非連続のキャリアを描け|自分が手にするべき未来を見失わないために

JDSC 代表取締役COO 佐藤 飛鳥さん

JDSC 代表取締役COO 佐藤 飛鳥さん

Asuka Sato・早稲田大学大学院を修了、新卒でアクセンチュアに入社。戦略コンサルタントとして活躍した後に起業を経てアクセンチュアに再入社。2020年1月にJDSCへ入社、2025年9月より現職

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世の中の仕組みへの強い興味が導いたファーストキャリア

私の幼い頃は、日本の製造業が世界的に注目を集めていた時代の名残がありました。新しい商品が出れば世の中が沸き立つ様を目の当たりにするなかで、「こんなふうに世の中は変えていけるのか」と感じたものです。

たとえば、2001年に発売されたiPod。CDで音楽を聞くのが当たり前だった当時、「1,000曲の音楽をポケットに入れて持ち運ぶ」というのは非常に革新的なアイデアでした。ほかにも多くの企業からデジタルプレイヤーが発売されるなか、iTunesも含めたビジネスモデルづくりは画期的で、多くの人に選ばれました。

もともと典型的な「理系男子」の気質があったため、機械や家電も大好きでした。将来は、技術者・開発者になることで世の中を幸せにしていきたいという思いがあり、大学・大学院で電気工学を学びました。しかしいざ就活をするときには時代の流れは変わっていて、日本の製造業や家電製品はあの頃ほど世の中の生活を変える力を持ってはいなかったのです。

そこで本当に技術者になりたいのか、また、狭い特定の分野のなかで専門家として働く道は自分に合っているのかを考えた時、技術者として世の中に貢献するのではなく、もっと広くビジネスの世界を見たいという結論に至りました。

とはいえ、当時の電気工学科卒の大学院生は大企業から引く手あまた。家電企業か、電気自動車に力を入れ始めた自動車会社の技術職の道を選ぶ人が大半でした。そこで、学部卒で社会に出たメンバーや先輩のツテをたどり、理系学部から技術職以外の選択をした人の話を聞き漁りました。

そのなかで、コンサルティング業界という存在を知ったのです。聞けば聞くほど自分の価値観にぴったりな業界であると感じられ、ワクワクしたのを今でも覚えています。当時はまだ知名度も低かったのですが、「ビジネス変革の力を身に付けて技術をサポートする立場になったほうが、世の中を変えられる」。と思い、ご縁のあったアクセンチュアをファーストキャリアにする決心をしました。

佐藤さんのキャリア変遷

世の中は変わったか? 問いから見出した転換点

結果としてコンサルティングの仕事は、世の中を便利にしたい私にとっての天職でした。アクセンチュアは経営戦略とIT技術による企業変革を支援しており、私にとっては非常に面白い世界だったのです。

クライアント企業とともに業界の新しい仕組みや考え方を生み出し、マーケットを作り出していく。それが企業の力になり、果ては業界の活性化につながっていく。技術者という立場からではないですが、経営の観点からなら世の中を変えていくことができるのではないかと、本気で思ったものです

その後は起業によって一度アクセンチュアを離れはしましたが、再入社してからも非常に刺激的な毎日を送っていたので、その環境を手放すということは考えていませんでした。そんな時に、奇遇にも知人と、当時たまたま登録していたエージェントの2人から同時に「絶対に価値観に合うから話を聞いてみて」と言われた企業がありました。そうして話だけは聞いてみようと向かった会社こそが、JDSCだったのです。とはいえ、その時点では転職が現実的だとは思えませんでしたね。

その思いを変えたのは、代表である加藤の「これまでの仕事を通して、世の中は変わりましたか?」という一言

その問いがあまりに衝撃的で、ほかのことはほとんど覚えていないのですが(笑)、話すほどに「こっちのほうがおもしろいことができそうだ」と思ったのですよね。アクセンチュアでの仕事は充実しているものの、正直1万人を超える組織の中では駒に過ぎない。自分ができることには限界があると思っていました。そこで、JDSCへの参画を決意したのです。

「今」を基準にしない。非連続のキャリアを見据えよ

私の意思決定には、「キャリアは非連続に描く」という価値観が影響しています。非連続というのは、「今」と地続きになっていないこと。つまり、今の自分の実力や置かれている立場を基準に「できるか?」を考えるのではなく、最終的なゴールへ向かうために今するべきことを考えたうえで進む道を選択するということです。

