「何をやるか」より「誰とするか」で未来を見つめる|就活こそ本音でぶつかっていこう

SGグループ 執行役員 コーポレート部部長 吉田大輔さん

Daisuke Yoshida・1999年の大学卒業後、フリーターを経て2000年に契約社員としてリクルート専属代理店のサン・アドセンターへ入社。その後、マネージャーとして正社員となる。入社5年目にリクルート代理店営業部門ALLの年間MVPを獲得。2005年にGMOサンプランニングに転職し取締役まで昇進するも2009年に事業撤退。後、GMOアドパートナーズグループ内各社にて新規事業立上げや人事責任者などを経て、2018年にはIndeed Japanに転職し直販セールスのディレクターとして活躍。2021年5月より現職

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自信も展望もなく始まったキャリアでも道は拓ける

学生時代、勉強は苦手で、高校から大学進学時には、系列大学へのエスタレーター式の進学ができないほどでした。何とか別の大学へ進学しましたが、大学4年の3月に卒業できず、半期かけて不足単位を取得して9月に卒業しました。

しかも当時は就職氷河期の真っ只中。就職口が見つかるか不安でしたが、人材派遣ブームで採用を拡大していた人材派遣会社の内定をもらうことができました。

ところが300名の内定者が集合する内定式の当日になって急に「こんな会社は嫌だ」と感じてしまい、その日のうちに内定を辞退

一時期は、大学生時代から続けていた居酒屋のアルバイトを本職にしようかとも考えました。人とコミュニケーションするのが好きで得意でしたから。

しかし一度くらいはサラリーマンの世界を経験しておきたいと考え直し、大学卒業から約半年後に、就職情報誌で見つけた広告代理店のサン・アドセンターに契約社員として入社したのが、社会人としてのキャリアの始まりです。

その会社はリクルートの専属代理店でリクルート社の媒体の広告営業が仕事です。私は契約社員ですから結果を出さなければ契約終了の可能性もある立場。

だからこそ、その心配をすることなく仕事ができる正社員に対してはライバル心を燃やしながら仕事に邁進しました

とはいえ仕事の知識やスキルがあるわけでもない自分に自信が持てず、ただがむしゃらに働くくらいしか結果を出す方法が見つかりませんでした。

それで毎朝7時には出社し、自己紹介の資料や、リクルートと競合媒体の資料など1日の営業活動に必要なツールを100セット用意。朝9時には担当地区で飛び込み営業を始められるように準備しました。

資料を詰め込んで重さが何十キロもある巨大な鞄を抱えて回った営業先では、目の前で名刺を破り捨てられ悔しい思いをしたり、怖いお兄さんたちの事務所を訪ねてしまい肝を冷やしたこともありました。

それでも、ひたむきに営業を続けていくうちに仕事のコツというか、営業活動において必要なポイントが理解できるようになりました。

たとえば本当に必要な資料がどういうものなのか、また営業で重要なことは相手の興味・関心をつかむこと、などです。そしてそのためにはどのようにヒアリングしたらいいのかも体得できました。

その後、契約社員のままチーフに抜擢され、更にはマネージャーとして正社員採用されました。営業の仕事は学校の成績も肩書きも関係ない人対人の仕事です。

自信もなく始めた仕事でしたが、続けることでコツも自信もついてくる、ある意味とても自分に向いた職種だったのかもしれません

吉田さんの就活

  • 半年遅れで大学卒業し内定するも辞退

  • 一時期は居酒屋バイトで食いつなぐ

  • 就職情報誌で見つけた契約社員の仕事に就く

仕事選びは、あせらず、気負わず、自分らしく

こういった経験をしてきたからこそ言えるのは、就活については正直なところ気負わないで良いということ。いまの世の中は終身雇用ではないし、少し気軽に考えてもいいかなと。

それよりも自分の強みや得意な事柄、楽しいと思えることをとことん突き詰めて、それを評価してくれる会社、自分が共感できて自分を伸ばしてくれる会社を見つけることが最重要ということです。

またキャリアは、で考えないでで考えるべきだということ。それぞれの時点で、目の前の仕事に集中する。その一つひとつが自分のキャリアとして線へとつながっていくわけです。

点であるときには自分では気づかなくても、後から振り返れば線としてキャリアがつながっていると分かるはずです。

ファーストキャリアの選び方については、「何をやるのか」も大事ですが「誰と仕事をするか」がより大事だと思います。

社会人になりたての頃は知識もスキルもないので、周りに協力し支援してくれる仲間・先輩・上司を見つけられるかが重要なポイントだからです

ただしそれを見極めるのは難しいのも事実。企業側も良い事、見せたいことは強調し、そうでない部分はうまくオブラートに包みます。

会社説明会要員やリクルーターの人だけを見て企業を判断するのではなく、できれば入社3年、5年、7年の社員に仕事や職場についてヒアリングできる機会をセットしてくれるように頼むのも方法の一つです。

ファーストキャリアで重要なこと

  • 「何をやるか」より「誰と仕事するか」

  • 自分を引き上げてくれる人が社内にいるか

  • 社内のさまざまな人の話を聞いたうえで選ぶ

ときには諦めたり方向を変えることも必要

最初の飛び込み営業の2年間を含め、最初の会社には6年間勤務。入社5年目にはリクルート媒体の広告営業をする首都圏の代理店営業担当者、約1000人のトップに立ち年間MVPを獲得しました。

