未来の目標よりも「今」後悔しないかを見定めよう|ぶれない自分の芯をもとにベストなキャリアを築く

ナハト 取締役 横手 和愛さん
Kazunaru Yokote・1990年生まれ、東京都世田谷区出身。学生時代からさまざまな飲食店で働き、接客業にやりがいを持つ。2012年、ヘッドハンティングを受け大手飲食企業の新業態立ち上げに携わり、副店長として店舗運営や教育・マネジメントを経験。その後も複数の会社で飲食業態の店舗責任者を経て、2018年にナハトにジョイン。SNS広告の責任者として売上を大きく牽引し、現在は取締役や子会社の代表、管理部門、営業部門など、会社の方針決定から現場の事業運営まで幅広い領域を担っている
明日終わるかもしれない人生。今、後悔しない生き方を
人生は、明日終わってもおかしくない。
10代の頃から、そのように思わざるを得ない体験をすることが何度かありました。小学校や中学校を転々としたり、ある日突然住む場所がなくなったり、いわゆる「普通」の人生を歩んではいませんでした。
それでも、今振り返れば「良い経験ができた」と自分のなかに落とし込むことができます。さまざまな経験をしたことで、自分にとって大切な、今につながるマインドを得られたからです。
それは、「今、後悔のない選択をする」ということ。人生においてさまざまな意思決定をするときは「今この選択をしなかったことで後悔しないか」を基準として考えるようにしています。
こういったマインドのもと、自分がこれまで選択してきたなかで印象的だった出来事の一つに、高校卒業後、当時没頭していたサッカー関係の専門学校に通うために1年間アルバイトをしてお金を貯める決断をしたことがあります。好きなことを突き詰めたい。心の底からこれが今後悔しない選択だと思えたからこそ、自分が信じた道をまっすぐ突き進んでいくことができたのです。
自分が歩んでいる人生が決して悪いものではないと感じられるのも、「今」後悔しない選択をしてきたからだと思っています。ここにいたるまでの道のりは平坦なものではありませんでしたが、その瞬間の自分にとって何がベストなのかを考え抜いて歩んできたつもりです。
だからこそ、就活生のみなさんにも、なりたい自分といった自己実現をするためにはどのような行動をとるべきなのかを考えて、積極的に行動に移し、決意したことを貫いてほしいと思っています。
その選択のせいで一時はつらい道を行くことになったとしても、先に待つ場所は自分にしかたどり着けない、何にも代えがたい唯一無二の居場所になるでしょう。
充実はハードモードにあり。「なんとかする力」を身に付けよう
自分の場合、強い意志を持ってサッカー関係の専門学校への進学を果たしましたが、どうしても自分の信念とは相反する出来事があり、1年間ほどで辞める決断をしました。それからはアルバイトをする傍ら、知人に紹介してもらった社会人チームでサッカーを続けていました。
その間、飲食店でアルバイトをしたり、アルバイト先の店長と2人でレストランの立ち上げを任されて正社員に挑戦したり、まさに今自分が後悔しない選択かどうかをベースに、どのような仕事をするか意思決定を続ける日々でしたね。
そうして25歳になるまではサッカーや飲食業界にかかわっていましたが、正社員で働きたいという思いが強まり、再び正社員として飲食業界に身を置くようになったのです。

