進むべきは「苦難の数」が多い方。自由な表現と信じる力でキャリアに意義を生み出そう

Skyfall 執行役員 池田 貴郎さん
Kio Ikeda・2018年に新卒でアドウェイズに入社。広告主向けの広告企画を経験し、全社新人賞を受賞。その後2020年にSkyfallに入社し、『SKYFLAG』の広告主営業部署を立ち上げる。2022年に人事戦略室を立ち上げ、採用体制の盤石化に貢献。2023年に執行役員に就任し、以降現職。2024年に広告主営業部署に戻り、営業事業部を統括する
「楽しさ」は苦難から生まれる。けもの道を選び続けるキャリア
キャリアの意思決定において、私の基準は「楽しさ」です。ただ、その楽しさの前には「つらい」「苦しい」という壁があり、それを乗り越えた先にこそ、本当の喜びがあるのだと思っています。
実際にこれまでのキャリアを振り返ると、自ら進んで困難な道を選び、その先で大きな充実感を得てきました。その象徴的な出来事が、Skyfallへの転職です。前職では最年少でマネージャーに昇格し、安定したキャリアが見えていましたが、あえて創業間もないベンチャー企業への挑戦を決意しました。当時は将来性も事業内容も未知数でしたが、その分、大きな成長と可能性があると感じました。まるで険しい山を登るような挑戦でしたが、その選択が今の自分につながっています。

山を登り続けたその先が、今につながっていると考えれば、自分の選択は正しかったと思います。無我夢中で努力し、立ちはだかる壁を何度も乗り越えた先にあった経験は、充実感と楽しさで溢れていました。
私は整備された平坦な道よりも、あえて道なき道を切り拓き、けもの道を選び続けるほうが充実感が得られると思っています。一山越えた後の達成感や「やって良かった」という満足感は桁違いです。
もう一つ。あえて困難な道を選び続けることで、必ずどこかで結果が付いてくると信じています。挑戦し続けた結果、対応力も柔軟性も身に付きますし、積み上げられる経験の質も圧倒的に高くなるので、良い結果に結びつくのは当然と言えるかもしれません。
積み上げた成功体験は、楽しさへと変わる。そして新たな挑戦に向かうエネルギーが生まれるのです。

このサイクルをうまく生み出すことができると、皆さんのキャリアにも良い影響が生まれると思います。これから社会人としての一歩をふみ出す際には、ぜひ意識してみてください。
キャリアは夢をかなえるための準備期間。ビジョンを持たない歩み方とは
私の意思決定の基準は、いつも「楽しさ」です。そのため就職活動においても「こんな企業で働きたい」という明確なビジョンは持っておらず、結果としてファーストキャリアを選んだきっかけは「人」でした。「この人と働けたら楽しそうだな」という思いで最終的な決断をしています。
企業研究をしていたところ、ある企業の採用ホームページで気になる社員を見つけました。自信満々で「新人賞をとる」と宣言しており、そのエネルギーに惹かれたのを覚えています。ぜひ一緒に働きたいと思い選考を受けたところ、驚いたことに一次面接の面接官がその社員でした。
面接をとおして言葉を交わすほど一緒に働きたいと思う気持ちは強くなり、内定をもらった際には迷わず入社を決意しました。
学生の頃は「社会人として働く」ということへの解像度がさほど高くありません。そのような状態では明確なビジョンを立てられる人のほうが少ないと思いますが、私は無理に理想のキャリアを描こうとせず、『この道を歩むべきだ』と決めつける必要はないと思います。極端に言えば、「こういう道を歩いてきたから、目指すならここ」というような後付けでも問題はないのです。
だからこそ「準備」をしておきましょう。もし皆さんが将来、明確なビジョンを持った時、それをかなえるための力や手段をすでに備えている状態が理想です。その夢を実現できるよう、今を「準備期間」として意識することが大切だと思います。

