キャリアの主導権は自分で握る|「スタートダッシュ」と「自発性」を大切にキャリア選択をしよう
ビズメイツ 代表取締役社長 鈴木 伸明さん
Nobuaki Suzuki・青山学院大学経済学部を卒業後、金融事業会社を経て、2007年にヤフーに入社。モバイル事業部、R&D統括本部にてKPI分析、事業計画策定などに従事。2009年にベルリッツ・ジャパンに入社し、社長室にて経営企画業務全般を担当。その後Webマーケティングおよび法人マーケティングの推進リーダーを歴任し、2012年6月、同社を退社。まだ世の中にない新たな英会話サービスを提供したいとの想いから、2012年7月にビズメイツを設立し、現職
スタートダッシュでスキルを身につけ、一歩先、二歩先のキャリアを積みたい
大学時代には、将来について明確なビジョンはもっていなかったです。学生時代は、電車でたまに疲れ切ったサラリーマンを見るたびに「社会に疲れたサラリーマンにだけはなりたくない、そうならないためにはどのようにキャリアを積んでいけばいいのか」ということを真剣に考えていました。
自分なりに考えついたのは、社会に出て30年、40年と働き続けるのであれば、最初のスタートダッシュが大事であろうということ。最初の段階からしっかりとスキルを身につけて、着実に成長する。人より一歩先、二歩先のキャリアを積み自分自身でキャリアの主導権を握れる人生を歩んでいくのが理想だと考えました。
大学時代は経済に興味をもって経済本を読み漁っていたので、就職活動では自然と金融業界に惹かれ、金融一本に絞って活動しました。
ところが、当時は超就職氷河期。銀行業界はほとんど採用募集がなく、選択肢としてあった多くは証券会社でした。ただ、王道の証券会社にいくよりも面白い経験ができるのではないか、成長機会も多いのではないかと考えて、当時まだまだ知名度が低かった先物取引の世界へ飛び込むことを決めました。
最終的に入社を決めたのは、社員規模500人程度の会社。決め手となったのは、人事担当者の人柄が本当に良い上に、自分を本当に必要としてくれる会社であると確信できたから。自分と相性の良い会社だと心の底から感じました。話していて違和感がなく波長がぴったりだと感じたことを今でもはっきりと覚えています。
入社後は、責任あるポジションを任され、期待した通りスタートダッシュでさまざまなスキルを身につけることができました。
大手の銀行や証券会社ではなく敢えて先物取引という知名度の低い商材や大きすぎない組織を選んだことで、大企業では経験できない経験をさせてもらいました。入社してから一貫して管理部門で働きましたが、入社4年目からは社長直下の部門で働き、社長にさまざまな提案をおこなうなど経営にかかわる立場で経験を積むことができました。
経済本に熱中した経験が、経済を超えてグローバルな価値観や多様性を考えるきっかけに
学生時代に夢中になったのは、経済本を読み漁ることとアルバイトです。
高校時代から、世界のお金の動きは政治や経済政治とどう関係しているのかなど経済全般に興味をもっていました。マクロ視点で世の中の仕組みを深く知りたいという気持ちが強く、入学後は多くの経済本を読みました。
最も感銘を受けたのは、ドイツの社会学者であるマックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』です。
この本を読んで資本主義がなぜプロテスタントの人々から生まれていったかを学んだのをきっかけに、日本独特の価値観や日本人の魂や精神とは? を考えるようになりました。日本人らしさ、日本人だからこその良さを認識すると、逆に日本人に足りないこととは? を考えることにつながったのも自分にとって大きなことでした。
今現在、ビズメイツの経営者として、国も性別も超えてメンバー全員が働きやすい環境を整えることに最も力を入れています。
その根底となったのは、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだことをきっかけに、今盛んに言われるようになった多様性を受け入れる土台のようなものが自分の中につくられたことが大きいのではないかと感じています。
一方、アルバイトも熱心にやっていました。オムレツ料理屋、居酒屋、ベルギーワッフル店、スターバックスなど飲食業が多かったのですが、中でもオムレツ料理屋さんは週5回くらい働くこともあったので、社員さんより上手にオムレツが作れるような腕前になっていました。
もともと、何事も人よりうまくやりたい、人より先にいきたいという気持ちは強い方だったと思います。
