キャリアは20代が勝負|ワーク・ライフ・バランスは人生全体で考えろ

シー・ビー・ティ・ソリューションズ 代表取締役 社長 野口 功司さん
Koji Noguchi・幼少の頃より起業を志す。大学卒業後、プログラマーとして富士ソフトABCへ入社。その後、起業家として必要な経験を得るため日本オラクルなど7社を経験。2009年にCBTソリューションズを設立し、以降現職
「正しい努力」こそが報われる。スキルはゴールからの逆算で身に付けよう
小学3年生の道徳の授業をきっかけに「将来は経営者になろう」と決断したときから、ゴールを実現するために今何をすべきかを意識して行動してきました。進学するときに情報処理学科を選んだのも、これから経営者になるならITだと確信していたからです。
大学卒業後はプログラマー、営業、マーケッター、人事などさまざまな分野・職種で経験を積んできましたが、これもすべて「経営者になる」というゴールを見すえて選択したことです。キャリアのスタート地点から常に「目的のために必要な経験は何か」という視点を持っていたからこそ、35歳で起業し経営者になれたのだと思っています。

学生のみなさんに伝えたいのは、「まずゴールを明確にしてほしい」ということ。これは私の個人的な意見ですが、努力というのは正しく積み重ねてこそ報われると思っています。たとえば、サッカープレイヤーになりたい人がいくらテニスのラケットを振っても、サッカーがうまくなることはありませんよね。それと一緒で、キャリアもまずゴールを明確に定め、そこから逆算して努力を積み重ねる必要があるのです。
ただし注意してほしいのは、あくまで「明確な」ゴールを考えるべきだということ。「大金持ちになりたい」「有名人になりたい」といった漠然としたゴールを設定してしまうと、気づいたらサッカー選手になりたいのにテニスの練習をしていた、という状況になりかねません。だからこそ、若いうちに「どの分野で勝負するのか」(=ゴール)を明確にしてスキルを身に付けるべきだと思います。

入るなら大企業か野心的なベンチャーに。切磋琢磨できる環境でこそ成長できる
そうは言っても、ゴールなんて決め切れないよ、という人もいるでしょう。努力の方向性がわからないときは、なるべく厳しい環境に身を置くべきです。具体的に言うと、大企業か、成長しているベンチャーが良いと思います。
大企業であれば、しっかり教育してもらえる環境があります。また、優秀な人間も多いでしょう。そういった人のやり方を真似して吸収すれば、着実に成長することができます。一方で勢いのあるベンチャーであれば、より早い成長が期待できるはずです。
正直、そういった環境での仕事は大変だと思います。人員の確保が追いついておらず、組織も未成熟な場合が多いです。いろいろな仕事をこなす必要があるうえ、猛烈に働く人が多く、常に切磋琢磨が求められます。でも20代のうちはそういう環境にいたほうが良いと思います。
結局、人は環境に育てられるもの。若いうちにいろんな仕事を経験して、失敗もたくさんする。そういう環境でこそ実力は身に付くのだと思います。
ただし、ベンチャーであればどこでも良いというわけではありません。大切なのは、「野心」を持ったベンチャーであるということです。たとえば「ベストベンチャー100」という雑誌などに特集されているような企業ですね。特に売上が毎年倍々で増えているようなベンチャーは狙い目でしょう。そういった企業は、ビジネスとしての勝ち筋がしっかりしているからこそ売上が立つし、雑誌に特集もされているはずです。
一方で、野心を持たない企業はおすすめできません。何十年も事業内容に変化がなく、人間関係や縁故で役職が決まるような企業では、成長の道はないと思います。あくまでお互い切磋琢磨できる環境であるかを重視してほしいです。

