選択した後を大事にできる人でありたい|出会いや挑戦を重ねて自分の「物差し」を拡げていこう

リブセンス 執行役員 桑田 紗瑛さん

Kuwata Sae・2006年、慶應義塾大学卒業後、リクルートに入社。コーポレート部門、ブライダル情報サービス事業などで多様な経験を積む。2019年、物流ベンチャーに参画したのち、2020年リブセンスに入社。2021年3月よりITエンジニア向け転職サービス事業の担当執行役員

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自分の価値観を超えた選択から機会を創る

学生時代はグローバルな仕事や開発経済・金融分野の仕事に興味があり、外資系金融かコンサルで働こうと考えていました。もしくは開発経済の研究を深めるために、大学院への進学も検討していたんです。「目標はこれ!」と決めたら、目標に向かって集中するタイプのため、就職活動先は数社に絞った活動しかしていなかったのですが、たまたまリクルートのインターンには参加していて。最終的に事業を生み出していく手触り感や、先輩社員や組織の「個の可能性」に対するスタンスが自分の求めていることに近しいと感じてリクルートに就職しました。

人の価値観・価値基準は可変・アップデート可能なものと学生当時から考えています。学生時代はゼミや学生団体の運営・ベンチャーへの参画など活発に活動をしていました。一方で、「学生時代の経験や観点は限られたもの。周囲の人も比較的似たようなバックグラウンドを持つ中で育んだ価値基準で、たくさんの会社を見ても最善の選択ができるわけがない」とも思っていました。

そのため、「選んだ選択に間違いがなかった状態に自分で持っていければ良い」と、就職先を決めること自体にはあまり迷いはありませんでしたね。入社後に自分なりの正解を創っていくことへの期待が明確でしたし、インターンというきっかけや縁に今も感謝しています。

予想外。どんな経験も自身の血肉、そしてキャリアになる

リクルートに入ってからは、まずは経理部に配属されました。会社という「生き物」を、会計を通じて理解しながら業務に取り組んでいくのは面白かったですね。ただ、専門性の高い仕事だったので、上司や先輩についていけるようになるために必死に取り組みました。週末は米国公認会計士の取得を目指したスクール通いもやっていましたね(笑)。3年目までには財務会計だけでなく、管理会計分野の仕事にも携われるようになっていたのですが、リーマンショックを機に、コーポレートスタッフからブライダル情報サービスの事業スタッフに異動になりました。

異動後はメディアの編集職やメディア企画・ディレクター職のような仕事を経験しました。外部環境の変化に合わせた、会社の合理的な判断だったとはいえ、コーポレートスタッフからメディアの編集職への異動はまさに青天の霹靂。でも、一生に一度は編集という仕事を経験してみるのもいいかなと、明るい気持ちで挑戦していましたね。本気で取り組めば応えてくれる上司や先輩・仲間もいましたし、その後の事業開発経験も含めて、多様で多彩な経験を積ませてもらったと思います。

桑田さんの多様な経験

リクルートに入社する際には事業の作り方を経験したいという目的をもっていましたが、これについては一言では言い表せないほど実地で体験させてもらいました。コーポレートスタッフとしての仕事や経営という観点はもちろん、実際に手を動かしてメディアや商品・サービスを作ったことなど、うまくいかなかった部分も含めて、すべて体験できましたからね。

振り返ると、何かしらの専門分野を極めるキャリアではなかったと思いますが、当時の自分には思いもよらなかった機会にも全力で取り組み、次の挑戦機会を創ってきた、これまでの多種多様な仕事すべてが今のキャリアへと導いてくれたと感じます。皆さんも何か予想外のことがあったりしても、「やってみる選択」を取ることで、どんな経験も血肉となると信じて進んでほしいです

キャリアとは自分と社会の「結節点」

リクルート在籍時、周囲は起業や独立を目指す同僚が多かったのですが、実はそういったことにあまり興味がなかったんです。何か新しい価値を生み出そうとしている人の近くで役に立てる人でありたい、そこに自分の介在価値があるとも考えていました。そんなタイミングで、大学時代の友人から物流系のスタートアップを立ち上げたので、ぜひ一緒にと声をかけられました。

