AI時代は「自由を楽しむ人」が勝つ。新卒4年目で起業した社長の運に左右させないキャリア論

デジタルトレンズ 代表取締役 姫野 慎太郎さん
Shintaro Himeno・大学在学中のインターンシップでメディアの立ち上げや営業を経験し、新卒で同企業に入社。入社後はメディア運営やSEO施策に携わりながら海外向けフリーペーパーの制作やインドネシア拠点の立ち上げ、上海でのゲーム事業など多くの業務を経験。培ってきたWebマーケティングや事業運営の経験をもとに、新卒4年目にデジタルトレンズを創業、以降現職。東京・大阪・福岡の3拠点で企業のWeb集客を一気通貫で支援している
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分岐点はインターン。価値観を変えた「仕事」との出会い
学生時代に熱中したことと言えば、競馬とゲーム。特に競馬は親に影響されて関心を持つようになり、心惹かれるあまり将来の道に騎手や調教師、牧場での勤務などを考えた時期があったほどです。京都大学へ進学したのも、「京都競馬場があるから頻繁に競馬を見に行ける」という思いがゼロではありませんでした。
そんな調子だったので、受験シーズンになっても心のベクトルがなかなか勉強に向かず、結局浪人。一浪の後合格したものの、大学進学後も昼過ぎまで寝て、起きたらサークルやバイトに行き、帰ってきたらゲーム。典型的な怠惰な学生生活でした。
それが大きく変わったのは、3年生の時。そろそろ就活について考えないとなというタイミングで、周りに合わせるように説明会やインターンシップ(インターン)に参加していました。
友人たちは当然のように大手企業を目指しているので同じように有名な企業の説明会に足を運んでみれば、そこには何百人もの学生の姿が。人の波を見ているうちに、「こんな環境では、内定を獲得するのもその後のキャリアも運に左右されるところが大きいのでは?」と感じたのです。正直言って、そこで勝ち上がれるほどの自信がなかったんですよね。
では、どうするか。進路を考え直した結果、自分の実力で勝ち上がっていける環境と言えばベンチャー企業、と結びつきました。京大生が選ぶキャリアとしてはかなり珍しいほうでしたが、実はもともと結構なひねくれ者。あまり人と同じことはしたくないという思いも少なからずあったからこそ、人と違う道を選ぶことへの抵抗はあまりなかったのだと思います。
結果として、その選択が自分の人生の大きなターニングポイントになりました。

インターンは就活の域を超えてこそ意義がある
インターンでは本当に多くのことを学びました。仕事のしんどさ、とにかく数をこなすことの重要性、「こういう働き方がしたい、したくない」という価値観──なかでも一番大きな学びは、「仕事は楽しい」という実感です。
当時は営業の仕事を任されていたのですが、それ以外にも企画を考えたりメディアを立ち上げたりと本当に多くの経験を積みました。そのうえで、インターン生にもかかわらず明確な結果を求められる。シビアなようですが、その環境はすごく自分に合っていたのですね。大手企業ではこのような経験はそうそうできません。ベンチャー企業を選んだからこその手触り感が、「仕事ってこんなに刺激的でおもしろいんだ」という実感につながりました。
だからベンチャーを選べ、というわけではありませんが、学生の皆さんにもインターンにはぜひ熱意を持って参加してほしいと思っています。就活対策の一環としてでなく、そこで将来に役立つスキルを身に付けるくらいの気概で挑戦してみてください。
そうすると自然と自分から動くことが増えたり、周囲からも仕事を振ってもらえるようになります。実際に仕事というものを体感することで、社会人の姿が実感としてわかるようになるでしょう。学生気分が抜けるきっかけにもなるはずです。
インターンは、環境や自分の動き方によって必ず人生の転換点になります。仮に私のようなキャリア形成の場とはならなくても、何かしらの得られるものはあるはず。受け身で「企業のことを教えてもらう」という姿勢ではなく、「自分からインターンで何かを得るんだ」という気持ちで参加してみてほしいですね。