学生のみなさんなら、インターンシップ制度を利用して成長できる環境かを確認するのがおすすめです。面接だけで実際の職場環境を見極めるには限界があります。だからこそ実際に現場で働いてみて、自分の目で確かめてほしい。4〜5社も経験すれば、どういう人たちが良い上司、良い仲間で、どういう社風が自分に合うかわかるはずです。
インターンに参加できない場合は、アルバイトでもかまいません。とにかく内部から企業を見る、という経験をしたうえで就職先を決めるべきであるということは意識していただきたいですね。
ワークライフバランスは「人生」を基準にして考える
キャリアを積んでいくうえで「ワークライフバランスが大事」という声をよく聞きますが、それはまったくその通りだと思います。ただし、私が言う「ワークライフバランス」は、一般的に言われているものとは少し意味が違います。
私が重視すべきだと考えているのは、「人生全体で考えたうえでのワークライフバランス」。50年の労働人生全体から考えて、ワークとライフを50:50にすべきです。そのためには、20代は死ぬほど働いたほうが良いと考えています。
ビジネスの世界では、30歳までにある程度の実力を持たなければ通用しません。20代をぼんやりと過ごしてしまうと、それ以降のキャリアアップが非常に難しくなります。40歳、50歳になってもキャリアアップできないまま働き続けるのは、精神的にも体力的にも厳しいでしょう。

一方、20代のうちに実力を身に付けて「期待の若手」になれば、自然と給料は上がっていくし、その後は人をまとめる立場として働くことができるでしょう。若いうちに実力が身に付いていると、30代からが楽になります。
だからこそ、ワークライフバランスは、人生という長いスパンのなかで考えてみてほしい。20代の今だけ切り取って「ワークとライフは半々」なんて考えないほうが良いです。若いうちに頑張っておけば、20代は地獄かもしれないけど、30代40代から給料も上がりますし、キャリアにおいてもプライベートにおいても希望をかなえやすくなります。そうすることで、労働人生50年を幸せに過ごせるのではないでしょうか。
これからは「人間性」の時代。人との摩擦を避けない姿勢が大切になる
近年、密なコミュニケーションを避ける風潮を感じています。「仕事さえきちんとできていれば交流は避けても良い」という考えが許容される時代、とも言えるかもしれません。でも、これからはそうもいかないと思います。
なぜなら、実際に手を動かす作業的な仕事は全部AI(人工知能)に代替されていくからです。その分、人にやる気を持たせたり、納得感のある仕事の任せ方をしたりといったコミュニケーション能力は、今後強く求められてくるでしょう。
だからこそ、人間的な摩擦、ストレスからは逃げられなくなってくるはずです。これからはそういった摩擦から逃げずに向き合える「人間力」を持つ人が活躍すると思います。
このような人になるためには、日頃の小さな積み重ねが大切です。たとえば、いつも明るく自分から挨拶する。力のない人がウォーターサーバーを変えようとしたとき、さっと助けに入る。そのような日頃のコミュニケーションを大切にすることで、「この人だったら困ったときに協力してあげたいな」と思ってもらえるようになり、周囲と円滑なコミュニケーションを取れるようになるはずです。
一発勝負はしない。100発勝負、1,000発勝負、10,000発勝負をしよう
経営者として充実したキャリアを積んできた私ですが、もちろん失敗することもあります。そういったときも、くじけずトライし続けてきました。
たとえばサイコロを振って良い目を出したいとします。1回振ってみて、良い目が出なかった。その1回の結果でくよくよしないことが大切です。つべこべ言わずに100回振りましょう。それだけ振れば、16、17回くらいは6の目が出るはずです。
つまりは、それだけの量をこなすことが大事なのです。とにかく量をこなせば、たまには良い目も出ます。一発勝負をせず、100発勝負、1,000発勝負、10,000発勝負をする。それだけ経験を積めばスキルも上がって、自ずと成功確率も高くなっていくはずです。
失敗した経験から自ら学び、ブラッシュアップし、また挑戦する。それを繰り返しているうちにスキルが身に付きます。そのようにして、ビジネスパーソンとして磨き上げられていくのです。
これから社会の荒波に出ていくみなさんも、壁にぶつかったり、行き詰ったりすることがあるでしょう。そういったときも簡単にあきらめず、何度でも立ち上がって挑み続けてほしいですね。

取材・執筆:久保鞠奈
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