人とのコミュニケーションはゼロ距離で|出会いとチャンスでキャリアを上書きしていこう

スマートエナジー 執行役員 山田 榮太郎さん

スマートエナジー 執行役員 山田 榮太郎さん

Eitaro Yamada・大学卒業後、メーカーで国内外での営業に従事。その後専門商社で新拠点の開設や電力会社との体制構築に携わった後、人材業界に転身。2013年、ジャパン・リニューアブル・エナジー(現ENEOSリニューアブル・エナジー)に入社し、人事総務部長、情報システム部長、コーポレート本部長を歴任した。2024年8月からスマートエナジーに入社し、以降現職

この記事をシェアする

人の本質は「肌」で感じる。バイアスなきコミュニケーションの極意

自分のコミュニケーションの核にあるのは、高校・大学時代のドイツへの滞在経験です。この頃に育まれた価値観は、その後のキャリアに少なからず影響を与えていると感じます。

高校時代に姉妹都市交流の一環で、初めてドイツに行きました。ドイツ語もできないなか、文化や価値観の違う人々と触れ合うことが刺激的で、大学卒業後に1年間滞在しました。その後、海外営業の仕事でもドイツに渡っています。

何度も訪れたドイツで感じたのは、コミュニケーションの重要性です。言葉がわからないので、ひたすらに感覚を研ぎ澄まし、目の前の人と真摯に向き合うしかありませんでした。

この時培った“目の前の人と全身で向き合うコミュニケーションの姿勢”は、後の国内外での営業としての経験、人事担当としての経験に活きています。

誰かと向き合うときに最も意識しているのは、先入観を持たないこと。肩書きやレッテルなどから、勝手にプロファイリングしないということです。予備知識はあっても良いですが、対面しているときは相手に集中し、その言葉や仕草をまっすぐに受け止めるようにしています。

これから社会に出る皆さんも、たくさんの人と出会うでしょう。バックグラウンドも多様で、自分の理解を超えるような人にも遭遇するかもしれません。そのようなときこそ、まずは目の前の人の言葉・立ち居振る舞い・雰囲気を正面から受け止めて、肌で感じたことを信じてください。そうすることで「良い出会い」が生まれ、意義深いコミュニケーションを取れるはずです。

バイアスのないコミュニケーションとは

世間一般の情報に頼りすぎず、目の前の人・出来事を受け止め、本質を見極めるには、直感を磨くことが大切だと思っています。近年世の中は情報過多で、常に不特定多数の情報にさらされている状況です。自分からさまざまな情報を求め、探し、手にしては、自分が求めていた情報にたどり着いて安心している人も多いのではないでしょうか。

たくさんの情報に公平に触れていると思っても、結局は自分の持つ考えを補強するような、自分にとって都合の良い情報しか受け入れないという状況に陥りやすくなります。場合によっては、情報収集そのものが自分の正しさを確認するための作業でしかなくなることもあるでしょう。

そのような事態を避け、フラットな状態で情報を受け取るためにも、五感をフル活用し自分の頭と体で情報の質や真偽、自分にとって必要な情報かどうかを判断できるようにすることが、とても重要だと思います。人とリアルに会って話を聞いたり、現場を見たり、触れたりといったことをおざなりにしないでほしいですね。その先に、自分の直感・判断の軸が築かれていくことでしょう。

山田さんからのメッセージ

 

キャリアの決め手は人。仕事内容よりもともに働きたいと思える出会いを重視しよう

スマートエナジー 執行役員 山田 榮太郎さん

思い返せば、自分の場合も先入観を持たずに目の前の人に向き合い、「この人と働きたい」という観点でキャリアを選んできたと感じます。では、どんな人と働きたいと感じたのか。それは、嘘がない人です。心にないことは言わない、信念を持っていてそれを隠さない、繕ったりごまかしたりしない人間性に強く惹かれます。

自分の仕事を選び、キャリアを積み重ねていくなかで、実は「どんな仕事をするか」よりも、「どんな人と働くか」のほうが重要なのではないかと思うようになりました。どんな仕事でも、経験を重ねれば慣れて上達します。自分の意思で上手くなって、業務範囲を広げたり、工夫したりすることもできるでしょう。

一方で一緒に働く人間は、自分の意思で変えられるものではありません。だからこそ、信じられる人、頼れる人、なんとなく好きだと思える人といることに、何にも代えがたい価値があると思うのです

人事採用や育成、組織作りにかかわってきたなかでも、「この人と働きたい」と思える人を選んできました。逆もまた然りです。あなたが働く場を選ぶときにも、最後は一緒に働きたい人がいるかどうかを大事にしても良いのではないでしょうか。人を決め手にしてキャリアを決断すると、結構上手くいくと思いますよ。

