仕事に対する「疑問と工夫」で飛躍する|日本の企業や社会に力を与える存在になろう!
デジタリフト 代表取締役 百本 正博さん
Masahiro Hyakumoto・1995年に大学卒業後、総合広告代理店の大広に入社。営業局にて総合流通業や通信事業、メガバンクなどを担当し、ブランド開発やメディアプランニング、イベント企画及び実施管理に従事。その後、インターネット広告会社のコンサルタントとして、新規事業開発などを担当。同時にサラブレッドの輸入販売育成業の立ち上げに参加する。2012年11月にデジタリフトを設立し、現職
下積み時代でも工夫次第で大きく成長できる。業界の課題を解決するべく起業の道へ
就活では実際に人と会ってリアルな情報を手に入れることを大切にしていました。当時はまだインターネットが広まっておらず、OB・OG訪問が主流で本当にたくさんの企業に足を運びましたね。
学生時代から人とかかわることが好きだったので、営業職の方を中心に話を聞いていました。なかでも総合広告代理店で働く人たちは、「堅苦しくなく素直に接してくれ、論理的でかっこいいな」と魅力的に感じることが多く、いつしか憧れるようになっていました。
彼らから仕事の話を聞くうちに、無形商材ならではのやりがいや面白さがあると知りました。
営業と聞くとモノやサービスを売るイメージでしたが、広告は手に取れるものではありませんし、何かを体験するサービスでもありません。「無形商材をどうやって売るんだろう? 」と学生ながら素朴な疑問を抱き、難しそうだけど面白そう! とワクワクした気持ちになったのです。
特に広告に関しては、フォーマットや型もほとんど存在せず、お客様の要望や市場の状況を鑑みて何もない状態から企画を生み出していくということに無限の可能性を感じました。その分、自分の能力や経験が仕事の結果に反映されやすく、仕事に対する個人の寄与度や介在度が大きな業界だとも思いました。
入社後2〜3年はあらゆるリサーチや広告の実行面での業務をこなしながら、企画やプランニングなど主となる業務にもまずはサポート役として携わり、社会人としての基礎が培われました。とても濃厚な下積み時代で、どの会社に行ってもある程度のことはできると思えるほど経験値が高まりました。
ただ、基本的な企画やプランニングはできたとしても、それをどう落とし込んでいくのか、より最適な内容にするにはどうすればいいのかまで自分で考えられないと、成長できないのではと危機感を覚えるようになったのです。そこでお客様と打ち合わせをするときに新たな広告の構図を提案してみるなど、自分なりにプラスアルファの価値提供を試行錯誤しはじめました。
すると、入社5年目くらいから重要なお客様をメインで担当したり、大きな金額や中長期の案件などに携わる機会にも恵まれました。どのような仕事でも自分で考えて工夫すると仕事の質が高まり、チャンスが訪れるのだと実感しました。
また、よい成績を収められるようになったからこそ、個人、法人の売上だけでなく、自分の担当業務単位での営業利益率に興味を持つようになりました。すべて推論ではありますが、自分が会社経営をしているかのように実態に基づいて個人的に計上してみることにしたんです。すると、社内の優秀なスタッフにサポートを頼んだ分の人件費、移動費、通信費、事務所費用や光熱費が掛かっていたりと、本来の利益は想像よりも少ないことが分かりました。
「個人として利益貢献度が高くても、会社から与えられているアセットがあってこそのものであり、会社が評価してくれるほどには貢献できていないかもしれない」と気付き、その後の数年間は、あらゆる費用を鑑みたうえでの利益を意識して仕事をするようになりました。この経験でいつの間にか経営者としての視点が身についたのではないかと思います。
その後独立し、今までの知見をもとに、Web広告代理店のコンサルタントとして活動をはじめました。Webマーケティング業界が発展してきたこともあり、単に“どんな広告を出すのか”というだけではなく、“どのような人にどんな広告をどのように出すのか”という領域まで技術も進化しましたし、提案ももとめられていました。ただ、業界全体を通して知見が不足しており、お客様のご要望に対応しきれないケースが多かったのです。
そこで、前職で培った総合的なマーケティングとWebマーケティング、両者を理解している立場として貢献できることがあるのではないかと、2012年にデジタリフトを設立しました。
デキる社会人は「決定の先送りをしない」「仕事に問題提起をする」
社長という立場になり、個人よりもチーム、チームよりも会社という単位でお客様に貢献できると大きな喜びを感じるようになりました。
会社というのは、お客様からお金をいただいて売上や利益が生まれているので、お客様の満足度をどれだけ高められるか、お客様の会社の成長にどれだけ貢献できるかが非常に重要です。
最近の出来事としては、入社間もない社員がお客様とチャットツールで会話している時、お客様の業界に関するニュースを仕入れて、「今こういう状況なので、こういうやり方に変えたほうが良いかと思います」と自ら提案していたんです。お客様の事業を理解し、自発的に事業グロースに役立つ仕組みや施策を提案していく姿勢は本当に大事なことなので、それを見たとき本人をたくさん褒めましたね(笑)。
というのも、お客様の喜びや成長への貢献を考えた時、定型業務をきちんとやるのはもちろん、潜在的なニーズを汲み取ったり、痒いところに手が届くような提案をしたりと、先回りして行動するのはとても大切です。お客様にも喜ばれて社員も仕事を楽しめると思うので、社員の活躍を見ると本当にうれしい気持ちになります。