当時、飲食店で働いた日々を振り返ってみると、「なんとかしないといけないこと」の連続でした。たとえその日の人手が圧倒的に足りなくても、一度店がオープンしてしまえばできることを精いっぱいやって目の前のお客様に満足してもらうほかはない。またそのように日々を乗り越えたところで、それが必ずしも売上やお客様の満足といった結果につながるとは限りません。ただそれを不安がったり、焦りを感じるといったマインドではありませんでした。
結局のところ、先のことはいくら考えたってどうにもできません。5秒後のことすら過去になるのだから、今何をすべきかを冷静に判断し、できることを精いっぱいやり切るしかないのです。
10代の頃から飲食店でこういった経験をしてきたことで、だんだんと困難な状況を乗り越えることそのものが楽しいと思えるマインドが身に付いたのだと思います。イメージとしては、ゲームのハードモードをクリアしていくような日々です。逆にイージーではつまらない、なんでも簡単にクリアできてしまったら人生はおもしろくないですし、何より、壁を越え続ける経験なしに人は成長しないということを実感しています。
これから社会に出る就活生の方にとっても、恐らく簡単には越えられない壁が何度も現れると思います。そのときに大切にしてほしいのは、ハードモードをいかに逃げずに乗り越えるかです。
苦労し、戦い、失敗する経験が多い人ほど、大きく成長していきます。どんなに険しい道でも、ときには力ずくで「なんとかする」経験を積むのが良いかなと思います。10年後に見違える姿になっているのは、往々にしてそういったハードな経験を積み重ねてきた人たちだと感じますね。
大切なのは先を見すえたビジョンよりも「自分の芯」。こだわり続けたイケてる在り方
これまでの人生を振り返ると、いつであっても目の前のことに全力で取り組んできました。だからこそ、長期的なキャリアや目標にこだわったことはそこまでありませんでしたね。
もちろん、キャリア論は人によってさまざまで、なかには長期的な目標を持つことを大切にしている人もいますが、私は必ずしも明確な目標がなくとも良いと考えています。ただし、「自分の芯」だけは大切にしてほしいです。自分が譲れないことや、「こんな生き方をしたい」と強く思えることを明確にしておけば、それが進むべき方向を示す地図になるはずです。

自分の場合は、常に「自分にとっての正義を貫いている」と思える選択をすることがキャリアにおける「芯」です。言動に一貫性があり、物事をポジティブにとらえる視点を持っていて、口だけでなく行動で語ること。それが私のなかの「イケてる」在り方だと考えています。
たとえば少年漫画などの物語で焦点を当てられるのは、ヒーローも悪役も関係なく自分のなかに自分なりの正義を持っている存在です。多くの人々がその信念に惹かれて集まり、よりたくさんの人を巻き込み、突き動かしていきます。自分もそういった強い信念のもと行動できる人間でありたいですし、そういった人に強く惹かれます。
自分が言ったことを責任を持ってやり遂げるというのは当たり前に言われがちですが、実は簡単なことではありません。だからこそ、地道に有言実行を続けていくだけでもたとえばその組織の上位20%くらいの人財にはなれると思っています。
自分の価値は給料よりもずっと高い。もらえるお金以上のものを得るために必要なこと

振り返ってみると、今につながる考え方の多くはアルバイト時代に一緒に働いていた店長から教えてもらいました。特に印象的なものに「時給の話」があります。
たとえば、飲食店で働くのに時給が1,500円と提示されていたとしますよね。私がアルバイトをしていた10年ほど前の相場からいえば、この金額を見たときに「高い!」と思う人が多かったのではないかと思います。
ただ、そのときの店長に言われたのは「人の1日は24時間しかなく、そのうち起きて活動している時間が16時間程度だったとして、その16時間しかないうちの1時間に支払われる金額が1,500円ということ。提示されている時給を、大切な人生の時間を使う観点から見て、決して高いと思ってほしくない」と言われました。

店長の言葉を受けて、この1時間がなければお金は手に入らなかったわけですが、代わりにもっと好きなことをしたり、有意義な時間が過ごせることだってあったなかで、アルバイトの時間一つとっても、何の気なしに働くか実りある時間にできるかは、自分の行動次第だということに気づきました。
就活生の皆さんもアルバイトをされている方がいらっしゃると思いますが、支払われている時給から考えてみると、ただ仕事をこなすだけでは自分の人生の大切な時間を切り出すにはあまりにも安いと思います。仕事を通してでなければ得られない学びや経験を自分から取りに行くことで、実りのある時間にしてほしいです。それには、ただ与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら行動を起こし、自分の仕事にこだわりを持って動く必要があると思います。

