視点を変える。楽しんでみる。もがいてみる|就活こそ相手の「知りたい」に耳を傾けてみよう

トリニティ 副社長 山本 洋平さん

トリニティ 副社長 山本 洋平さん

Yohei Yamamoto・自動車整備士を目指していた専門学校時代、アルバイト先にて複数の社長から営業職としての誘いを受け、家具メーカーに企画営業として就職。2009年、トリニティに転職。モバイル機器やコンピューターアクセサリーの企画・製造・販売や輸入販売に従事し、開発、生産・物流管理、営業など幅広い役割を担う。2014年に取締役に就任、2023年より現職

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「どうすれば買ってくれるのか」を考える視点がキャリアの始まり

キャリアにおける最初のターニングポイントは、小学1〜2年生の頃。父親が働く会社のイベントでヤシの実の販売を手伝ったところ、思いのほか売り上げを出すことができ、その後も定期的にイベントに呼ばれるようになりました。

子どもながら「お客さんはどうすれば買ってくれるか?」を考えて試行錯誤したことを覚えていますし、モノ自体ではなく購入体験をもとめて買ってくれる人も少なくないことを肌で感じました。会社の人たちからもかなり褒められたことで、ぼんやりとですが「自分はお客さんとやりとりをしながらモノを売る仕事が得意なのかもしれない」と思ったことを覚えています

高校卒業に差し掛かるタイミングで父が急逝し、早く手に職を付けなければと自動車整備士になるための学校に進学。機械いじりやバイクが好きだったことが理由で、必要な資格はひと通り取得しました。

学業と並行して家計を支えるためのアルバイトを考えていた頃、父の昔の友人が声をかけてくださり、恵比寿の居酒屋に住み込みで働かせてもらえることに。日中は学校に通い、夜はアルバイト、という生活をするようになりました。

お店で働いていると、いろいろなお客さんから「君は絶対、営業に向いているよ」と言われ、自分でもなんとなく感じていた適性を見出してもらったのです。経営者の方から「うちで働かないか」と声がかかることもしばしばあり、一番熱心に誘っていただいた家具メーカーに就職することにしました。

山本さんのキャリアにおけるターニングポイント

入社後は企画営業の仕事を担いました。大手雑貨店やカタログ通販事業者と商談をするだけでなく、受注後に製造工場とやりとりをしながら家具を造り上げていく過程も担当していました。Apple社のiPodが流行っている時期だったので、iPodと連携できるスピーカー付きの机を企画し、ヒットを出したこともあります。

ただ、一度だけ大きなトラブルも経験しています。海外の製造工場が納品直前で倒産し、連絡が付かない状態になってしまったのです。既に契約をいただいている商品で「供給責任が果たせなくなる」と非常に焦りましたが、あちこちと連絡を取り、必要なパーツを集めて造り替えてなんとか納品に漕ぎ着けることができました。

そのときに協力をお願いしたのが、当社トリニティの代表・星川哲視です。その後やりとりが増えるなかで関係が深まり、「事業が成長しているので営業を担える人間に来てほしい」と相談を受けたことが始まりです。当時は初代のiPhoneが発売される前で、「iPodが世界を変えるだろう」と予見していたこともあり、モバイルやPCアクセサリーの企画や製造販売などを手掛けているトリニティの事業に将来性と成長性を感じて転職を決めました。

「相手への興味×自己開示の姿勢」が、人や企業との縁を生む

これまでのキャリアにおいて、履歴書を書いての就職活動は一度もしたことがありません。すべて人との出会い、人からの誘いで働く場所を選択してきました。人とのつながりや関係性は、何より大切にしてきたことです。

当社に転職する際も、この軸は自らの中にしっかりと置いていました。前職の会社は5〜6名程度の組織で、辞める直前は会社の売上の半分を私が作り出している状況。「転職は止めないが、できるだけ長くいてほしい」と相談をいただいたこともありましたし、一方的に辞めるのは私としても不本意だったので、転職の意思を伝えてから半年間は仕事を続けました。今ではその会社はなくなりましたが、当時の社長とは今でも連絡を取り合える良好な関係です。

これまで良い出会いに恵まれてきた理由としては、常に相手の考えに興味を持って接していたこと、そして積極的に自己開示をして自分の考えを発信していたことの2点が大きい気がします

