越し」です。住む場所を変えましょう。まだ実家暮らしの人はとくに、これを機に親元から離れ一人暮らしをすることです。
2つ目は、スマホの中の電話番号やLINEなどの連絡先を消すこと。現在の交友関係をすべて断ち切りましょう。
3つ目は、日常的に手に取るもの、買うものを変えてみることです。
やりたいことはないけれど何となく就職活動を始めたものの行き詰っている人、将来に希望をもてない人ならなおさら、これくらいの大胆な環境の変化が必要だと思います。この先の自分の人生を豊かにするために、ぜひ自ら変化を起こしてみてください。
就職にこだわり過ぎない、成長できる仕事ならどんな仕事でもキャリアアップが可能
自分に合った就職先が見つからないのなら、必ずしも就職にこだわる必要はないと私は思っています。私自身はいわゆる就職活動の経験はありませんが、お金を得る、社会経験を積むという意味では大学入学直後からさまざまなアルバイトをしてきました。
一番最初にお金を稼ぎ出すことを経験したのは、大学に捨てられていたパソコンの転売です。そこからもう少し利益が出るものはないかと考え、海外のスノボ用品を購入して転売する仕事をはじめました。
他にも、バーやオイスターバーでのアルバイトから、引っ越し、家庭教師、車庫の組み立てなどもアルバイトとして取り組んできました。どの仕事もすべてが現在の糧になっていると断言できます。
起業のきっかけとなったのは、著者プロデュースをおこなう仕事との出会いです。出版社出身の師匠に頼み込んで著者のプロデュースをするお手伝いをはじめ、そのときから「起業」を視野に入れた経験を積みました。その後、大学2年のタイミングで実際に起業しました。
若いころの感性や経験は、お金で買うことはできない貴重な価値です。20代前後からさまざまな経験をしていることが一番大事で、それが自分自身の大きな強みへとつながっていきます。
若い時代に、好きになれない仕事、苦手な上司の下で我慢して働いているのはもったいないと私自身は思っています。
これまで一貫して大切にしてきたのは「成長」という軸。道に迷ったときには成長できる方を選ぶことを意識してきました。
もちろん、最初から明確になっていたわけではありません。私自身も皆さんと同じように、「何のために生きているのか? 」「何のために今この仕事をしているのか」とひたすら考え続けた学生時代があります。
その問いに対してそのとき自分の中ではっきりと答えが出たわけではありませんが、仮の答えと設定したのが「人生は美学だ」というものです。
いかにカッコよく生きるかどうか(=美学)、それを考えたとき、「常に成長できる選択肢を選ぶ」ことを自分の判断基準としました。
以来、道に迷ったときには成長できる方を選ぶことを徹底してきました。アルバイトもすべて「成長できるかどうか」を軸に数多く経験したことで、その一つ一つすべてが自己の成長につながったと感じています。
自分のやりたいことを貪欲に追求することで、自然と道は開けるもの
中学まではサッカーに熱中していました。高校に上がってからは動物が好きだったことから獣医という仕事に憧れるようになりました。具体的に進路を考えるようになってからは、獣医になることを視野に東大を目指して勉強をスタート。1年間浪人生活を送りましたが、今振り返ってもかなりストイックに勉強に励みました。
残念ながらわずかなところで東大に届かず、東京工業大学に進みました。正直、希望の大学ではなかったですし、大学入学当初はこれだという明確な将来ビジョンはなかったと思います。それでも、勉強もしたいしスノボサークルにも入りたいし、遊びたいしバイトもしてみたいと思うようになり、やりたいことがたくさん出てきました。
欲求に素直に、やりたいことはすべてやる、やり切る、そんな学生時代だったと振り返ります。
たとえば、バーテンダーになりたいとアルバイト先を探したときのことです。最終的に最も行きたかった憧れのバーで働くことができたのですが、その勝因はずばりあきらめなかったことです。一番最初に「働きたい」と電話をしたときには断られたのですが、30軒ほど他のバーに電話した後に、やはりどうしても働きたいと思ったので最後にもう一度かけてみたのです。
たまたま運がよかったのか「じゃあ一回来てごらん」とマスターと面談することに。ただ喜びも束の間、当日約束の時間になっても待てど待てどマスターが現れない。それでも1時間待ち続けました。
実は時間を1時間勘違いされていて、私の粘り勝ちで結果的に雇ってもらえることになりました。
起業のきっかけとなった著者プロデュースの仕事の師匠と出会えたのも、学生では到底参加できないようなセミナーに妹に10万円の借金をしてまで参加したのがきっかけです。その後師匠が弟子を募集していることを知ったので、すぐに「お会いしていただけないでしょうか? 」とメッセージを送りました。最初に送ったメッセージでは、自分都合の候補日を添えて送りました「〇日の飛行機で実家に帰省するので、〇日から〇日の間でお会いできませんか? 」と。ただ送った瞬間に「そんな勝手なことを言っていては、相手の都合が合わなければ二度と会えるチャンスがない」と気づいて、すぐに「いつでも大丈夫です」と送り直しました。
