40カ国以上を巡った末にたどり着いた現在地。「挫折の積立貯金」が導いた理想のキャリア

WEBMARKS 代表取締役 鈴木 晋介さん
Shinsuke Suzuki・同志社大学を卒業後、新卒で合成繊維の設備メーカーに就職。「海外支援に携わりたい」という思いで4年半の海外営業の経験を経て独立し、その後は多岐にわたる分野のコンテンツを制作。現在はWebマーケターを育成するスクールとしてWEBMARKSを立ち上げ、以降現職
キャリアの原点は父の思い。40カ国以上を渡り歩いた学生時代
私の名前、「晋介」は父が名付けました。「晋」は高杉晋作からとったもので、「介」は助ける意味合いを持つもの。高杉晋作のように新しいことをして、多くの人を助けられる人間になってほしい。そんな父の思いが、この名前には込められています。実際に父からは何度も「困っている人を助けられる人間になれ」と言われて育ちました。
そのおかげか、幼い頃から意識の根底に「人を助けたい」という思いが根付いています。まさにキャリアの出発点はここで、常にどうすれば人を助けられるか、人を助けるために今何をすべきかを考えてきました。
特に子どものころから興味を持っていたのは、発展途上国支援です。当時はユニセフの活動をテレビなどで目にする機会も多く、自然と「困っている人を助けたい」という思いと結びついたのでしょう。教師として途上国の子どもたちの支援がしたいと考えた時期もあり、結局のところかなわなかったのですが、小学校の教員免許も取得していました。
大学を選ぶ際にも国際協力の仕事に就くという夢は変わらず、京都大学の総合人間学部を目指しました。しかし受験に失敗し同志社大学へ。とは言え、そこで腐って貴重な大学生の時間を無駄にすることはしたくありませんでした。どう時間を使っていくか考えた結果、「まずは海外を知ろう」とバックパッカーとして40カ国以上を回る旅を始めたのです。
もちろん資金がかかるので、家賃2万円のボロアパートに住み、ほぼ毎日バイトをしてお金が溜まれば旅に出かける日々。バックパッカーだと当時は1日1,000円程度で旅をすることができたので、節約をしながら少ない資金でたくさんの国を回ることができました。
しかしそこから順調に国際協力の仕事に就けたかと言えば、そうではありません。多くの遠回りをして、迷いに迷った末に今があります。実際にどのようなキャリアをたどり、どのようにして夢の実現へ近づいているのか。その道のりについてお話しします。
順風満帆なキャリアの裏に味わった挫折

ファーストキャリアを選ぶ際には、もちろん「海外で働けること」「人の役に立つこと」の2つを軸に考えていました。極論、それを実現できるならどのような形でもかまわなかったので、業界・職種問わずとにかくいろいろな企業を受けましたね。
ちなみに、その頃唯一受けなかった業界がIT業界でした。友人がサイバーエージェントに就職したのですが、当時は「IT業界は怪しいもの」という価値観が根付いていて、「なぜそんなところへ!?」と疑問に思ったほどです(笑)。今こうしてIT業界に身を置いているのを思うと、この思い込みのせいでずいぶん遠回りをしてしまいました。
最終的に入社を決めたのは、合成繊維の設備メーカー。海外営業部に特化していて、「毎月海外に行けるよ」と言われたのが決め手です。それに、商社は大きなプロジェクトを発展途上国でやることも多い。「現地での雇用を創出して発展途上国を豊かにできる」と思ったのも大きかったです。
先輩はとても優秀な人が多く、そんな人たちに囲まれてビジネスの基礎・基本について学ぶことができたのは幸いなことでした。この時期があったからこそ、仕事をするうえでの自分のなかの基準値が上がったように思いますね。

仕事ではイタリア、シンガポール、インドなどの複数の拠点を渡り歩くことになり、多様な経験を積むことができました。必死に働いて入社後2年目には社長賞までいただき、3、4年目には拠点のトップを打診されるように。
こう聞くと一見順風満帆なようですが、この頃から退職を考えるようになったのです。
最初のきっかけは、インドに滞在していた頃。現地に2年ほど滞在し、工場につきっきりでした。睡眠時間は毎日3時間程度で、圧し掛かる責任と毎日溜まっていくメールに心身ともに擦り切れていくような毎日でした。移動中の飛行機の中でさえ必死に仕事をしていたほどです。
その努力の末に獲得した社長賞ではありましたが、どんなにプロジェクトで成功したとしても大規模すぎて自分がしてきたことの実感が得られないうえに、給料のようなわかりやすい形で返ってくるかと言えばそうでもありません。
だんだん自分が何をしているのか、何のために働いているのかがわからなくなっていきました。そう悩んでいる間もとんでもない激務に揉まれ、疲弊していく日々。
「本当にこれが自分のやりたかったことなのか」「自分は人の役に立っているのだろうか」と考えた時、インドの工場での劣悪な労働環境や、そこで働く現地の人の姿が脳裏に過りました。
もとはと言えば、途上国支援を夢にこの会社を選んだはず。それなのに、どんなに努力をして業績を上げても、そこで働く人々の状況はちっとも変わっていない。ある意味での挫折を味わった瞬間でしたね。心身ともに限界を感じ、退職を決意しました。
挫折は前進のための筋力になる。「月収30円」に見た希望
振り返ってみれば、これまでのキャリアは体感として挫折経験が圧倒的に多いものでした。大学受験の失敗に始まり、教員免許を取得するも就職となるとうまくいかず、1社目の企業でも結果として思うような結果は残せず──それでも、今できることに向き合い続けようと必死でした。我ながら、抜かれても抜かれても芽が出るタンポポのようだと思います(笑)。
とはいえ、これはチャレンジをしている人なら誰しも経験することです。挑戦はすればするほどしんどいもの。挑戦の先にすぐ成功があれば良いのですが、大抵まずは挫折が待っていますから。
ただ、個人的には挫折経験というのは筋トレと同じようなものだと思っています。チャレンジをすれば挫折があり、その挫折によって学びがあって、筋力がついてさらに大きなチャレンジができるようになる。数えきれないほどの失敗の上に、今の自分があるのです。

