波にのる準備をせよ! 経験がもたらす「直感」を羅針盤に未来を切り開け
イニシャル 執行役員 宮田 有里子さん
Yuriko Miyata・大学卒業後、2010年に新卒でベクトルに入社。営業やPRコンサルタントなどの経験を積み、2013年に入社4年目で部長に就任。局長を経て、2020年より現職
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原点は「人の心を動かす感動」。自分の理想を追求できる環境を求めて
キャリアの“原点”は学生の頃にまでさかのぼります。学生時代はダンス漬けの日々で、本格的に習い始めた小学6年生の頃から大学生までのめり込んでいました。このダンス経験を通じて学んだ「人の心を動かすことの楽しさ」が、その後の行動軸につながっている実感があります。
就活もその軸をベースに進めていたので、まさに人の心を動かす仕事である「広告業界」が真っ先に志望先に挙がりました。当時は幅広く業界を見ていましたが、だからこそ「広告業界は自分にマッチしている」と強く感じることができました。広告業界で働く社員の方と話していても楽しかったですし、一緒に働く自分も自然にイメージできたので、正直に言えば広告以外の業界は眼中になかったくらいです。
多くの広告系の企業の説明会に参加していくなかで、新卒で入社することになる当社ベクトルに出会ったのは、日程が合ったからと何の気なしに参加した説明会でした。ここで大きな衝撃を受けたことが、まさにターニングポイントになったのだと思います。
当時参加したPR業界の説明会ではベテランの男性社員が舵を取っていることが多く、「PR業界は若手にはなかなかチャンスのない環境なのだろう」と感じていたんですね。ただ、ベクトルの説明会では当時4年目の女性社員が主体となって話すシーンもあって、「ここは他企業とは違うぞ」と思ったんです。
どんな人が認められて、どんな人が活躍しているかを見ることで、その会社が評価する軸と、自分がなりたい像が重なるのかどうかを判断できると思います。自分なりにPR業界について調べ直していくなかで、規模の大きな仕事や、事業の根幹にかかわれるチャンスがあるのだと知り、ベクトルの選考を受けることにしました。
結果今でもこの会社に身を置き充実して働けているので、この選択は間違いなく正解だったと思います。それに、もともと持っていた「人の心を動かす仕事がしたい」という軸も、PR会社でなら十分実現できる。思わぬ出会いから生まれた縁でしたが、結果として自分が求めていた環境に出会えた実感があります。
好きなこと、得意なことは人それぞれあるかと思いますが、会社を選ぶ際には、なぜそれが好きなのか? なぜ頑張れるのか? という理由を深堀りするのも重要です。また、自分の選択に自信を持つためにも、二度と来ない“新卒”という立場を最大限活かし、幅広い業界を見ておくことも強くおすすめしたいですね。思わぬ縁や、まだ見ぬ知らない世界に出会うきっかけを作ることにもつながりますから。
替えの利かない存在になるために。常に100%以上の力で結果を追いかけ続けた
営業として入社し、4年目で部長職に就きましたが、これは自分がずっと希望していたことでした。
というのも入社当初から「マネージャー職になって自分のチームを持ちたい」という目標を持っていたので、どうすれば一日も早く昇格できるかをずっと考えていたんです。その根底には個人だけでなくチームで大きな成果を挙げて会社に貢献したいという思いがありました。
自分のチームを持つためには、優秀なプレーヤーとしてお手本になれることが大前提。そして優秀なプレーヤーとは、営業でいえば顧客から信頼され、成果を挙げる人です。顧客から信頼されるには、顧客に「この人だからこそ一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるような提案ができなくてはなりません。
そのような質の高い提案をするには、たくさん場数を踏み、経験値を上げる必要がある。なので1年目でメディアプロモーター(企業の商品やサービスの魅力やポイントをメディアに伝え、露出を図る仕事)に従事していた私は「社内の誰よりもたくさんのメディアと面会をすること」を徹底しました。目標を立てて道筋を逆算し、少しずつでも着実に積み上げる──こうしたマインドと行動が、4年目で部長職というポジションを任される、ということにつながったのだと感じています。
何よりやりがいになったのは顧客からの信頼です。今でも鮮明に覚えているのは、クライアントから「宮田だから任せたい」と言ってもらえたことです。努力が実を結んだ瞬間だと感じられて本当に嬉しかったですね。
業種によっても変わるとは思いますが、新卒で入社する人を見ていると「こうありたい」という理想像と現実のギャップにショックを受けてしまう人が多いなと感じます。
高い目標を持っていること自体は素晴らしいです。目標を達成したいために焦る気持ちもよくわかります。ただ、だからこそ「もっと短い期間で達成できる目標」を持つことも大事ではないかと思うんですよね。