初めて販売を経験した子どもの頃から、「人はなぜそう考えるのか」「どうやって決断するのか」といった人の心理や行動パターンを想像することを楽しく感じていて、また自然にできることでした。専門的な理論を学んだわけではないですが、実体験ベースで相手の考えや興味を探る習慣が身についていたのかなと思います。

また「自分から話しかけていかなければ何も生まれない」という気持ちも強かったので、自己開示を恐れず、受け身ではないコミュニケーションを取る姿勢も心掛けていました。何人かの社長に雇いたいと思っていただけたのは、「こいつは何かやってくれそうだ、おもしろそうだ」と多少なりとも感じていただけたからかと思います。

「一緒に働きたい」と思われる人になるための習慣

これから就職活動をする人たちに何かアドバイスできるとすれば、相手の目線で考えることをおすすめしたいです。

「自分がどうしたいか」ではなく、「この会社はどういう理由で自分を採用するのだろうか」を考えてみる。もっと具体的にいえば、「会社は今こういう状況にあって、若手人材に何をもとめていて、自分にどういう要素があるから採用するのかな」と想像してみてください。その会社がもとめているものを仮定し、そのなかから「自分はこれを出せる」と思えるものがあれば、それをアピールしてみるのがおすすめです。

その会社がもとめているものを理解するには、業界内での強みやその会社が挑んでいる市場の状況を知る必要があります。こうした下準備をしているかどうかは、面接の会話のなかでポロッと出てくるもの。会社のことを調べないまま面接に臨むと、的外れな会話で終わってしまう確率が高まるでしょう。

厳しい意見に聞こえるかもしれませんが、多くの企業は学生さんに「正解」を語ってほしいとは思っていないはずです。その人なりに興味を持って、業界や会社を見ようとしてくれているかどうか。そこを知りたいのだと思います。メーカーであれば最低でもその会社の商品に触れておき、その会社が考えていることをぜひ想像してみましょう。

「自分なりに御社の状況はこうだと思った、だから自分はこういうところで貢献できると思った」といった採用側の目線に立ったトークができるだけで、就職活動の様相は大きく変わってくると思いますよ。

山本さんからのアドバイス

「バックアップの用意」が仕事の確実性や信用力につながる

トリニティ 副社長 山本 洋平さん

当社トリニティに入社して多種多様な仕事を経験できたことは、キャリアにおける2つ目のターニングポイントです。営業だけでなく、商品開発、配送や倉庫の手配、カスタマー対応など、あらゆる仕事を担いました。

会社が勢いよく成長するフェーズでは、組織体制として追いつかない部分が出てくるのが常。うまく回っていない部署があればすぐに入って、別の部署で何かあればまたそちらに行ってという、社内の“問題解決屋”として仕事をするなかで、キャリアの幅を広げられたように思います

2014年に取締役になってからは役員会議にも出席するようになり、会社全体を見る俯瞰的な目線を培えたり、将来のビジョンに対して意見を出したりと、これまでとはまた毛色の違った経験も積ませてもらっています。

こうして横に縦にと自分がかかわれる範囲が広がってきたなかでは、うまくいったことも、失敗したこともたくさんあります。ただ、「こうやればこうなるだろう」という仮説を立て、実際にその結果が出ると安堵はしますが、そうしたときも「やり遂げた」「充実しているな」といった心境にはなりません。うまくいけばいったで「今回はなぜうまくいったんだっけ?」と考え始めてしまう性分なので(笑)、分析や反省してしまう習慣は一生、抜けないのかなと思います。

唯一純粋に「うれしい」「うまくいった」と思える瞬間をあげるとすれば、会社の利益がしっかり上がって社員たちにそれを還元でき、皆が喜んでいる姿を見る瞬間ですね。

つい分析や反省をしてしまう習慣にもかかわる部分ですが、物事を進める際には、並列で複数パターンを想定し、バックアップを作っておくことをポリシーとしています。100%確実なことは絶対にないと思っているので、「Aで進めるけれども、万が一何かあったときにはBを用意しておこう」というスタンスです

こうした性分なので、仕事が属人的で誰か1人で回しているような状況を見ると「危ない」と感じます。機械についても万が一の故障を考えてリスクを分散しておきますし、発注先の工場も絶対に1社にはせず、複数の工場に分散して依頼するようにしていますね。これは前項でもお伝えした、過去のトラブル経験から学んだことかもしれません。