では、なぜ挫折を経てもなお前に進むことができるのか。これはひとえに、好奇心が刺激されるものや興味があるものに向き合ってきたからだと考えています。好奇心は、本能的な欲求。少しでも興味のある分野に手を付けてみると、「知りたい」が増えていくのですよね。結果として挫折をしたとしても、あきらめよりも先に「なぜ挫折したのか」という方向へ思考を切り替えやすくなります。
私の場合は、マーケティングや発展途上国支援が好奇心の種。それをとことん突き詰めていったことで、挫折したとしても腐らずに向き合い続けることができたのだと思います。
皆さんの中にも、好奇心の種はあるはず。それは偶然、運命的に見つかるものではなく、すでに持っていることが大半だと思います。そこへいかに水をやり続けられるか、いかに根気強く芽が出るのを待ち続けられるかで道は分かれると思ってください。
ちなみに私にとって芽が出たと感じたのは、起業後に数年事業を続け、やっと1カ月で30円を稼ぐことができた瞬間。たった30円、これだけでは生活の足しにもなりませんが、そのとき初めて「今までやってきたことは無駄ではなかった」と感じられたのですよね。
そこから少しずつ事業を軌道に乗せられるようになり、今に至ります。ずいぶん長い時間をかけましたし、遠回りをしてきたと思いますが、決して後悔はありません。皆さんも後悔のないキャリアを歩むために、ぜひ好奇心の種を見つけることから始めてみてください。

希望をかなえる近道は先人の知恵に頼ること
とは言え、好奇心の種から芽が出るまで根気強く向き合い続けるのは簡単なことではありません。どんなに頑張ってステップアップしていったとしても、悩みや課題は尽きないでしょう。それでも世の中にはやりたいことを成し遂げている人がいます。困ったときは、そのような先人の知恵を借りるのが一番だと思いますね。
そう思ったのは、私自身、すべてを独学でやろうとしたために遠回りをしてしまったのだと痛感しているからです。努力の方法を間違えるというのは往々にしてあるもの。目標から逆算すれば今やるべきはこれ、というのが見えるはずですが、自分の人生となると見えにくくなってしまうのです。
だからこそ、自分が本当に正しい努力を積み重ねているのか、今やるべきことはこれなのかと悩んだときは、ぜひ人生の先輩に聞いてみてください。職場の先輩でも、書籍でも良いでしょう。自分一人で考えようとせず、誰かからのアドバイスに耳を傾けてほしいと思います。

あとは、志を成し遂げやすい環境に身を置くことも大切です。周りの環境さえ整っていれば、大きく道を踏み外すことはないでしょう。
個人的には、やはり今はIT業界に夢を実現しやすい環境があるのではないかと思っています。大きな成長産業ですし、新しい風もどんどん吹き、いろいろな人がやってきます。その分チャンスが多い環境だと思いますね。
余談ですが、すでにお話ししてきたとおり、自分で事業を始めてお金を稼ぐのは本当に大変なことです。これを学生のうちにやっていると、就活のときにはかなり大きなアドバンテージになります。
個人で稼ぐというのは、企業のなかで稼ぐよりも何倍も難しいもの。たとえ10円でも「稼いだ経験」というのはかけがえのない価値があります。今現在、その難易度が比較的低いのもIT業界なのではないでしょうか。
若者の時間は「積み立て」。価値ある経験を重ねよう
今振り返っても、若者の時間というのは貴重だったと感じます。それこそ学生のときに海外を渡り歩いた経験は、今も自分の中に生きています。
積立貯金と同じで、若いときに得た経験や学びが大人になってから真価を発揮するケースは少なくありません。何より、自分でも気づかない間に自然と価値観が広がっているので、柔軟な考え方がしやすかったり、自然とピンチを回避する術を身に付けていたりします。
多くの経験は、若いうちにやるからこそ価値があります。皆さんにもぜひ、今のうちから一つでも多くの「経験」を貯めていってほしいですね。
おすすめなのは、身の回りの環境をガラッと変えてみること。留学でも良いですし、習い事やコミュニティに参加してみたり、少し旅行をしたりするのでも良いでしょう。身を置く環境やかかわる人を変えると、自然と新しい情報や価値観が自分の中に入ってきます。その瞬間こそが人生のターニングポイントになり、一気に成長できる瞬間が訪れるはず。
特に今の学生は、スマートフォン一つでできることが格段に増えています。何をするにもハードルが下がっているタイミングなので、小さな一歩で本当にたくさんのものが得られるでしょう。
皆さんの時間は有限であり、今が行動をするのに最適な瞬間です。ぜひ小さな一歩を踏み出してみてください。そしてこれから社会に出た時、活かせる経験を貯えておいてほしいと思います。

取材・執筆:瀧ヶ平史織
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