現在地を基準に次に進む道を考えると、どうしても「今の自分では無理なのでは?」といった不安や懸念が生じることがあります。その不安を払しょくするために、今の実力で実現可能な小さいゴールを目指そうとしてしまうのです。結果として、自分が思い描いていた最終地点からどんどんゴールがずれていきます。それでは本末転倒ですよね。

だからこそ、意思決定をするときには「できるかできないか」ではなく「どのような状態がベストか」を考えてみてほしいと思います。キャリアは今までの道のりを振り返りながら決めるものではなく、最終的なゴールに向かって決めるもの。私の場合は、自分の現在地にかかわらず「世の中をより良く変えるにはどうするべきか」を考えて選んできました。

ゴールを見すえたキャリアの決め方

皆さんもキャリアの方向性を定めるときには、ぜひ大きな絵を描く気持ちで考えてみてください。見据えるべきは今でなく、理想の未来です。自分にとって何が幸せか、将来どうなっていたいのか。理想の将来像を見つめ、大きな未来図を描けると良いですね。

とはいえ、私のキャリアが順風満帆だったかと言えばそういうわけではありません。大きな未来図を描いているからこそやりたいことに対して実力が見合っていなかったり、壁にぶつかることもありました。

個人が持つスキルの掛け合わせによる価値創造が「協働」のカギ

JDSC 代表取締役COO 佐藤 飛鳥さん

JDSCでは非常に多くの学びがありましたが、キャリアのなかで最大の壁に突き当たったのもこの時期です。それが、「協働」の違いでした。

JDSCはAI(人工知能)やデータサイエンスの力で各企業の課題を解決する事業を展開しています。そのため社内のデータサイエンティストやエンジニア、現場にも精通する事業会社出身のスペシャリストなどと連携をする必要があるのですが、それがこれまでのコンサルファームでのチームワークとまったく異なる部分でした。

そもそもコンサルファームでは、役職の違いはあれど、同じ考え方や強みを身に付けた同じ人種のコンサルタントとのチームワークが主です。

一方JDSCでは、コンサルタントだけでなくデータサイエンティスト、エンジニア、各業界の現場での経験を積み上げてきた事業会社出身のスペシャリストなどとの協働が必要になります。彼らとはケイパビリティやモノの見方がまったく違っていて、言ってしまえば違う人種のメンバーとチームを組むようなものでした。

そのようななかで、それぞれの強みを最大限に発揮するにはどうしたら良いかも試行錯誤しながらプロジェクトを進めていく必要があります。社内で浴びる知見、技術、観点、考え方も非常に多岐にわたり、コンサルファームでのプロジェクトとは大きく異なる難しさがありましたね。ただ、それを楽しんでいたのも確かです。

AIの急速な進化が時代を大きく変える今、個人に求められるスキルは目まぐるしく更新され続けており、もはや単独での専門性では限界があります。そんな環境下では、多様な能力を持つ人材がチームを組み、それぞれの強みを掛け合わせて働くスタイルこそがこれからの時代の大きな武器となるのではと感じています

佐藤さんからのメッセージ

自分が輝ける場所を見つけられる人は強い

時の流れが一段と速まっている現代の様子を見ていると、ファーストキャリアで大きな企業に就職することが、必ずしも希望をかなえるための近道ではなくなってきていると思います。では、どのような企業を選ぶべきなのか。何よりも大切なのは、変化の流れが速いなかでも着実に実力を伸ばし、スキルアップしていける企業かどうかではないでしょうか

スキルアップのためには、小さくとも裁量権が与えられる環境がベストだと考えます。与えられた課題に対して導き出した答えを、テスト感覚で実践できる程度の自由が利く環境にいたほうが成長しやすいと思います。

また課題に対する答えの出し方に関しても、今と昔では大きな違いが出てきていますよね。昔は地頭の良さが重宝される傾向にありましたが、今はAIを含むさまざまなものを使いこなしながら成果を出す時代。情報をもとに時代の流れを読み取り「こういうことができたら良い」と課題を見出す力、それを実現するにはどうすれば良いのかを考える力、そしてさまざまな知見や技術、能力を大きなパワーに結集して世の中を変革していくことができる人が必要とされていくのだと思います。

これらの力を身に付け、実力を発揮しながら手応えを感じる状態で働くことができれば、きっと社会人として過ごす時間も楽しくなります。ぜひ世の中を楽しみ、おもしろがりながら、大きなゴールに向かって歩んでいってください。

佐藤さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:瀧ヶ平史織

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