熱意ある志ほど言葉にせよ|意志の力が理想のキャリアを形作る

グローバルウェイ 代表取締役社長兼CEO 小山 義一さん

グローバルウェイ 代表取締役社長兼CEO 小山 義一さん

Yoshikazu Koyama・慶應義塾大学卒業後、NTTソフトウェア(現NTTテクノクロス)に入社。外資系コンサルティング企業への出向を経て、コンサルティング事業の立ち上げに従事。2012年にグローバルウェイに入社後、会計系コンサルティングファームを経て2020年に同社に帰任し、代表取締役に就任。以降現職

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憧れに導かれたファーストキャリア

学生時代は経営工学を学んでいました。論理的/工学的な考え方のもとで、社会のさまざまなことを決めたり改善したりできるということに、驚きとおもしろさを見出したのを覚えています。生活の瑣末な部分にもロジックや技術が活かされているということに、初めて気づいたのがその頃です。

そんなことを考えていた当時、生活に影響を与え始めた新たな技術の結晶が、パソコンでした。Windows95の大ヒットを経てようやく一家に一台パソコンが導入され始めた時代。就職先を考えたときに思い浮かんだのも、コンピューターのイメージでした

一家に一台置かれ始めていたとはいえ、パソコンはまだまだ憧れの機器でした。私もかろうじて触ったことはありましたが、SF映画の中で使われる最先端の情報機器という目で見ていました。だからこそ、これからはコンピューターが社会の基盤を作るような時代になるだろうという期待があり、IT業界に足を踏み入れることにしました。いくつかの候補のなかで、若いうちにたくさんの経験を積もうと、ご縁をいただいたNTTソフトウェア(現NTTテクノクロス)に入社しました。

とはいえ本当に純粋な憧れや将来性への期待だけでIT業界を選んだので、入社の時点ではほとんどパソコンを触ったこともありませんでした。プログラミングどころか、ブラインドタッチすらできなかったほどです。そんな自分がこれだけ長くIT業界にいるのですから、憧れや期待、希望の力は大きいですし、長年にわたってモチベーションを支えてくれるものだなあと感じます

純粋な気持ちがキャリアを作る

まずは、漠然とした憧れで構いません。好きなこと、心が動くこと、直感的に未来に期待できることを、ファーストキャリアの手がかりにしてみてはどうでしょう。それが予想もせず、期待以上のキャリアにつながっていく可能性はあると思います。

志実現のカギは公言すること。応援される努力をしよう

私が入社したのは、コンピューターが誤作動を起こすと恐れられていた2000年問題を目前にした時期だったので、会社は多くのエンジニアを必要としていました。そんななかでエンジニアとして採用された私は、周りとのスキルの差を感じ、必死で勉強しながら食らいついていたことを思い出します。特に外注先のインドの技術者のレベルは非常に高く、自分の実力のなさに危機感を覚えました。

必死に取り組んだ勉強の成果が認められたのか、やってみたかった外資系コンサルティング会社への出向メンバーに抜擢されました。入社以来「いろいろな経験を積みたい」「若いうちから社外でもさまざまな挑戦をしてみたい」と公言していたことも功を奏したようです。また、当時の上司が快く送り出してくれたことも良いバックアップになりました。

「やりたい」をかなえるために

出向が決まった時点では、入社時同様、出向先で必要となる会計やパッケージシステムの知識は持ち合わせていませんでした。それでもやってみたいという思いは変わらず強くあり、機会があるごとに口にしていました。周りに意思を伝えていたからこそ、チャンスを得られたのは間違いありません。

やりたいことは胸に秘めていても、なかなか形になりません。口に出すことでサポートを得られたり、情報が集まったり、チャンスに近づきやすくなるはずです。そこに実力がともなっているかどうかは、関係ないと思います。

とはいえ、夢をかなえるために努力する姿勢や基礎力を評価されることは大切です。周りが気持ち良く応援できるような存在になることも重要だと思いますね。

どこまでも自分主体で動ける人こそ最強

いわゆる日本の大企業の系列会社から、外資系のコンサルティング会社に環境が変わったので、その文化の違いには驚かされました。昨今新卒の就職希望ランキングで上位に入るコンサルティング会社は、当時から「本当に頭が良く、若いうちから上昇志向の強い人が集まる場所」と言われていました。実際、優秀な人材が多く、実力主義が徹底された環境で、結果を出せばすぐにキャリアを伸ばせる仕組みが整っていました。

