今しかできないことをやり尽くそう|すべてのチャンスには「つかんだ先の答え」がある

インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島 亮次さん

インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島 亮次さん

Ryoji Yanashima・慶應大学大学院の政策・メディア研究科を修了後、グリーに入社。データ解析やプログラミングなどを手掛ける。その後フリークアウトへの入社を経て、2013年インティメート・マージャーを設立。2019年東証マザーズ(現グロース市場)に上場。その後、現職

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チャンスはつかんだ者勝ち。未知の学びを見出す方法

学生時代は、やりたいことをすべてやっていました。SNS関連の事業で学生起業をし、脳科学を中心として、統計やAI(人工知能)などの分野を研究しました。機会ができたら、興味のあることを全部やってみるというスタンスでしたね。

ビジネスに関しては、学生時代の経験から学んだことも多かったです。たとえば高校生の頃は人気の出そうなものを仕入れて友人に売ったり、テスト問題を作って売ったり、商売のまねごとをしていたことがありました。

そこで感じたのは、ニーズに応えた先にさまざまな可能性が広がるおもしろさ。大学に入ってからは、現在も起業家として活躍している兄の友人と、新卒就職関連のSNSビジネスを立ち上げ、ビジネスコンテストに出たりもしました。

また脳科学の研究では、人間の脳の機能の追求が、AIなどの進化に貢献できる分野であることを実感しました。可能性に満ちたジャンルの学びを得るのが楽しく、熱中していましたね。

学生時代のトライと可能性の広がり

「やらなくてはならない」には興味が持てない一方、「やりたい」と思えたことならいくらでもできるタイプなので、学生時代は特に興味のあることに振り切っていたと思います。そんなふうに自分の時間を100%好きなことにつぎ込めるのは、学生の特権ですよね。

皆さんも、「成功するのか」「時間の無駄なのでは」と考えずに、チャンスがあればまずはやってみてはどうでしょうか。楽しさの先に、気づきやその後の新たな可能性につながるきっかけがあるかもしれませんよ。

「ラストチャンス」にアンテナを。今しかできないことをやろう

大学院での研究を続ける道もあったのですが、いったん企業に就職しました。長い人生を考えたとき、もし大学院で再び研究がしたいと思えば、40〜50代でも戻ってくることができる。しかし新卒として“生産性の高い仕事の仕方”を一から教えてもらえるのは、今だけだと思ったのです。キャリアや年齢を考えて、今がラストチャンスだと思いました。

どんなキャリアを選ぶにしても、人生の時間は限られています。だからこそ自分自身の労働生産性を高めて、やりたいこと・やるべきことを一つでも多くクリアしていかなければなりません。その仕事のやり方、回し方、進め方は、企業に入って体で覚えるものだと思いますね。

「世の中の大抵のことは年齢なんて関係ない」と思うかもしれませんが、周りはあなたの年齢や立場、これまでの経歴を見て接し方や与える仕事を判断するわけです。若いからできること、初めてだから教えてもらえることはたくさんあります。道に迷うときは、今しかできないことを優先するのも良いかもしれません。

大きなことを成し遂げる必要はない。自分の「得意」に胸を張ろう

大学院での研究を切り上げ新卒で入社したのが、グリーという会社です。データ分析やプログラミングといった分野で、自分の力が活かせそうだと考えました。またインターネット、エンターテイメント、AI、データサイエンスなど、さまざまなビジネス・技術要素があり、複合領域で力を発揮したいとも思いました。自分は世界一のプログラマーではないけれど、さまざまなジャンルの複合分野でうまくやれるはず、という自信はありましたね。

とはいえ、誰よりも高度な技術を持っていたというわけではありません。ただ周囲の人や大多数の人と比べた時、相対的に得意だと思っただけのことです

皆さんのなかには、「得意だ」と胸を張って良いのは、その技術を使って何かを成し遂げた人間だけであると考える人もいるのではないでしょうか。しかし、それでは「世界一」や「オンリーワン」の称号を持つ人しか得意だと言えなくなりますよね。

たとえば今の大学生はChatGPTを使って文章の雛形を作ったり、考えを整理するための壁打ちに活用したり、自然にAIを使っていると聞きます。でも、現在日本の企業で積極的にAIを活用しているのは、全体の十数%に満たないそうです。つまりAIに触れて使えることだけでも、国民のなかでは相対的に得意だと言えるということですね。