準備期間として過ごした日々に意味を持たせることができるのは、まだまだ先のことです。さらなる自分なりのビジョンを見つけ、それをかなえることができたときに、胸を張って「今まで歩いてきた道には明確に意味があった」と言えるのだと思います。
就活の常識を突き破った先に理想のファーストキャリアがある
「ビジョンがなくても良い」というのはファーストキャリアを選ぶときも同じで、無理に自分のビジョンを決めて理想どおりの道を歩む、ということに意識を傾けすぎなくて良いと思います。ただ、ある程度の「こういう経験を積みたい」という軸はあったほうが企業選びがしやすいでしょう。私の場合は、できるだけ多くの挑戦機会を得られる環境を求めていました。
この価値観が正解だとは言いませんが、もしプライベートよりも仕事の面で活躍していきたいと思うなら、20代の苦労は惜しむべきではないと思います。死に物狂いで仕事に食らいつく経験ができると、その後のキャリアも自分の思うように切り拓いて行きやすくなるでしょう。
そのため、本当にそれが自分に合った環境なのかどうかはしっかりと見極めることが大切です。たとえばキャリアに対する明確な希望をまだ持っていないなら、教育体制が確立された環境で経験を積みながらビジョンを見つけたほうが、希望のキャリア実現に近づきやすい可能性があります。反対に「これがしたい!」という強い思いを持って働くなら、ベンチャーやスタートアップのように会社と一緒に成長できる環境のほうが活躍できる方もいます。どちらにせよ、徹底的に自己分析をしたうえで環境を見極めることが大切です。
あとは、一緒に働く人を見ることも欠かせません。しっかりと自分の意思を持って働いている人がいる企業のほうが成長の機会にあふれていると思います。そういった人を探すために、企業の「内側」はとことん見るようにしてください。オープンカンパニーや説明会といった、企業側から用意されている機会を利用するだけでは足りません。自ら企業を訪問したり、メールでコンタクトをとってみたり、できることは何でもする勢いで行動をしましょう。
覚えておいてほしいのは、就活にルールはないということ。常識にとらわれる必要はなく、今の自分に必要なら行動を起こして良い。本当に必要な情報を、必要なタイミングで積極的に取りにいく意識を持つことが、理想のキャリアを築く第一歩になると思います。

就活というのは企業と自分の間の相性を確認する場であり、自分を表現する場でもあります。あなたの起こした行動そのものが、企業に自分を表現する一つの方法になり得るのです。
Skyfallでは、「学生時代にリーダーとして全国大会を牽引した経験」や「初めての環境で先頭に立った経験」など、そういった自分の強みを自由に表現してもらうための選考方法を取り入れています。文章、音楽、手紙、動画──表現の手段は問いません。大切なのは「どんな方法で伝えるか」ではなく、「何を伝えたいのか」です。
極論ですが、このアプローチをほかの企業に試してみても良いわけです。採用をする側からすれば、積極的に企業の情報を集めようとしたり、あらゆる手段を使ってありのままの自分を表現しようとする姿勢がある人のほうが、魅力的に映ることもよくあります。就活に対する先入観や常識にとらわれず、等身大のあなた自身を表現して「御社で頑張りたい」という熱意を伝えることを忘れないでください。
行動の意味は後付けで良し。「この先に何かある」と信じることから始めよう
就活に限らず、目標達成のために「何でもやってみる」というスタンスで行動してきました。それを支えているのは、「とにかく経験を積みたい」という強い思いです。
その原点は、大学時代にあります。当時通っていた大学は日本人と外国人が半数ずつ在学しており、価値観もバックボーンも異なる人たちに囲まれていました。留学も経験しています。
当時の私には、外国人は常に堂々としており、自信を持っているように見えました。自分を表現することを恐れない姿勢に刺激を受けましたし、自分自身にもその考え方が染みついていったように思います。
社会人となった今でも、この考え方は変わりません。自分よりも圧倒的に優秀な人ばかりがいる環境に飛び込んだ際に「まったく追いつけない」と感じることもありましたが、そのたびに私は「誰よりも行動する」ことで差を埋めようとしました。スキルや知識が足りないなら、せめて行動量でカバーしようと考えたからです。
その経験から得たのは、行動した先に「無駄だった」と感じることは一つもないという気づきでした。
最近の若い人を見ていると「この行動に意味があるのか」を先に考える人が多いように思います。たとえばイベントや飲み会です。「時間の無駄」と考えて参加をしない選択をする人が増えているのではないでしょうか。
もちろん無理に参加する必要はありませんが、参加をしないことで機会損失しているものもあるかもしれない、と考えてみてください。飲み会やイベントに行けば人脈ができたかもしれないし、上司から普段の仕事だけでは得られない学びを得られたかもしれない。そう考えて、若手の頃の私はどのようなイベントにも参加していました。
意味がないから行動を起こさないというのは、考え方が逆なのではないかと思います。意味があるから行動するのではなく、行動したからこそ、後から意味が生まれる。そのように、意味はいつだって行動の後についてくるものです。