自分に自信が付いたこともあり、そろそろ自分で事業を立ち上げたいと考え始めた頃、私が会社を辞めそうだとの噂を聞きつけた競合代理店の社長にヘッドハントされました

もちろん同じ業界のライバル企業への移籍はしたくありませんでしたし断ったのですが、何度も熱心に誘われ、いろいろあった末に申し出を受けました。

移籍先のGMOサンプランニングではアルバイト事業領域の採用部署を立ち上げ、当時最大手だった派遣会社の全国募集の仕事を新規開拓。これがリクルート代理店史上初の3四半期連続の最優秀代理店賞の獲得につながりました。

しかしその後、リーマンショックや最大手派遣会社の行政処分が重なり事業は暗転。

160人のスタッフと約30億円の売上高があったこの会社を整理することになったのはビジネス人生において最大の危機であり、二度と味わいたくない苦い記憶です。

こうした経験を積んできた立場として、これからキャリアを築いていく後輩や就活生たちにアドバイスしたいのは、ときとして自分の力が及ばない事態に直面する場合があるということ

駄目なものはどんなに頑張っても駄目。そういうこともあります。ですからときには諦める。いま行き詰っていることは今後の仕事や自分の人生、キャリアのなかで乗り越えるべき壁なのかどうなのか。いったん立ち止まって考えてみるのが大切です。

どうしても苦手でできないことや、乗り越えなくてもいい壁の攻略に手こずるより、別の方向で時間やエネルギーを投資した方が、よりハッピーになれることもあるでしょう

吉田さんが歩んできたこれまでのキャリアの画像

本音でぶつかって自分に合った会社を見つけること

自分に合った会社を見分けるのは実際問題として大変難しいのが現実です。ただしできるかぎりの努力をするに越したことはありません。そのための前提となるのが、自分の思いを正直に、ストレートに伝えることです。

たとえば志望企業を併願していれば、それも相手にきちんと伝える。言葉に責任を持ち自分の思いをしっかり説明する。自分の得意も不得意も率直に明かして相談する。

それで自分が腹落ちするような答えや言葉が返ってこないようなら、その会社との相性は良くない可能性が高いでしょう

反対に納得できる言葉や回答が聞けて、ここなら自分を成長させてくれる、引き上げてくれると感じたのなら、その会社を選んでみても良いでしょう。

就職希望者とそのように率直な関係性を持てる会社が理想なのですが、企業側にとってもそれは難しいこと。当社もそれを目指していますが道は半ばです。逆に言えば、それができている会社は評価に値すると思います。

普段はSGグループの執行役員としての仕事を手掛けていますが、人事関連も統括しながら事業を動かすCHROとしての業務を務めています。

その視点で若者の就活を見ていると、自分自身のことをしっかりと理解し、企業研究も入念におこない、自分がアピールすべきこともしっかり決めて面談に臨んでも、上手くいかないことがたくさんあるように見えます。

それはなぜか。自分が伝えたいことだけを伝えすぎるからです。むしろ相手の知りたいことは何か。相手の質問の意図は何か。それを常に意識しながら対話すればうまくいくはずです。

相手の立ち位置を敏感に感じ取りつつ会話を組み立てる訓練をして面談に臨むくらいで良いと思います。

また事前に自分が志望する会社について誰かに話をしてみて、何か違和感があったり、歯にものが詰まったような物言いしかできない部分があったりした場合は、心配な点不明点が残っている証拠。もう一度よく考えてみた方が良いはずです。

反対に、自分のことをよく知っている先輩や友人に、志望している会社について話してみて「君らしいね」や「ぴったりだね」といった賛同を得られたなら安心ですね。

企業との面談についてのアドバイス

  • 本音をストレートにぶつけてみる

  • 相手が知りたいことを意識して話す

  • 思いを誰かに話して中身を点検する

時代が求める「見立てる」「仕立てる」「動かす」力

これからの時代の人材に求められるのは、「見立てる」「仕立てる」「動かす」の3つの力です。3つの力を兼ね備えれば経営者の資質ありですが、どれか1つに抜きん出ていても価値は高いといえます。

これからの時代の人材に求められる3つの力の画像

部活動にたとえるなら、マネージャーは見立ての人で、副部長は仕立ての人、部長や監督は動かす人に当たります

「見立てる」とは物事を構造的に把握する、俯瞰的に捉える、分析する能力と言い換えられます。具体的には情報収集や優先順位付け、今後がどうなるかの予測に長けアンテナが敏感な人で、マーケティングの仕事に向いています。

「仕立てる」とは仮説や問題・課題に対して、施策を考えたりプロセスを作り込める力。具体的には目標を定めそのための計画を立案しPDCAを回せる人で、販売促進や企画の仕事に向いています。

「動かす」とは人の心を動かし、ビジョンを打ち出したり統制・統率する能力。具体的には方針決定・意思決定や教育・育成ができる人で、営業の仕事に向いています。

自分がどの領域に強いのか、やって楽しいと感じられそうかをじっくり見極め、その強みを伸ばすのが最善です

吉田さんが贈るキャリア指針の画像

取材・執筆:高岸洋行

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