どのようにキャリアを積んでいけばよいのかを考えたとき「将来的に自分で主導権を握れるように、スタートダッシュで周囲よりも抜き出でて、自信をつけていけるようなキャリアを積んでいきたい」と考えるに至ったのは、実は自分自身にとっては自然なことだったんだなと今振り返ると思います。
学生時代の経験から学んだこと
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経済本を読んだ経験:民族としての価値観や考え方を学び、多様性を認める土台を得た
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アルバイト経験:人よりうまくなりたいという自分の根底にある欲求を知った
大手IT会社、ベンチャーの両方を経験した後、起業を決意
新卒で入社した先物取引の会社からヤフーへ転職をしたのが、社会人7年目のことです。金融業界から全くの異業種であるIT業界へ関心が強まっていったのは、プライベートでやっていたフットサルチームのホームページの運営がきっかけです。
学生時代からフットサルをやっていたのですが、社会人になってもサッカーをやりながら、個人的にチームのWebサイトをつくってサッカー仲間を募集していたんです。試行錯誤しながらSEO(Search Engine Optimization)を意識してサイト運営をしていると、何カ月か経った頃からなんと検索順位が1位になって。セミプロのような競技思考でフットサルをやっている人達からどんどん入部申し込みが入ってきたのです。
「インターネットの力ってすごい」、素直にそう思いました。と同時に、ビジネスでインターネットを活用して売上につなげていくことへの関心が高まり、IT業界という新たな領域に踏み出す決断をしました。
ヤフーに決めた理由は、インターネットビジネスの中でも最も将来性に魅力を感じていたモバイル事業部とご縁があったからです。まだガラケーの時代でしたが、当時はちょうどガラケーのコンテンツが急成長を遂げていた頃で、ヤフーもちょうどモバイルサービスを強化していこうとしているタイミングでした。
もう一つの理由は、やはり大企業であったことです。一度、大きな企業で働いてみるのも良い経験だと考えました。実際、大企業でしか経験できないレベルの事業計画策定に携わることができ、専門スキルが上がったと実感できました。
ただ逆に、新卒で入った会社のように社長と一緒に会社を動かしていくような仕事ではなくなりました。するとまた、不思議なことに「社長の右腕となって、会社をダイレクトに動かせる会社で働きたい」という気持ちが強くなり、また転職を考えるようになったのです。
再び転職エージェントに依頼したところ、「ベルリッツの社長がまさに右腕となる人材を探しているから応募しないか? 」と言われ、その後すぐに内定となりました。このベルリッツへの転職が、私の人生における大きなターニングポイントとなりました。
それまで着実にキャリアを積んでいるという自負はありましたが、起業を意識したことはありませんでした。
ではなぜ、ベルリッツに入社後わずか3年ほどで会社を飛び出し、同じ英会話の業界で起業したのか。それは、今のビズメイツのサービスコンセプトが「世の中に必要だ、世の中に求められている」と確信し、このサービスを世の中に広めていきたいと思ったからです。教室型サービスを主軸とするベルリッツの中でやることは難しかったので、外に出て自ら立ち上げるしかないと起業を決断しました。
それまでも社長の側で経営に携わる仕事をしてきました。しかし、今度は自分自身が経営者。いざその立場に立ってみると、やはり見る景色が変わりました。
自分で考え、自分が決断して会社を動かす。当然覚悟が必要ですが、そのダイナミックさを前に素直に「楽しい」と感じたことは今でもはっきりと覚えています。
就職活動はあらゆる情報収集ツールを活用しよう
今は、情報収集の手段がたくさんある時代です。SNSをうまく使いこなせば、業界のこと、企業のこと、仕事内容について何かしらのヒント、情報を得ることができるのではないでしょうか。
「こういう仕事がしたい」「こんな会社で働きたい」が明確なのであれば、就職エージェント会社を活用するのはかなりおすすめだと思います。私自身、2回の転職ではエージェント会社にお世話になった経験があります。
ぜひあらゆる情報収集ツールを駆使して、たくさんの選択肢をもってほしいです。そして、その選択肢の中から自分に合った業界、仕事を絞り込んでいってほしいと思います。
選べる母数そのものが私たちの時代よりはるかに多いというのは、本当にうらやましいです。ただし、膨大な情報に埋もれてしまう心配があるのもたしかです。