また、日々の仕事で大切にしているのは、決定の先送りをしないこと。社長は意思決定をもとめられる場面が多く、そのスピードが後に大きく影響するというのは肝に銘じています。
決定というと何かを先に進めるイメージがあるかもしれませんが、“やらないと決める”というのも決定の一つ。最も避けるべきなのは、何も決めずに中途半端なままにしておくことです。どちらの方向性でも良いので物事を定めるのが重要だと実感しています。
会社員の頃に意識していたのは、仕事に対して問題提起をすること。多くの人は目の前のやるべきことについては考えていますが、「なぜこれをやる必要があるのか」「どうすればより良い仕事にできるのか」といった疑問を抱いていないと思うんです。
普段から思考していると、すぐに改善案が浮かんで素早く実行できたり、周りの人に相談しながら解決策を導けたりするので、習慣として取り入れてみてくださいね。
就活は積極性が大切! あらゆる視点で自分を知って企業とのマッチング率を高めよう
あらゆる業種や会社のなかから自分に合った仕事を見つけるためには、自分を知ることからはじめる必要があります。
自分を知る方法としておすすめなのは、過去を振り返って1番うれしかったことや怒ったことなど、いろいろな感情のピークを書き出していくこと。まずはそこから始めることで自分の特徴を正しく把握でき、企業や仕事とのマッチング率が高まっていきます。
自分の視点で自分を知ることができたら、次は身近な人に声を掛けて、周りから見た自分の印象を聞いてみるのも良いと思います。小っ恥ずかしいところもあると思いますが、社会に出るにあたって客観的な見え方を知っておくのは学びになります。さらに、自分の視点と周りの視点、どちらにも共通する部分があれば、それは自分の強い性質だといえますね。
また、インターネットでいくらでも情報を集められるからこそ、「リアルな情報」や「深い情報」を得ることを重視しましょう。実際に1人でも良いので社員に会ってみると、自分に合うかどうかが感覚として掴めるはず。もちろんその企業にはいろいろな人が所属しているので一概にはいえませんが、個人的な経験則では1人でも社員と会って話をすれば、会わない場合と比べて圧倒的にマッチング精度は高まると思います。
社員と会うことができたら、どんどんコミュニケーションを取りましょう。世間話でも良いので一歩踏み込んで話をすると、インターネットでは得られない深い情報に触れられます。現代は情報集めに一生懸命になりやすいかと思いますが、それ以上に実際に足を運ぶこと、深い情報に触れることを意識すると、より企業や仕事の実態が見えてくると思います。
就活のマインドとして心に留めておいてほしいのは、積極性をもつこと。これは若者の特権でもあります。
たとえば社員と直接会いたいと思った時、なかなか会える機会がなさそうでも、まずは遠慮せず個別で連絡を取っても良いでしょう。当社でも新卒を採用していなくても、「どうしても会ってほしいです」と熱意をもって言われたら時間を作りますし、そういう対応をしてくれる企業は少なくないと思います。いずれにしてもまずは自ら行動してみるという積極性が大切ですね。
「メタ認知能力」と「自家発電力」で周りから一目置かれる存在に
私が考える、これからもとめられる人物像は、「メタ認知力」や「自家発電力」をもっている人。ここでいうメタ認知力とは、自分自身が会社のなかでどんな立ち位置で、何をもとめられているのかなどを客観的に認識することです。
たとえばスポーツでも、自分の動きをビデオで撮り、自分の感覚と客観的な見え方とをすり合わせながら、正しい動きに近付けていくという練習方法がありますよね。これは仕事でも同じで、今の自分に何が足りないのかが分かり、結果や成長につなげていきやすいです。
自家発電力というのは、自分で自分を奮い立たせられる、モチベーションを高められる力のことです。
多くの企業では、とにかく社員のモチベーションを高めようとさまざまな施策が練られています。働きやすいオフィスや資格手当、上司との面談もそうですね。それくらいサポートが必要とされているなかで、自分で自分のモチベーション管理ができる人材というのは、企業からすると本当にありがたい存在です。
本人に手が掛からないのはもちろん、そういう人が1人でもいると、周りの人も影響を受けてモチベーションが高まっていき、チーム全体の士気が上がっていくからです。このスキルは一朝一夕では身に付かないので、就活に一生懸命取り組むことなどを通して、事前に培っておくように意識してみてくださいね。
最後に伝えたいのは、何よりも素の自分で勝負してほしいということ。選考に受かりたいからといって自分を作って入社すると、入社後お互いに何かしらのズレが生じてしまいます。自分も無理をして苦しくなっていきますよね。だからこそ、今の自分を受け入れながら就活をしてほしいんです。
特にファーストキャリアは、人生のなかでも大きな選択の1つであることは間違いありません。社会人としての生き方や仕事の価値観、日々の生活などあらゆる面で影響を受けるところです。今の自分だけではなく、未来の自分やパートナー、家族にも関係していきます。そこまで考えたうえでぜひ慎重に、時には大胆に挑んでくださいね。
私は、今の就活生や若者がこれからの日本を担っていくと本気で思っています。就活では大変な場面もあるかと思いますが、ぜひ「自分が社会に対して何をやっていきたいのか」「今の日本を自分たちが変えてやる」といった気概をもってくれると、社会人の先輩としてこれほどうれしいことはありません。
就活生や若者を心から応援しているので、これからのキャリアを楽しみながら頑張ってくださいね!
取材・執筆:志摩若奈