小山さんのキャリア変遷

ここで非常に優秀な人と一緒に仕事ができたことは、その後の自分のキャリアにおいて大きな財産になりました。優秀な人はなんとしてでも前へ進めようという思いが強く、結果にこだわります。自分がメインの担当でなくても、かかわっているからには成功に導こうと、自分から積極的に力を注ぎます。さらにいつも全体を見て、必要なアクションをとっているのも印象に残りました。

わずか2歳年上の上司がどんなことも自ら動いて結果を出している姿に、大きな刺激を受けましたね。

一言で言えば「主体性を持つ」ということなのだと思います。かかわるからにはうまくいくように、全体のなかで自分がやるべきことを全力でやる。いつでもそのスタンスで臨むことが、成功の必要条件なのだと学びました。

次の道は物事を成し遂げた先に見える

グローバルウェイ 代表取締役社長兼CEO 小山 義一さん

その後、出向先で学んだコンサルティングの手法を自社に持ち帰り、事業として形にしていきました。事業が軌道に乗ると、大きな達成感を感じましたね。同時にやりきったという満足感も大きかったです。

「やりきった」と一度感じると、ここではない次のステップを自然と探し始めます。そこで参画したのがグローバルウェイです。まったく迷いなく、この新たなステップに挑戦しました。

転職やキャリアチェンジ、人生の分岐点では、ポジティブな理由・目的が重要だと思います。ネガティブな理由で進路を変更しなければならないこともありますが、それだとどうしても後ろ髪を引かれたり、選ばなかった未来に執着してしまったりするんですよね。一方で「やりきったから、次のことをやりたい」というポジティブな思いをもとに進むと、前へ向かう推進力も強くなります。

小山さんからのメッセージ

キャリアを積み重ねるなかで、もやもやすることもあるでしょう。もがきながら次の道を見つけたいと、無理な選択をしてしまうこともあるかもしれません。でも、前へ進む力が感じられないなら、まだそのときではないのだと思います。もっとできること、やり切る余地があるのです。自分の全力を出し切ることで、選ばなかった未来に未練を感じない、前向きな選択を積み重ねていけると良いですよね。

やりきって次のステップへ

意志を持って新しい情報に触れてみよう

このように自分のキャリアを振り返ってみると、意志の力の大きさを再確認します。情報に触れること一つをとっても、ただ流れてきた情報に目を通すのではなく、積極的に自ら意志を持って触れることで、そのインプットは自分を動かす大きな力になるのです。だからこそ、たくさんの情報に触れ、本を読み、人に会い、制約をかけずに出会いを求めてほしいですね。

一方で、情報には多くの場合誰かの意思が加わっていることを意識してほしいです。編集されたり加工されたりした情報には、なんらかの意図が加わりやすくなります。だからこそ情報に触れたときには、できれば一次情報を探し、意図をふまえたうえで判断することが重要です。

自分から動いて得たものは、その後も自分を突き動かす力になります。情報に隠された意図には注意したうえで、興味関心の幅に制約をかけず、さまざまなものに触れてほしいですね。

デジタル/AIネイティブの世代らしく活躍を

若い世代の皆さんは生まれたときからインターネットがあり、当然のように一人一台スマートフォンを持っているでしょう。早い時点でAI(人工知能)にも触れています。古い世代とは感覚が違い、常識や感性も私たちとは違うものを持っているはずです。私たちの世代が考えもつかないようなことを成し遂げるに違いありません。

IT業界は比較的若い業界で、この30年ほどで急成長しました。しかし、あまりに急速に成長したため、技術や人材面での負債を抱えたままです。これらを革新し、新しい世代が思うままに力を発揮できるよう整えることが、私の最後のミッションだと思っています。

若い世代の皆さんは恐れずに、のびのびと自分の力を発揮してほしいです。皆さんが思う以上に、社会は若い世代に期待をしています。さまざまなことに興味を持ち、さらにもう一歩関心を深めながら、自信を持って歩んでいってください。

小山さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

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