プロ野球⇒スポーツを支える立場へ|自分だけの“勝てるフィールド”を切り開くキャリア

データスタジアム 取締役 執行役員 松元 繁さん
Shigeru Matsumoto・埼玉県立朝霞高校を卒業後、ヤクルトスワローズに入団しプロ野球選手として活躍。1999年の引退後、データスタジアムへ入社。競技者の支援やスポーツファンに向けたデータ発信などを経て、現在は取締役執行役員を務める
SNS: YouTube / note / X(旧Twitter)
努力よりも才能がものをいうプロ野球の世界
血のにじむ努力よりも、才能がものをいう世界。それがプロ野球です。
いわゆる私のファーストキャリアは、そうした世界から始まりました。「努力が大切」という一般論を吹き飛ばすような結果の世界を過ごした10年。
幾度かの大きなケガも経験し、思うように結果が出ない苦しい時期もありました。そのときに痛感したのが、勝負の世界では「どこで戦うか」と「何を武器にするか」が、非常に重要だということ。
どれだけ努力しても、それだけでは埋められない差がある。一方で、自分の特性を活かせる場所を選び、そこで強みを磨けば、勝てるフィールドを切り開くことができる。
ものすごくレベルの高い集団で働くこと。自分の突出した特性を活かせる場所で活躍すること。さまざまな考え方がありますが、「やりたいこと」と「得意なこと」をしっかりと自分で理解することが、納得いくキャリアへの近道だと考えています。
「明日からおいで!」で始まった第二のキャリア
学生時代は野球に打ち込み、高校卒業後はプロの世界へ。実力が評価される厳しい環境で揉まれながら、野球人生を駆け抜けました。
28歳で現役を引退するとき、選択肢は球団に裏方として残るか、一般企業に勤めるかの二択でした。ただ、球団に残るといっても、年間契約。不安定な状況が続くことになります。今後のことも考えて「一刻も早く社会人経験を積まなければ」と思い、企業勤めを目指すことに決めました。
とはいえこれまで野球しかしていなかった身です。ビジネスの基本動作を身に付けるために、まずはPCの専門学校に通いました。その後就活を開始し、内定をいただいたのですが、あまり「やりたい」という気持ちが湧かず、入社を躊躇していました。心のどこかで「人生をかけてきた野球を活かしたい」と思っていたのでしょう。

そんなとき、データスタジアムの前身の企業が球団の取引先だったので、「スポーツに携わる仕事ができるかもしれない」と興味を持ちました。求人募集は見当たらなかったので、「1回話を聞いてほしい」と直接メール。いわば直談判です。すると返事がきて、当時の社長と面接ができることになりました。
迎えた面接当日。自分が元プロ野球選手だということを言っていなかったのですが、会社のスタッフの子が気づいてくれて。それを知った社長が「なんで言わないの。明日からおいでよ!」と言ってくれたのが入社のきっかけです。
そうやって半ば飛び込みのような形で入社が決まったのですが、今思えば怖いもの知らずだったと思います。本当にラッキーでした。
当時のバイタリティの原動力は焦りでした。4年制大学を出て就職した人と比べると“6年遅れ”です。とにかく前へ前へ、人一倍動かなければ、と思っていました。

“糧になる挫折”を繰り返してとにかく前進
人生のターニングポイントですか。振り返ってみると、17歳でのケガ、20歳での病気、25歳でのケガの3つがあったように思います。どれも挫折ですね。
就活生のなかには「なるべく挫折したくない」と考える人も多いと思います。しかし挫折の経験は成長のチャンス。プロ野球選手として数々の挫折を経験したことは、人生のなかで価値観を形作った、得難い経験だったと今になって思います。
挫折をどのようにとらえるか。とらえ方でその時々の成長が大きく変わると思います。挫折は「仕方ない外部要因」のときもあります。たとえば、野球でも、結果を出せば2軍から1軍に上がれることもあれば、結果を出しても上がれないことも。巡りあわせやチームの状況によっても変わるので、努力だけではどうにもならない部分も大きい。そういう外部要因に関しては、過度に反応しないこと。一定割り切ることが大切です。
ただし、自分でコントロールできる部分については徹底的にやり切ること。一度自分に負けたら「なぜそうなったのか?」を分析し、次は必ず勝つためにどうすればいいか徹底的に考え抜く。そうすると、挫折が自分の糧になっていきます。