その時、ここでなら自分がリクルートで経験してきた、ビジネスの立ち上げや遂行の経験が生かせるかもしれないと感じました。また当時は事業開発を経験した後で、あたりまえでないことをあたりまえにしていくときの疾走感・やりがいが忘れられなかった。与えられてきた経験や価値をもっと社会に還元できる人でありたい。そう思ったんです。そして友人の立ち上げた会社に合流し、組織づくり・事業作りに邁進しました。

仕事は自分と社会との「結節点」だと思います。「仕事の評価は他者にある」と入社1年目のときに上司の方からかけていただいた言葉を今も強く覚えていることもありますが、社会とのつながり方の積み重ねと、自分の生き方を合わせたものが、キャリアになっていくのではないかなと最近感じています。ベンチャーへの参画を決断した日にも、同じような感覚で腹を決めたことを覚えています。

「自分の仕事」を作るには

では、自分の持つ価値とは何なのか。私自身としては、自分でなければできない仕事なんてないと痛感しています。素晴らしいアイデアや能力に溢れた方は世界中にたくさんいらっしゃいますから。ただただ、他者からの評価や取り組む先のゴールイメージに真摯に向き合って、仕事の意義づけやクオリティにこだわり、成果を出せるように心がけてきました。

もしもいつか仕事の意義に悩んだときは、目の前の価値基準にとらわれることなく、自分は何に向かっているのか、向かえているのかをあらためて意識してみてはいかがでしょう

桑田さんからのメッセージ

キャリアの途中には困難もあるでしょう。自分で意志を持って選択をしたことでも、うまくいかないことや、乗り越えがたい課題にも直面すると思います。でも過ぎた後から思い返すと、選択した後に正解に近づけていく取り組みがあれば、必ず何かの糧になっているものです。選択した後は、むしろどんな経験も無駄にはしない覚悟が大事というか。

しかし、困難の渦中にいるときは、目の前のことに必死で、未来のことなど描けないこともありますよね。そんなときには、「なんとかこの状況を楽しめないか」と目線を変えて探ってみてはいかがでしょう。また、相手に期待しすぎていないか、自分の行動を振り返ってみても良いかもしれません。変えることができるのは、自分の行動だけです

過去を振り返ってみると、辛いことがあるたびに、人としての経験や物事の見方が厚みを増してきた感覚があります。うれしいこと、楽しいことによって育まれるものもありますが、自分で選択したことを理想の状態に持っていく過程から得られる学びも大切。自身としても、困難な経験も自分の器を拡げていくにできる人でありたいですね。

だからこそ、目の前に選択肢があるときには、まだ良いとも悪いとも判断がつかない、むしろ苦労するかもしれない方を選びます。いつまでも自分の可能性を信じて、機会を逃さない状態でいたいからです。

自分の人生は自分のもの。出会いや挑戦の機会を通じて自分の物差しを拡げて

自分が社会人に成り立ての頃よりも価値観は多様性を増し、人々が選び取れる選択肢も増えていっているように感じる一方で、社会の閉塞感はむしろ増してきているように感じます。だからこそ、それを打ち破っていくような「自分なりの軸」を持ち、挑戦できている人が増えていくと良いなと思います

多様性が尊重される時代だからこそ、自分の判断基準・価値基準を持つと同時に、そのことを深く知ることができれば、他者への視点も持ち合わせた強さ・しなやかさが持てるのではないでしょうか。自分の価値観を知るためには、たくさんの人と出会い、意見を交わし、相手の意見にも耳を傾けることが大切ですよ。

自分の思いを伝える場所、相手の背景を想像する機会、コラボレーションする挑戦、そういったものを体験すれば、きっと自分の価値観が明確になり、さらには拡張できるチャンスにもなっていくと思います。いつだって自分の好奇心を大切に、そして価値観・判断基準に対して客観的に。好奇心や価値観・判断基準から生まれていく疑問、課題意識が、次の挑戦やキャリアを選択していく指針や力にもなっていきます

自身の働き続ける原動力は、閉塞感の打破の向こうにあります。ユーザーや顧客へ価値を返すこと、還元することに夢中で取り組み続けられていれば、今は幸せです。

最後に、皆さんには、どんなときにも自分の人生の真ん中は自分、ということを忘れないでほしいですね。自分の人生は自分のものだと思えば、さまざまな挑戦を選択できるのではないでしょうか。特に若いうちは、“根拠なき自信”を持って突き進んでほしい。ロールモデルに合わせた人生・キャリアではなく、自分自身の仕事を通じた旅が、気づいたらかけがえのないキャリアになりますから。

桑田さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

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