出会いは財産。かけがえのない縁を大切に

メーカーから商社、そして人材業界へとキャリアを進めてきましたが、そのきっかけになったのはいつも「人」でした。最初の転職は、メーカー時代にお世話になった方の縁で知り合い、声をかけてもらったことがきっかけです。まさに嘘のない人柄の社長で、「この人のもとで頑張ってみたい」と思い、新規事務所の立ち上げなど、まったく経験のないところから奮闘しました。

その後、経験を重ねるうちに先が見えない状態になり、人材会社に相談したところ、「うちの会社でチャレンジしてみたら?」と声をかけていただいたのです。ここでも、担当いただいたコンサルタントと同社社長の人柄に魅力を感じて、経験のない業種に飛び込みました。

山田さんのキャリア変遷

決断のきっかけは、外部からやってくることもあります。出会いという素晴らしい偶然が、自分の進むべき道を作ってくれました。誰かから手を差し伸べられる、行く先を先導される瞬間に巡り合うことができたら、素直にそれに従ってみるのも重要な選択肢の一つだと思います

皆さんのキャリアの分岐点でも、かけがえのない出会いがあることを祈っています。

チャンスの波にはとことん乗る。波を乗る経験なしに成長は望めない

信頼できる・一緒に働きたいと思える人との出会いも含めて、チャンスにはとことん乗っかってチャレンジしてみることをおすすめします。もしチャンスに乗った結果うまくいかなかったとしても、自分の実力を知ることができますよね。数年後に同じようなチャンスが巡ってきたら、今度こそ乗りこなして成功できるかもしれません。経験や知識が足りなくても、まずは手を挙げてみましょう。

一方、少し経験を積むと、チャンスを選り好みしてしまうようになるのも人の性です。「これくらいの機会ならこの先にもまたあるだろう」「この機会がなくても不利益はない」など、なんとなく挑戦に二の足をふんでしまうようになりがちです。しかし、こういった姿勢は感性や感度の衰えを招きます。結果として成長の機会も減ってしまうように思いますね。

良いタイミング、巡り合わせ、機会が来たと思ったら、まずは乗ってみる。来た波は乗り続けることでしか、乗りこなせるようになりません。実力や経験があろうが、なかろうが、まずはトライする気持ちを持ち続けてほしいです。

チャンスへの向き合い方

経験がなくて勇気が出なかったり、選り好みして一歩をふみ出せずチャンスを活かせない人のほかに、「物事を自分ごととして捉えられない人」もいると感じます。自分が直面している好機なのに、なんとなく人ごとのように思って見逃してしまうのでしょう。

自分ごとの意識が持てず好機を逃したり決断を人任せにすると、失敗をしたときに結果に納得感が持てず、人のせいにしてしまいがちです。それを繰り返していると経験が自分のものとして蓄積されず、もちろん成長にもつながらなくなります。

一方でどんなキャリアであっても自分で決めて自分で実行するのなら、その結果に対する納得感が生まれます。たとえ失敗したとしても成長のバネになるでしょう。それを忘れず、どんなときでも自分の軸を持って決断し、自分が選んだことに誇りを持ってキャリアを積み重ねてほしいです

壁の高さ=成長の大きさ。小さな積み重ねで前に進もう

今の若い人を見ていると、「キャリア」という言葉に振り回されて、焦っているように感じます。常にキャリアアップを目指して生き急いでいるように思えるのです。しかし、キャリアにはアップもダウンもないと私は思います。あるのは積み重ねだけ。焦らずに上書きし、一つずつ積み上げていけば、自分だけのキャリアが作られていくはずです

そんなことを言っている自分も、30代に入った頃、学生時代の友人から取り残されているように感じて焦っていました。「このままではいけない」と思い、今まで手にしたことがなかったような本を読んでみたり、目の前の仕事に雑念を捨てて取り組んでみたり、現状を変えるためにとにかく模索しました。

すると視野が広がり、友人たちに引け目を感じることが少なくなりました。友人たちからの扱いや見られ方も変わりましたね。「最近しっかりしたんじゃないか」と言われるようになった気がします。

長いキャリアを歩んでいくうえでは焦っても仕方がありません。キャリアは一歩ずつしか進めないので、日々の出来事を大切にすると良いと思います。

ときには目の前に高い壁が立ちはだかっているように感じることがあるかもしれません。しかし、壁は越えるものではなく立ち向かうものだと思います。自分が成長すると目の前の壁も高くなるので、いつまでたっても目の前の壁を越えることができないときもあるでしょう。それでも壁の前で全力を尽くす。ただそれだけで良いのです。

もし苦しくなったら、過去を振り返ってみてください。昔は越えられないと思っていた壁をいくつも越えてきたことに気づくと思います。皆さんも自分だけのキャリアをたゆまず、進んでいってください。

山田さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

この記事をシェアする