これから社会に出る皆さんは、ファーストキャリアを歩む場所や環境に悩むことも少なくないと思います。ただ、職場というものは一度働いてみなければどういった場所であるのか理解するのは難しいものです。どんなに事前にリサーチをしていても、希望にぴったり沿う環境を見つけるのは容易ではありません。
だからこそ、身を置いた環境でどのように自己実現をするために戦っていくかを考えてほしいと思います。ハードな環境であったとしても、こだわりを持って働くこと、得られるものを得てやろうという強い気持ちを持って働くことで、将来の人生の豊かさはまったく違うものになるはずです。
人生の目標は「死ぬまで戦友と呼べる仲間達と思いっきり楽しんで働き、遊ぶこと」

長い間飲食業界で働いてきましたが、そのなかでも大きなターニングポイントとなったのは、やはりナハトにジョインしたことです。ナハトに入ったきっかけは、飲食業界にかかわるなかで自分の店を持ちたいと思うようになった頃、かつてのアルバイト先の後輩だった安達(ナハト代表取締役)に「バーの店長をやらないか」と声をかけてもらったのが始まりでした。当時安達はナハトを創業して代表を務めており、夢だった自分の店を持てるならと快諾しました。
とはいえかつての後輩がオーナー、先輩であった自分が店舗責任者となるため、どこか後輩に貸しを作りたくない気持ちもあり、それならばナハトに入って働き、お金を貯めたうえで自分の店を持つと安達へ話し、最終的に着地しました。
またジョインしたもう一つの理由として、安達の想いに共感したのも大きかったですね。ナハトはもともと、安達とその近くの友人達のリファラルによって大きくなっていった会社なので、気の知れた仲間達とキャリアが終わるまで成長と活躍を続けていきたいと安達は常々話しており、自分が人生の目標として抱いていることと同じだと思いました。
好きな仲間に囲まれて、仕事もプライベートも充実させること。死ぬまで思いっきり楽しんで働き、思いっきり遊ぶこと。それが実現したい自分の在り方ですし、ナハトのみんなもそれを楽しんでくれたらうれしいです。そのために目の前のことに真剣に向き合い、これからも後悔のない生き方をしていきたいですね。
質は量から生まれる。まずはやってみて、行動を続けよう
後悔のない、自分のためになる生き方をするうえでは、ファーストキャリアとして選んだ環境で意識してほしい考え方が2つあります。
1つ目は、まずやってみること。現代はコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを重視する考え方が広まっていたり、新卒の時点で自分自身で仕事を選び、キャリアを切り拓いていきたいと考えている学生の人も多いと思います。これらを意識するのは社会人として働くうえではとても大切なことですが、仕事の質は後からついてくるものであり、その質を追求するためには量をこなすことが欠かせません。
量から質を生み出すためには、会社から求められることや、上司にやるように言われたことを、自分の納得感にかかわらずまずやってみると良いのかなと思います。仕事をするうえで無駄な経験など一つもないと思っていて、むしろそれを無駄にするかどうかは自身の考え方、働き方次第です。今向き合っているすべてのことを学びに変える気持ちを忘れないことが大切なのだと思います。
2つ目に、自分でてっぺんを決めないこと。たとえば新卒入社という立場があることで「新卒だから仕事はここまでで良い」とラインを決めてしまうことは非常にもったいないと思います。周囲からも「新卒のうちはここまでやってくれれば良いよ」といった言葉をかけられることもあるかもしれませんが、その言葉や自分のポジションに甘んじず、疑問に思うことや感じたこと、できると思うことはどんどん発言し、チャレンジする機会をつかんでください。
求められていることや、今の自分の立ち位置の一歩先を行く、極論を言うなら経営者と同じ目線を持って一つひとつの仕事に向き合うことで、周囲よりも高い視座を得ることができます。
何をするにも、簡単にベストは見つかりません。大切なのは、ベストを追求し続け、それに一歩でも近づこうとする姿勢です。これからの社会人生活を給料以上の価値がある、かけがえのない学びを得る場とするためにも、今みなさんに求められていることの一歩先を見つめられると良いと思います。そして何よりも自分のために、今できることを追求し続けてくださいね。

取材・執筆:瀧ヶ平史織