長期的な目線だけでなく短期的な目線も持って、まず行動する。自分で立てた目標に常に100%以上の力でぶつかっていく。そうするとハイスピードで成長できるので、次第に長期的な目標も現実的になっていきます。就活生のみなさんにも、「理想の自分になるために、今何をすべきか」を逆算して考えて、ひとつずつ着実に達成していくことの楽しさを感じながら積極的に行動していってほしいですね。
忙しくとも諦めない。自分の幸せをすべてつかむPR業界のロールモデルへ
学生時代から「家庭を持ってもバリバリ働き続けたい」と考えていたのですが、PR業界に入ってみると、そのようなライフスタイルを実現できている人はほとんどいませんでした。業務特性上忙しくなりがちなこともあり、仕事と私生活を天秤に掛けてどちらかを諦める人が多かったんですね。
ただ、キャリアもプライベートも諦めたくなかった。だからこそ、自分の軸と理想をしっかり持ち、一昨年に子どもを産んだ後、こうして仕事に復帰し現在は執行役員として働いています。ロールモデルとなる人がいるか、ということを重要視する人も多いと思いますが、結局は自分がどうしたいか、それに向かって軸を持ち続けながら実現できるか、ということが一番重要で、それをかなえられるかは“自分次第”であることが多いように感じます。
もちろん、こうして自分の軸を貫けているのは周囲の支えや理解があったからこそという面もあります。その点でいえば、ベクトルは多様な働き方を支援するだけでなく、「社員のあらゆるチャレンジを応援する」という風土があります。たとえば社内起業を支援する「ベクトルプレナー」なども一つの事例ですね。実際に立ち上がった例としては「PRTIMES」や「ニューステクノロジー」、「IRrobotics」などがあります。
40歳という節目が見えてきた今、ベクトルが、そして自分がこれまでに蓄積してきたものを社員に還元していきたいと強く感じています。社員のチャレンジを応援する会社のカルチャーを、これからはもっと強めていきたいですね。
意気込みすぎない就活から14年。自分のフィーリングを信じた結果
誤解を恐れずに言うと、就活中は選考を「ゲーム感覚」で進めていました。たとえば「この面接官はこんなことを言ってほしいんだろうな」と予想しながら答えていくんです。もちろん、嘘はつかずに自分の本心を話すのですが、その話し方などで面接官の好みを当てにいく感覚ですね。そんなふうに進めていると、選考に落ちても「予想が外れただけ! 自分自身が否定されたわけじゃない」と割り切りやすくなりました。
もちろん、はじめからそこまで割り切って就活に臨めていたわけではありません。当時は就活氷河期ということもあって大きなプレッシャーがかかっていましたし、「良い会社に入りたい」「でも何をどうすれば良いのかがわからない」と考えがガチガチに固まっていました。でも、「これじゃ自分らしさを全然出せていないな」と冷静に振り返る瞬間があって、そこからはフラットな気持ちで就活に向き合えるようになったんです。
フラットに就活に向き合うことの大切さは、ぜひ今の就活生の皆さんにも伝えたいですね。なかには「有名企業に入らなくては」などと気負い過ぎている人もいると思うんです。でも、焦るばかりで応募企業に寄せ過ぎたり自分らしさを偽ったりしても、それは結果的にミスマッチな未来を招いてしまいます。
これは自身が就活生だったときにも感じていたことですが、自分一人で考えるよりも、実際に社員に会ったほうがその会社のことを圧倒的に理解できます。いま会社選びに悩んでいる就活生のみなさんも、いろいろな会社の社員と直接会ってみて、自分が一緒に働きたいと感じられる人、フィーリングの合う人、自分が今までに属していたコミュニティの雰囲気に近い人を探してみてください。そうすればどんな会社が自分に合うのかが見えてくるはずです。
マッチした環境を見つけ出すためには「数」を意識することも大切だと思います。OB・OG訪問や説明会、インターンシップなどに積極的に参加してより多くの「人」に会って、さまざまな観点から話を聞くことで見えてくるものがあるはずです。
調べればわかるような情報ばかりを集めているだけでは、「この会社は自分に合う気がする」「この会社でならうまくやれる気がする」などと机上の空論でファーストキャリアを選ぶことになってしまいます。実際に会社を見学したり、社員と会うほうに時間をかけ、自分なりに判断材料を集めていく姿勢もぜひ意識してくださいね。
直感は経験値が導き出す答え。よりワクワクする仕事を選ぼう
入社当初、代表らには「長期的な目標を持て」とよく言われていました。正直に言うと当時は「遠い未来のことなんてわからない」と思っていて、どちらかといえば「今より高い給与や評価をもらうにはどうするべきか?」という短期的な目標も私にとっては重要だったんです(笑)。
たしかに5年後10年後の目標があったほうがキャリアプランを逆算して考えられるので、あるに越したことはないです。でも、だからといって「明確な将来像を持たなきゃ」と焦るくらいなら、楽しく働くこと、ワクワクできることを考えたほうが良い結果を生み出せるのではないでしょうか。