仕事の量で考えれば、誰か1人、やりやすい1社に頼って任せてしまうほうが圧倒的に楽です。それでも、バックアップを用意しておくほうが仕事の確実性を高められます。「何かあっても対応できる」という姿勢で仕事に取り組むこと自体が、取引先からの信用や信頼感にもつながっていくと考えています。

山本さんからのメッセージ

現在は国内の新しい拠点、そして国境をまたいだ海外拠点の立ち上げにもチャレンジしています。毎日情熱をもって楽しんで仕事ができていますし、自分のキャリアと一体化しているような感覚さえもありますね。トリニティとして今掲げている事業計画をしっかり推進していくことが、今後のビジョンです。

その先のことはまだ考えていませんが、常に「それまでに培った人とのつながりで次の仕事に飛び込める状態でいたい」という気持ちはあります。30代くらいまでは真新しいところに自分の売り込みをするような機会があっても良いと思いますが、ある程度キャリアを積んだら、それまでの自分の仕事ぶりを見てくれている人・評価してくれる人と一緒に仕事ができるのが理想かなと。そうできるような人生でありたいと思います。

さまざまな考え方があるかと思いますが、仕事で知り合った人に「うちに来ない?」といってもらえるくらいの信頼関係を築く姿勢は、これから社会に出る人にもおすすめしたいポイントです。

「うまくいく方法は必ずある」その前提を出発点にしよう

充実したキャリアを歩んでいくためには、うまくいく方法を考える目線を持つことも非常に大切です。的外れでも構わないので、自分なりに「こうすればうまくいくんじゃないか?」と考えてみる習慣を付けておくと良いと思います。

経験上、解決策というのは意外なルートから見つかってくることが多いです。従来の方法や固定概念にとらわれているときはなかなか答えが見えてこないので、できるだけ思考の枠を広げて柔軟に考えてみること。「▲▲にこだわっていたけど、そもそも〇〇をやりたかったわけだから、◎◎でもいいんじゃない?」という感じで、問題や事象を違う角度から見てみてください。

仮に明確な解決策が見つからなかったとしても、「無理だ、できない」と思っても、一旦その思いを脇に置いて、目の前の問題や事象に齧り付いてみてください。「必死でやっていたら、なんとなく解決していた」ということも往々にしてありますし、もがく過程で自分のできることが広がり、問題が解決する頃には大きな成長を果たせていると思います。

自分の経験だけでなく、当社の若手社員たちを見ていても思うことです。一人ひとりが大きな金額を持ち、かなりのスピード感で事業を動かしている少数精鋭体制の会社なので、若いうちはプレッシャーがかかることもあるようですが、そこで必死に踏ん張った結果、大きく成長していった社員の例を何度も見てきました。

壁にぶつかったときの思考法

就職活動の結果についても、柔軟に考えてほしいです。仮に第一志望の業界・企業に入れなかったとしても、本意ではない部署に配属になったとしても、「やってみれば興味を持てるかも?」と思い込んでみる。そして「こうやったら楽しいかも、うまくいくかも!」という前向きな気持ちで取り組んでみましょう。

それにどんな仕事にも必ず、どこへ行っても通じる「普遍的なスキル」を得るチャンスが潜んでいるもの。この機会にそれを自分のモノにしておこうという気持ちで取り組んでいれば、自分の武器が増え、次のチャンスにつながっていきますよ。

たとえば、好きな食品のメーカーに行きたかった人が、内定をもらえたのは機械部品メーカーだったとします。「売るモノ」に興味を持てなくても「売る力」を自分のものにしてしまえば、その手腕はキャリアを通じて活かすことができるはず。

どうしても前向きになれないならキャリアを選び直せばいいと思いますが、絶対にNGなのは嫌々やってしまうこと。「あれがダメ、これは嫌だ」といった気持ちで取り組んでいても仕事のクオリティが落ちるだけで、その先に良いキャリアが開けていくことはありません。

ある程度の希望はあって然りですが、理想どおりではなくても楽しくやる方法やマインドを持ってさえいれば、ファーストキャリアがどうであれ、前向きに自分の未来を広げていくことができると思います。

山本さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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