情報に呑み込まれず自分にマッチした会社を選んでいくために絶対に必要なのが「自分軸」です。私自身は、以下の点を軸に絞り込んできました。ぜひこれを参考に、自分なりの「自分軸」を明確にしていってください。
鈴木さんの「自分軸」
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自分はどういうビジョン、ミッションの会社で働きたいのか
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どういう人と一緒に働きたいのか
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付加価値を提供することで利益を創出し続けられる業態かどうか
会社の本気度を見極める、働いている人が輝いているかを見てほしい
最終的に入社する企業を見極めるときには、まずは会社の掲げるビジョン・ミッションに共感できるかを今一度確認するのは大前提です。共感できると確信が持てたなら、会社が本当にそれを実現しようとしているのかの本気度をもう一度見極めましょう。
本気度も確認できたなら、最後は実際に働いている人の様子をできるだけたくさん見ること。生き生きと輝いているか、やる気が漲っている人たちかどうか、良く観察することをおすすめします。
自分が入社する会社です。もし、面接や選考過程に出てくる先輩社員に会っただけでまだ確信がもてない状態なのであれば「もっと沢山の人に会わせてください」と言ってみるべきだと私は思います。逆にそうお願いしても会わせてくれない会社は、少し疑問が残ると言わざるを得ません。ぜひ納得できるレベルまで社員と話して、解像度を高めてください。
自分に合った企業を見極める3ステップ
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会社の掲げるビジョン・ミッションに共感できるかを確認
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会社が本当にそれを実現しようとしているのかの本気度を確認
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働いている人が、生き生きと輝いているか、やる気がみなぎっているかを確認
ファーストキャリアならではのポイントとしては、自分が成長できる環境がありそうかという視点も大切になってきます。ここで働いた自分を想像して、自分がやりたいことをやらせてもらえそうかを見てください。
大企業であれば、しっかりとした研修プログラムが組まれていて、最初に体系的なインプットの機会があるというメリットがあります。ただ。現場に行ってすぐに自分の力を発揮できるポジションが与えられるかというとそうとは限りません。
逆に、うちのようなベンチャー企業に入ると、入社後からすぐに即戦力として活躍することを期待されます。そのような環境で成長するのを楽しめる人ならおすすめです。自身にとってどんな成長の機会がありそうかを想像できるといいと思います。
これからは自分からチャンスをつかみにいこうという自発性が不可欠
「こういうことをやっていきたいんです」と言える自発的な人、自らチャンスをつかみに行こうとする人がこの先もとめられると考えます。
一番もったいないと思うのは、できないことを「自分事」として捉えず、上司や環境のせいにする人。
与えられた環境がどんな環境であれ、どうすればそこで成果が出せるかまずは主体的に考えられない人は必要とされません。自分で道を切り開いていこうとする気持ちが大事になってきます。どうしてもわからなければ聞けばいいのです。「聞く」というアクションそのものも自発性ですよね。そのアクションを取るか取らないかは、その先大きな差となっていきます。
学生時代には、クラブやサークル活動、アルバイトでもなんでもいいので、このチーム、組織をより良くするには何ができるだろう?どうすればいいだろう?と「自分事」として考えアクションを起こし、相手を巻き込んでいく経験をたくさん積んでおくことをおすすめします。
最後に、就職活動では迷うことも多く、逃げたくなるようなときもあるかもしれません。しかし、一度きりの人生、真剣に向き合ってほしいと伝えたいです。
繰り返しにはなりますが、わからないことは誰かに聞いてみればいいんです。その「自発性」をぜひ大事にしてください。直接相談するのが難しければ、SNSをどんどん活用しましょう。自発的に真剣に取り組んだ人は、きっと自分に合った会社に巡り合えるはずです。応援しています。
取材・執筆:小内三奈