マクロ的な視点で企業を選べ|やりたいことがない場合は一番後悔しにくい選択をしよう
Lightblue Technology(ライトブルー テクノロジー) 代表取締役 園田 亜斗夢さん
Atom sonoda・東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程在学。修士課程在学中、ベンチャー企業の創業者や大手のベンチャーキャピタル(VC)との出会いから起業を決意。2018年にBusiness Hub(ビジネス ハブ)を創業。2019年にLightblue Technology(ライトブルー テクノロジー)へ社名変更。Lightblue TechnologyではAIの社会実装に従事
経済的な厳しさから金銭的な期待値が高いフリーランスを選択
東京大学の修士課程に進む前から「博士課程まで進み、ソフトウェアエンジニアリングの領域を極めたい」という思いがありました。
一方、修士在学中の経済的な支援は限られており、仕送り無しでは東京で生活するのもままならない状況でした。
4人兄弟の長男である僕は両親に経済的な負担はかけられません。そんな背景から修士課程在学中に、アルバイトより時間制約がなく、金銭的な期待値の高いフリーランスのプログラマーとして働き出しました。
ただ、はじめからプログラミングの分野に精通していたわけではありませんでした。そのため、業務委託時代は一定程度のパフォーマンスを出さないと契約を解除されるかもしれないプレッシャーと戦っていました。
当時はディープラーニングや機械学習のプログラミングを実装できる人が貴重な環境でした。ただし、世の中にそうした情報があまり出回っておらず、海外の記事やGithub等を参考にする必要がありました。そうして取り組んでいるうちに徐々に成果が出始めました。
今は日本語でも様々な情報が得られるようになってきていて、敷居が下がった分コンペティティブな環境になってきています。当時培った、積極的に新技術や情報をリサーチしにいく意識は今も役立っています。
ベンチャー企業の創業者や大手のVCとの出会いから起業を決意
その頃、とあるエンジェル投資家の方に、研究室の同期と共にアメリカに連れて行って頂く機会に恵まれました。そのエンジェル投資家の方は、鳥海研の共同研究先でかつ僕の業務委託のクライアントとして一緒に仕事をしていた企業へ投資していた方でした。
アメリカでは、Googleにバイアウトしたベンチャー企業の創業者や大手のベンチャーキャピタル(VC)の方の話を聞くことができました。
その方達はバリバリ働いているだけでなく、デジタルの技術全般の可能性を本当に信じていました。知識も豊富で、成果も出しているので説得力が違いました。
スタートアップとは、アーリー・スモール・サクセス(早い段階での小さな成功)を目指すものなんだと思いました。世の中に無いものを作って、それが自己実現にも社会貢献にもなっている。仕事を頑張る理由が明確です。
そんな分かりやすいストーリーを持つ姿に憧れを抱きました。同時期「プログラミングスキルを使って、マッチングサイトを作らないか」と友人から誘いを受け、起業に至りました。
失敗の経験を生かす! 自社サービスを必要とするコアなファンを作りたい
ビジネスマッチングサイトではマッチングも一部成立し利益が出ていましたが、「このサービスがないと困る」というような強烈なファンを獲得できず、不完全燃焼感がありました。やはり、エンジニアとしては使われるサービスを作りたいんですよね。
初期のファンは何万人といる必要はなく、たとえ数百人の利用者であっても、その数百人が絶対必要と感じているサービスは素晴らしいと思っています。
コアな利用者がいるサービスを作りたい、使ってほしい。悩んでいる時に思い出したのが、宮崎県の母方の実家で営む林業では「業務中に怪我をしている人が多い」ことでした。山で働く人にとっては雨が降るだけでも足場が悪くなり、斜面を滑り落ちるような命に関わる事故につながります。
少しでも労働災害を減らすサービスは、「絶対必要」と感じてもらえるのではないか。Lightblue Technologyがミッションとして掲げる「先端技術を応用し、労働環境を向上させる」はこのような背景から生まれました。
マッチングサイトでの失敗と主力事業である画像解析のノウハウを活かし、自社のサービスがないと困ると思ってくれるコアな利用者をBtoB領域で増やしていくことが今後の目標です。
自分のやりたいことはなにか。中長期的なキャリアを描いて企業を選ぼう
今の時代に定年まで勤めあげるビジョンが完全に見える企業は少ないと思います。そんな時代だからこそ、中長期的に自分がどんなキャリアを選びたいかを考え、やりたいことができる企業へ入社するのが良いと思います。
ただ、やりたいことが明確ではない人の方が大半かもしれません。今やりたいことが明確ではない人は、何が自分にとって後悔しない選択なのかを考えてみてください。
実際、従来型の産業・従来型の人事制度の企業では、20代のうちは経済的期待値が高くなかったり、良い経験が積める環境ではなかったりする事が多いようです。
たとえば、従来型の産業・企業では事業環境変化の少なさからPDCAを回せる頻度が少なかったり、入社3年目で社外の会議に出たことがないケースもあるという事も聞きます。これでは確かに経験として物足りない。
一方、成長産業・領域では成長がしやすく経済的な期待値も高くなります。マクロ的・中長期的な視点で見ると、やりたいことがない人はこうした産業で働くことが後悔しない選択につながる可能性が高いと思っています。
もちろん従来型企業が必ずしも良くない訳ではなく、特に役職が上がるほど、優秀な方が大勢いらっしゃいます。一方で、その知識経験・スキルを身につけるためには、必ずしもその役職や年齢にならなければならない、という訳でもありません。若い年齢でも成長出来ることを期待して、試行錯誤できる環境に身を置くことをおすすめします。
やりたいことが明確ならロールモデルになりそうな人を探そう
やりたいことが明確な人は自分の理想のキャリアを歩んでいる人を探してみましょう。たとえばスポーツに関わる仕事がしたいなら、スポーツチームを持っている社長や広報など、実際にその仕事をしている人に話を聞いてみるのは一つの手段です。
学生なら熱意次第で誰かしらには会えるんじゃないかと思います。その人のようなキャリアを歩むには今何をすれば良いのかを聞いてみましょう。球団の社長になりたい学生に対して、「自社に入社した方が良い」と言う球団の社長は少ないでしょう。目的に最短ルートで辿り着ける選択を教えてくれるんじゃないかなと思っています。
実際に働いている人に会えるオフィス訪問をしたり、会社のIR情報をチェックしたりすることはとても重要です。就職四季報を使用している学生が多いと思いますが、行きたい業界や企業がある程度絞られてきたら、IR情報をチェックするのが良いと思います。
IR情報にはその企業の戦略や市場での立ち位置などがきちんと記載されていて、同業他社と比較すると強みや特徴が分かりやすくなります。実際、自社のインターン生にもIR情報をチェックすることを勧めています。
園田さんがおすすめする企業の調べ方
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オフィス訪問をする
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IR情報をチェックする
デジタル領域の需要が増すのは明白。最新のツールにキャッチアップしよう
どの業界でもデジタル領域の知見や理解度が重要性を増していくのは明白と思っています。デジタルなツールに素早くキャッチアップすることも必要になります。
たとえばメディア産業もマスメディアからインターネット上のメディアに切り替わっており、デジタル化の流れが逆行するビジョンは見えません。「Z世代の次の〇〇世代は紙だけを好む」なんてことは恐らく起こらないでしょう。
また、働く上では自分の仕事に誰よりも詳しくなることを目指しましょう。自分の仕事を理解して幅広く深い知識を獲得できれば、キャリアが大きく開けます。時代の潮流に振り回されない価値の高い人材になってほしいと思います。
取材・執筆:丹治健太