2通目のメッセージをきっかけに実際にお会いすることができて、「ではちょっと手伝ってよ」という話になり、そこからベストセラー作家と呼ばれる人たちを広くプロデュースする仕事にかかわるようになりました。
やりたいアルバイト、会いたい人と会うために江口さんがやったこと
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一度断られても、時間を置いて再度「雇ってほしい」と伝えてみる
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会えるまで何時間でも待ってみる
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お金を借りてでも会いたい人に会いに行く
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会いたい人に会えるチャンスは絶対に逃さない
今改めて振り返ってみると、なかなかの行動力があったなと思います。しかし当時はそんなことは全然考えていなくて、欲求に素直に、自分に嘘を付かず、やりたいことを追求してきた結果だと思っています。
その後、著者プロデュースの仕事で起業したのは、「良いものを広めていきたい」という想いがもともと自分の中にあったこと、セミナーを企画し著者さんの考えたを伝える場をつくる、という仕事に意義を感じたことがリンクしたからです。
出版社から独立した師匠からは、2年経ったら師匠の元を離れて自身で起業するようにと当初から言われていました。その約束通り、2年後に起業に踏み切ることを決心しました。
「良いものを広めていきたい」という想いがもともと自分の中にあったからです。セミナーを企画し著者さんの考えを伝える場をつくる、という仕事に意義を感じたこともあり、師匠から離れて自分自身で起業することを決めました。
「もっと成長したい」を実現するために環境を大胆に変化させ、IT業界へ
起業後は、「良いものを広めていきたい」という想いが実現することとなり、ベストセラー作家のプロデュースに邁進しました。セミナーを企画して著者の考えを伝える場をつくるという仕事です。お金も十分稼げましたし、やりがいも感じていました。
一方で、実は入学後からずっとホームページを作るという仕事に興味を持っていました。きっかけは二つあって、一つは入学祝いに祖父からプレゼントされたパソコンを手にしたことです。そのパソコンを触ってみるのがとにかく楽しくて、将来パソコンを使って何かできたらなと憧れのように考えていました。
もう一つが、大学の学食でたまたま拾った『失敗から学ぶあRDBの正しい歩き方』というデータベースの本との出会いです。パソコンで何かをしてみたいとは思っていても、そもそも当時は「ホームページ(HP)」とか「Webサイト」という言葉も知らなかった私です。偶然落ちていたその本を拾ったことをきっかけにデータベースの面白さを知り、生協の本屋を見て回るようになってホームページやWordPressといった世界を知りました。
そこに「良いものを広めていきたい」という想いが重なり、日本の伝統工芸品の魅力などを発信していけたらいいなという想いが芽生えるようになりました。著者プロデュースの仕事で集客のためにランディングページを作ることなども経験したので、HPやWebの世界に自然と興味がつながっていった部分もあります。
改めて自分の成長をかんがえたときに、「もっと主体的に、より楽しめるフィールドで事業を拡げていたい」という想いが強くなり、IT領域の仕事へ舵を切ることを決心しました。
とはいっても、いざ「ITの仕事をはじめよう! 」と自分で看板を変えただけです。当然ながら当初の顧客はゼロ。人生で初めて「まずは営業しなければ」という状況になりました。まさに、一からのスタートでした。
「ホームページをつくれます! 」と営業活動を頑張る一方で、Webサイト制作のスキルを身につけなくてはいけません。貯金を崩して大量の本を購入しての独学です。1日のほとんどを近所のスターバックスにこもって勉強する毎日でした。
さまざまな技術を習得してスキルアップしながら、より良いサイトをつくるにはどうしたら良いか、より良く見せるにはどうしたら良いかと試行錯誤の毎日でした。
大学2年目で著者プロデュースの仕事で起業し、その後IT・Web開発の仕事へとフィールドを変え、現在10年目となります。これまで仕事をしてきて自分自身で「今すごく充実しているな」と強く感じるのは、たくさんの経験ができていて自分がステージアップできていると実感できている状態です。