もちろん、すべてが良い結果につながるわけではないでしょう。それでも、信じて行動を起こす以外にできることはないと思っています。その先に何かがあると信じて行動を起こす。行動を起こした先に成功体験があり、それを積み重ねた先にまた新たな「何か」がある。それを信じて、まずは「意味があるのか」といったことは考えず、行動を起こしてみてください。
エンジンは達成感と対抗心。腐らず前進を続けよう

「行動の先に何かある」と信じる気持ちは大切ですが、目に見えないものを信じ続けるのは難しいときもあると思います。そのような壁に直面したときは、目標を立てることが大切です。
自分の場合も、新卒の頃から目標を設定し続けてきました。たとえば新卒時代には新人賞をとることを目標としており、それを達成した後はほかの目標を立て、ひたすら目標を達成していくことを繰り返す毎日。そうしているうちに、今の目標はSkyfallをさらに成長させることになりました。
あとは、ライバルの存在も大きかったと思います。ライバルがいれば、「立ち止まっている暇はない。追い越されるわけにはいかない」と自分にエンジンをかけるきっかけになります。
若手の頃、私にもライバルがいました。その存在を意識しすぎて一時期はお互いに口をきかなかったほどです。ですが、ライバルともいつかわかり合い、労いの気持ちを持って互いの背中を叩く瞬間がやってきます。「あのときは大変だったけど、お互い頑張ったよな」そう言い合った日は、今ではかけがえのない大切な経験の一つです。
もし自分に負けそうになったときは、『あいつには絶対に負けたくない』と思える存在を見つけてください。その相手こそが、自分を成長させてくれる何ものにも代え難い存在になってくれるはずです。一見憎らしくも思えるかもしれないその相手が、何よりも自分に発破をかけてくれる存在になり得るのです。
就活は楽しんだもん勝ち。人生一度の瞬間を輝かせる考え方
「就活」と聞くと、気が重くなったり難しいことのように感じる人も少なくはないでしょう。しかし、新卒の学生として就活ができるのは人生でたったの一度きりです。やるなら全力で取り組んでください。
本気で取り組むことで結果がついてくるだけでなく、何事も楽しく感じられるようになります。私が採用に携わってきた中で『優秀だな』と思う人は、皆、就活を前向きに楽しんでいました。
就活を楽しいと思えるのは、ベストな結果を出すために精一杯の努力をしているからこそ。トライ&エラーを繰り返し、今の自分に何が必要なのか頭を振り絞って考え、決死の思いで実行した経験が、成功体験につながります。それが就活では『内定』という形で努力が報われ、社会人になってからは『昇進や新たなプロジェクトへの挑戦』など、更なる挑戦機会と成功体験が待っています。努力を積み重ねることで、より大きな成果を手にし、自らの可能性を広げていくことができます。
皆さんも、目の前の就活を楽しむために、まずはいつか努力が実ると信じて行動を起こしてみてください。ときには途方もなく高い壁に思えることもあるかもしれませんが、その壁を乗り越えた先には必ず良いことがあるはずです。人生にたった一度しかない就活を精いっぱい楽しみ、最高の結果で終えられることを願っています。

取材・執筆:瀧ヶ平史織