だからこそ、「自分がワクワクするのはどんな仕事をしているときか」を考え、直感に従って進路を決めるのも一つの手です。深く考え込み過ぎて動き出せなくなり、チャンスを潰してしまうのはあまりにもったいない。もし悩むことがあれば、直感をもっと大切にしても良いと思います。自分が良いなと思う感覚を信じてみれば、きっとその先には望む未来が待っているはずです。
ただ、勘違いしないでおきたいのは「直感に従うこと」と「運任せ」は違うということ。直感は「自分がこれまで積み上げてきた経験値」にもとづくものであって、あてずっぽうに意思決定するのとは似て非なるものです。ここは明確に整理しておきましょう。
どうしても決められないときは、まずはいろいろなチャレンジをさせてくれる成長環境でキャリアをスタートさせるのも良いと思います。目標が明確になったとき、自ら動き出すことができて、かつそれを歓迎してくれるような環境にいたほうが選択肢も広がりますからね。
何者でもない自分を何者かにする、それが仕事だと思っています。それで言うと、ベクトルは何者かになるための修行期間とも言える若いうちに幅広い経験を積めるので、本当に自分に合う環境でした。
思いの言語化が道を照らす
今面接官として学生に会うなかで感じるのは、「言語化の重要性」です。
環境だけがすべてではなく「最後は自分次第」という考え方が大事である前提ですが、自分に合う環境を選ぶには、まず「そもそもどんな環境が自分に合うのか」を具体的にしておく必要がありますよね。そこがしっかり言語化できた状態で来てくれる人はやっぱりマッチしているなと思います。
私自身も面接のなかで、目の前の学生が自分自身のことを理解し、そのうえで応募をしてきているのかを見極める目的で「自分らしさが活きるのはどんな環境だと思う?」「反対にストレスを感じるのはどんな環境?」などと質問することもあります。
自分が本当にやりたいこと、身を置きたい環境とは? それをしっかり言語化しておきましょう。
たとえば、これまでに自分が所属したコミュニティについて言語化してみるのも良いと思います。「自己分析」というと重く聞こえ身構えてしまうかもしれませんが、就活を「自分を知る機会」ととらえて、まずは言葉で自分を知るところから始めてみてください。それで得られた情報は、マッチする会社を見極めることだけでなく、選考対策にもつながっていくと思います。
困難を成長のチャンスに。「波」に乗る準備をしておこう
ベクトルでは「自分の意思を持って動ける人」が活躍しています。顧客にどうなってほしいか、目の前の仕事にどう向き合いたいかといった「意思」をはっきり持っていると、仕事を自分ごととしてとらえられるので、トライアンドエラーを効果的に繰り返せるんです。この意思をもった挑戦の姿勢がとても大切です。
最初はうまくできなくて当たり前ですし、何も問題ありません。むしろ「これではうまくいかない」という学びが得られるので、恐れず挑戦していきましょう。反対に一番良くないのは、人に言われたことをただやるだけ……つまりは「投げやり」な態度です。自分の頭を使わずに機械的に動いていると、それこそロボットやAI(人工知能)に取って代わられてしまうかもしれません。
これはPR業界のようなコミュニケーション能力を重視する仕事ならではのポイントですが、メタ的視点を持つことも大切です。「こうしたら相手は、顧客は、世の中の人々はどう思うか」を俯瞰でとらえることができると、「こういう消費者は〇〇だからこの商品を欲しいと思った」「消費者は〇〇を見て商品を買う気になった」といった、消費者の考えや行動のパターンをストックできるんです。
世の中のものに対して「なぜ?」と考えることで、自分と違う感覚を持つ人の考え方を知ることができ、思考力も鍛えられ、顧客やユーザーをより深く理解できるようになります。
今の社会は自分が興味を持っている情報ばかりが勝手に選別されて流れ込んでくるシステムになっています。気付かぬうちに世の中のトレンドがどんどん変化していた、なんてことはざらです。なのでベクトルの社員のなかには「自分が好きなジャンル以外の情報」を取りに行くためのSNSアカウントを作っている人が多くいます。特に消費者動向やマーケティング関連の仕事であれば、自分から新しい情報に飛び込んでいくことが必須ですからね。
自分の意思を持って動く人がメタ的視点を獲得した時、真に強い社会人になると感じますね。
ベクトルの行動指針には「波にのること」というものがあります。「時代の流れを先読みし、その流れに乗るためにあらゆる準備を徹底する」という意味が込められていて、いくつかある行動指針のなかでも私は一番重視しています。
就活生のみなさんも何かにつまずいたり悩んだりすることがあると思いますが、世の中全体を俯瞰してみると、自分が抱える問題はちっぽけなものなのだと気付けるはずです。「誰にでもあることだから」と割り切れないと、いつまでも前に進めないので、もったいないですよね。
壁を乗り越えられる波はいつか必ず来ます。自分にとっての良い波を逃さないように、チャンスがいつ来ても良いように常に準備をしておいてください。そうすれば道は必ず拓けますよ。
取材:小林 駿平
執筆:小林 萌