一貫して、難しい方、成長できる方を選択し続けてきた人生です。こんなにハードな選択を皆さんにおすすめすることはしませんが、常に成長を実感できる人生はとても心地良いと感じています。
周り道しても良いから、35歳までに自分なりのスキルを身に付けてほしい
重ねてになりますが、思うように就職先が決まらない、就職先にあまり興味がもてないという人がいるとしたら、就職にこだわりすぎなくても良いと伝えたいです。
就職することで安定した人生が手に入る、と思っているのならそれは幻想。希望した部署にいけるかはわからないし、どんな上司に当たるかも運次第です。
大切なのは、自分の人生をいかに豊かにするか、という視点だと考えます。
自分に合った道が、世間がいう正しい道とか常識からかけ離れていても良いわけです。自分が快適に、豊かに生きられる道を進めばいいよ、と肩の力を抜いてもらいたいです。
昔と違って今はどんな生き方でも可能、ゆっくりでも十分に生きていけますよ。
長期的視点でキャリアを考えておくなら、35歳くらいまでにはなんらかの手に職を身に付けておくと良いと考えます。それまでにどんな形でも一生懸命に仕事をしていれば何かしらはまるものが見つかるのではないかと思います。
就職活動をする際に知っておいてほしいこと
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就職にこだわりすぎなくても大丈夫。現代はいろいろな生き方、キャリアの積み方がある
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就職することで安定した人生が手に入るわけではない
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回り道しているように見えて、天職ともいえる仕事に出会った人がたくさんいる
人生は有限ですが、焦る必要はない。人との偶然の出会いやいろいろな体験をすることで、想像もしていなかったような仕事に出会うこともあります。回り道しているように見えて、天職ともいえる仕事に出会った人が実際たくさんいることも知ってほしいです。
私の師匠も、大学卒業後は就職せず1年間ラスベガスでその日暮らしを経験したそうです。私が著者プロデュースでかかわった上場会社の経営者は、起業に至るまで40種類以上のアルバイトを経験したと聞きました。
目の前の「就職」にこだわりすぎないこともときには必要、ということも知っておいてほしいです。若い時代の経験やすべて自分の財産となりその後の成長の糧となると信じて、さまざまな体験を積んでほしいと願っています。
昨日の自分と同じことをしない、同じものを選ばない
AIの時代ですから、これからは周りと同じ考えしか浮かばない人はもとめられません。人が思いつかない、人と違う視点をもてることが大事になってきます。
具体的には、おもしろい話ができる、クリエイティブな人がもとめられると思います。いわゆるホストクラブやキャバクラのような場で活躍できるようなスキルがあれば絶対に強いです。
そういう人材に近づくには、日頃選ばない方を選ぶということを意識的にやる習慣をつけることをおすすめします。
人間誰しも、無意識に自分の趣味に合ったものばかりを選んでいます。自分が好きな同じような食べ物を食べたり、同じような色の洋服を買ったり、同じような友達と交流します。その方が断然楽だからです。
そこで、あえて違うものを選んでみる。毎日違う道を通るように意識してみたり、昨日の自分と同じことをしない、その積み重ねが大事になってきます。
簡単にできそうなこととして、まず本屋さんに足を運んでみることを提案します。本屋さんで、普段読まないような本を買ってみましょう。実は本屋さんってそういう出会いの宝庫です。店内を歩いて周って、日頃縁がなさそうな本を選んでみましょう。それがきっと、Amazonでは絶対に体験できない貴重な出会いとなるはずです。
何事も全力でやり切ろう、さぼるときはさぼることを一生懸命やること
私自身、やりたいことには貪欲にすべてやり切って今があるからこそ、すべてを全力でやってみようというメッセージを最後に伝えたいです。
遊ぶときに適当に手を抜いて遊ぶ人はそうそういないと思います。遊ぶときはみんな、全力で遊んでいるはずです。それと同じように、勉強もアルバイトも仕事もすべて一生懸命やってみてください。
「ワークライフバランス」という言葉がありますが、バランスを取ろうとして取れるものではないと思っています。どれも一生懸命やるからこそ、最終的にうまくバランスが取れるわけです。
勉強をさぼるのなら、そのさぼることを一生懸命やってほしいと思います。ぜひ、すべてに全力で取り組んでみてください。
取材・執筆:小内三奈