簗島さんからのメッセージ

極端に聞こえるかもしれませんが、日本人の半分よりあなたのほうが上手なら、得意だと言っても問題はありません。ぜひ自分の強みに自信を持ち「得意だ」と言ってほしいと思います。それがあなた自身の武器になり、自分を魅力的にする手段ともなり得るのです。

起業のきっかけは「世間に必要とされていると思ったから」

グリーで経験を積み、その後フリークアウトというデジタル広告分野の会社を経て、現在のインティメート・マージャーを創業したのは、それが世の中で必要とされていると感じたからです。

簗島さんのキャリア変遷

インティメート・マージャーではデータサイエンスやAIなどの技術を駆使して、膨大なデータをさまざまな局面で活用しています。これからの世の中は少子高齢化で、労働人口が減っていくことは間違いありません。労働生産性を高めなければ、社会が衰退し、個人も疲弊していくことは目に見えています。これを解決するために、データの活用を進めることが自分たちの役割だと自負しています。

創業にあたってさまざまな分野の方から話を聞くにつけ、「データ活用と生産性の向上」という事業・サービスは、今後ますます必要とされるに違いないという確信が持てました。一緒にやろう、共同で起業しないかと言われることも多かったのですが、重要なのは、「やりたいこと・やるべきことをいかに早く実行し、高いレベルで達成するか」です。より早く形にするために、自分の会社をスタートさせました。

自分で起業するのか、誰かの誘いに乗るのか、転職するのかしないのか。そういったキャリアにおける複数の選択肢が目の前に現れたときは、状況に従って判断するのが良いでしょう。自分にとって、社会にとって必要なことを見つめて、それをかなえていく最善の方法を考えれば、自ずと進むべき道は決まってくると思います

コミュニケーションはときに効率を重視することも必要

インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島 亮次さん

実際に起業していざ自分が社長になってみると、みんながかしこまって話しかけてくるので、こっちがびっくりしました(笑)。ちょっとした提案をするにも、社長と社員という立場にあるだけで大仰な書類を作り、かしこまった雰囲気で「社長」と声をかけなければならない。言葉選びにも慎重になりますよね。そのようなコミュニケーションの取り方は、時間がもったいないと感じました。

当社では社内のシステムにもAIを導入していて、言いたいことをまとめるときだけでなく、メール・チャット・会議の音声など、あらゆるデータを取り込んで、必要に応じてまとめて取り出すことができます。こうやって活用を進めるとわかるのですが、AIはコミュニケーションを効率的に進めるツールでもあるのです

丁寧とか印象に残るとかの視点で語られがちなコミュニケーションですが、ポイントを押さえ、適切なツールを駆使して、効率重視でやり取りをするということもときには大切だと思います。AIはそうしたコミュニケーションの効率化、正確性の向上に一役買ってくれます。

AIなどツールのリテラシーを上げるのと同時に、空気を読み過ぎるのではなく、本質をずばりと伝えられる言葉やマインドも鍛えていけると良いと思います。

意志を持つことが武器になる。デジタル・AIネイティブ世代の生き方

今の若い人と話していると、生活の多くがデジタル化されていて、当たり前のようにAIを活用しており、本当にデジタル/AIネイティブだと感じます。デジタルリテラシーがあって、さまざまな変化にもすぐに対応できます。これは大きなアドバンテージです。

また、若いということ自体も強い武器になります。変化が多い世の中で乗り遅れず、積極的に新しいものを取り入れていくことができるのは、若さゆえの強みでしょう

これから求められる人材像

知識、能力、経験の不足を心配する人もいますが、それほど気にしなくて良いのではないでしょうか。AIが完成形を導き出す世の中になれば、完成形を作り上げる部分はAIに任せてしまえば良いのです。人間がしなくてはならないのは、やりたいこと・やるべきことを整理し、行動の方向性を決めること。「こうしたい」という意思を持ち、それを言語化できることが何より必要です。

AIが浸透した世の中では、人材を評価するうえでのスキルのウェイトが減っていくでしょうから、持っているスキルより、若く、変化に柔軟で、強い意志を持てる人こそが求められていくのではないでしょうか。そういった、今のあなただからこそ持てる魅力を精いっぱいに発揮し、必要とされる人材になっていってほしいですね。

簗島さんが贈るキャリア指針

取材・執筆 鈴木満優子

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