そうはいっても立ち上がれないときもありますよね。そういうときは、メタ的な視点で考えるようにしています。「ここを乗り越えるならどういう選択肢がある?」とか、自分と会話のキャッチボールをして今の自分を俯瞰するように努めます。
最近だと自分の考えを整理するのにAI(人工知能)と壁打ちする人も多いですよね。それを自分の心のなかでおこなうイメージです。
そうやって自分と話していると「今これ考えても意味ないじゃん、じゃあ前に動かしてみよう」というふうに、次にやるべきことが明確になっていきます。そういう考え方は仕事にも活きていると思いますね。
野球を通して培ったもので“コミュニケーション”もすごく活きています。仕事を通して一緒に飲みに行った人が年齢を重ねて偉くなり、何かあったら助け合える関係性になっている。そういうことが多いのです。今は飲み会も減っていますし、昔と比べて人とのつながりは生まれにくくなっていますよね。そういうなかで、自分からつながりをつくりにいく積極性は重要なのかなと思っています。やっぱり、何かあったときに助けてくれるのは人ですから。
時には軸足をずらして自分だけの“得意”を見つけよう
大学の部活などでバリバリ活躍した人が大企業に内定した、という話はよく耳にすると思います。目標に向けて努力した経験や挫折を乗り越えた経験、体力など評価につながりそうな理由はたくさんありますよね。
しかしそうした側面もあると思いますが、私自身が野球の世界で培い、ビジネスで活きていると感じるのはもっと別の角度です。与えられた場所での振る舞いというか、「ポジション取りをいかにうまくするか」という考え方。
「こいつにはどれだけ努力しても勝てない」。そんな才能溢れた人がプロの世界にはゴロゴロいます。そういう人にひたすら努力して真っ向勝負を挑んでも、勝てません。努力を凌駕する才能がある。これが現実です。
まずはそうした現実を受け止める。時には軸足をずらして、少し視野を広げてみる。思いがけないところで自分の得意分野が見つかるかもしれません。「強み」の徹底的な理解と、どこで戦うかのポジション取りが非常に重要だと思うようになりました。
この考えは今後より重要になってくると思います。AIをはじめ、仕事の進め方や求められるスキルがどんどん変化していますよね。そういう時代で納得いくキャリアを描いていくためには、日々のアップデートが必要です。
5年後10年後を見すえたとき、一つのやり方にこだわらない柔軟さが今後求められていくと思います。

私自身が面接するときも「良いな」と思うのは、前へ前へと積極的に物事に取り組める人。配属はどうなるかわからないですし、働くなかで役割も移り変わる。そういった変化のなかでも、自分なりにリサーチしてみる、興味が持てるかすり合わせる、自分の特性と照らし合わせて活躍できるか考えてみる、という主体性を持つことが重要です。
また、自分だけでなく他者の視点も恥ずかしがらずに取り入れましょう。以前、息子から就活相談を受けたことがあるのですが「大手だから」「年収が高いから」という理由で企業を選んでいて。「おいおい、そこは違うんじゃない?」と止めました。親から見ると、全然向いていなさそうだったのです。
自分が思う自分と他者から見た自分って、意外と違うこともあるじゃないですか。なので、そこを人に聞いて整理してみるのも良いんじゃないかと思います。
スポーツ一つとってもかかわり方はさまざま。データスタジアムでもスポーツ好きは多いですが、プレーするのが好きな人もいれば、観戦が好きな人もいる。そういういろんなかかわり方を知って、自分の強みが活かせるフィールドを模索してみてほしいですね。

ラフに人を頼るのも自分を見つめる一歩
よく「ファーストキャリアが大切」って言いますよね。もちろん新卒のタイミングは大事ですが、それがすべてではありません。新卒で自分の好きや得意が見つからなくても、今の時代、いくらでも軌道修正できる。あまり身構えすぎず、「そこで活躍するイメージが湧くか?」を想像しながら、楽しんで企業を選んでほしいです。面接官の評価は自分ではコントロールできない部分が多いですし、一喜一憂しすぎる必要はないと思います。
また、気軽に周囲の人に相談することをぜひ習慣にしてほしいです。責任感が強い子ほど、人を頼れず自分で答えを出したがる印象ですが、「自分で答えを出す=正解」とも限りません。周囲の人をうまく頼って、いろんな意見を聞いてみてください。
それでも人に頼るのが苦手だという人は、「人に聞きまくるキャラクター」を演じてみたらどうでしょう。この人はいつも質問してくれるな、と周囲の人に思われるよう振る舞うのです。深刻な感じで相談されるより、ラフな感じで質問されたほうが、聞かれた側も答えやすい。「とりあえず相談してみよう」という思い切りも大事ですよ。
変化球を恐れるな。勝てるフィールドを探索しよう
プレイヤーとして野球ばかりやってきたのに、今はスポーツを支える側にいる。学生時代の自分が知ったら驚くでしょうね。スポーツのかかわり方がこんなに変わるなんて、今振り返っても不思議に思います。
だけど、仕事と野球は似たおもしろさもあると思っています。野球をやっていたときは「よし!」とガッツポーズするような瞬間がたくさんありました。プレーがうまくいったとき、試合に勝ったとき、胸が熱くなって思わず身体が動く瞬間が。
そういうのって大人になるとなくなるじゃないですか。大人が会社でガッツポーズなんて、しないですよね。
それでも、自分のやったことが誰かの成果につながった時、心のなかで小さなガッツポーズをします。最近は、今まで仕事での提案に慣れていなかった子が「それアリだね」と思える提案をしてくれたとき、成長を感じて「よし!」とうれしくなりました。そういう胸が熱くなる瞬間は、野球も仕事も似ていると思います。
キャリアは時に変化球です。思いがけない方向転換をすることもあります。就活生のみなさんには、必要に応じて自分の軸足をずらすこと、環境が変化することをぜひ恐れないでほしいです。いろんな人の意見を聞いて自分の強みを理解し、楽しみながら勝てるフィールドを探してみてください。

取材:團祥太郎
執筆:大城舞
キャリアパーク就職エージェントは、東京証券取引所グロース市場に上場しているポート株式会社(証券コード:7047)が運営しているサービスです。