熱量を持ってインターンに向き合うには、やはり少しでも興味を持てるようなインターンを選びたいところ。この「興味関心が向くか」というのがとても大切で、それ自体の大きさは気にしなくても良いと思います。とにかく、心が動く部分が少しでもあるかどうか。私の場合は「何となく雰囲気が良さそうだな」「インターンでやる予定のワークがおもしろそうだな」という程度の興味がきっかけでしたが、その感覚に従ったおかげで素晴らしい出会いがありましたから。
直感に従う選び方は、少なくとも「大手だから」「人気企業だから」でとりあえず応募してみるというよりも、よっぽど意義を持って取り組めると思います。
そのうえで、なぜこのインターンが良いと思ったのか、どういった点でその企業に惹かれたのかをインターンに取り組むなかで明確にしていけると良いでしょう。最終的にはスキルが身に付くだけでなく、自分の価値観の発見にもつながる。そんな経験が積めると良いですよね。
AI時代を生き抜くヒントは「自由を楽しめるかどうか」
インターン先ではさまざまな学びを得ましたが、当時は右も左もわからない一学生。インターン先では多くの裁量権が与えられていた一方で、その自由さを活かしきれず、最初は企画がこけたりうまくいかないこともたくさんありました。自分なりに考えてやってみたものの失敗が続き、業績が上がらず最終的にチームは解体。任されていた仕事がほかのチームに巻き取られてしまったときはとにかく悔しかったです。
失敗を経て学んだのは、まず数をこなさなければ見えないものがあるということ。自分は圧倒的に経験不足。そんな当たり前のことを、身をもって実感しました。そこでひたすら動き、経験を重ねて学びに変えていった結果、入社後の新卒研修の企画の一つだった営業大会ではライバルに大差をつけて1位を獲得できました。
あきらめずに向き合い続けていれば結果って出るんですよね。それがどんなに些細なことでも結果は結果。ああ、ようやく報われた──そのときのうれしさと言ったら! 回り道をしながらも結果をつかんだこと、これもすごく良い経験になったのは間違いありません。
ここで体感した、いわゆる「失敗と成功のセット」が仕事は楽しい、という気持ちを加速させました。
こうした試行錯誤的な動き方ができるのも、自由にやれる環境ならではだったと感じます。一方で、自由というのは人によって恐怖にもなるもの。「何でもして良い」と言われたときに自走できる人材になるか、戸惑って成長を止めてしまうのかは、自分の動き方にかかっています。
もちろん人による向き不向きも大きく関係すると思いますが、自由な環境を楽しみ、自分なりに試行錯誤をして勝手に成長していける人は、これからの時代にまさに求められる人材だと感じますね。
決められたことをするだけの定型的な作業は、これからどんどんAI(人工知能)に代替されていくでしょう。だからこそ、これからの時代で活躍していくのは決まりきった作業は当たり前のようにできて、さらにそこから自分で頭を働かせて次の行動を判断できる人だと思います。

「楽しく働く大人」の背中を追い起業へ

インターン先の企業で3年生の10月には内定をもらいましたが、承諾の理由は当時一緒に働いていた社長の存在でした。その背中にあこがれて、「社長の下で働けるなら」という条件で内定を承諾したのです。
私の中で社長は理想的な社会人の姿そのものでした。「仕事ができる大人」を絵に描いたような人で、PCスキルや処理能力はずば抜けていましたね。当時はAIはなかったので事務作業もすべて手動でしたが、横から見ていると物凄い速さで画面が動いていき、何をしているのかわからないほどでした。もちろん営業スキルにも長けていましたし、事業に対する思いにも共感できることが非常に多かったです。
そして何より、本当に楽しそうに仕事をしていました。私が学生時代にイメージしていた「大人のサラリーマン」像がすっかり塗り替わってしまうほど若々しく、ノリが良くていつも元気で、なんだか同世代の人と話しているような感じがしたんですよね。こんなふうに楽しく働いていくことができるんだ、と驚きました。
起業を志したのも、「こんな社会人になりたい」と思ったから。社長の姿があってこそ今があります。
社会を変えたい、貢献したいといった大きな目標を掲げる人もいますが、私はそういった大層な希望は持っていません。まずは自分が楽しく働いて、結果として自分の周りの人も楽しく、幸せになれば良い。そんな思いで今でも仕事に向き合っています。
こう言うと独りよがりに見えてしまうかもしれませんが、社会にインパクトを残すような企業で働いている人の多くは活き活きとしていて、自分のやりたいことをしているはず。最初は自分本意でも、徹底していけばきっと何かにつながると思っています。
なので、未だに社内では「ワイワイ楽しく仕事がしたい」と言っていますね(笑)。仕事でも皆で楽しみながら何にでもトライしていきたいですし、飲み会も社員旅行も全力で楽しみたい。もちろん強制ではないのですが、私個人としてはそう思っています。
だからこそ、これからも企業を大きくしたり上場・売却をゴールとせず、「事業と人で創る、最高の遊び場」にしていきたい。メンバーが新規事業に挑戦し、責任あるポジションを経験して、社内外で広く活躍できる力を身に付ける。その結果として企業も成長し、一緒に働いているメンバーだけでなく卒業していったメンバーにも思いっきり活躍してもらい、またいずれ一緒に美味しいお酒を飲んで、互いを鼓舞し合っていくような関係が続けられればと思っています。
それを実現するためにも、10年後も自分が誰よりもワクワクしながら仕事をしていることが、今の私のビジョンです。
尽きない壁は「まずやってみる」で乗り越える
そうは言っても、やはり仕事なので楽しいことばかりではありません。私は今年40歳になりますが(2026年取材当時)、未だに立ちはだかる壁も悩みも尽きません。きっとこの先もなくなることはないでしょう。
そこで重要になるのが、壁をいかに乗り越えていくか。私がこれまでの社会人生活の中で身に付けた術は、「分解して考える」ということです。
一言に「壁」と言っても、いろいろありますよね。たとえばキャリアに行き詰まったり、成績が伸び悩んだり、仕事が漠然と楽しくないと思えたり──今学生の皆さんも、きっとこの先そういった閉塞感を感じることは多いと思います。まずは、その壁が何なのかを言語化してみてください。そして原因を見極めることが大切です。
たとえば営業をしていて、「成績やスキルの壁」に直面したとします。そのような時、まずは自分の仕事を切り分けて考えましょう。営業は大きく「顧客との接触」「商談」「契約」という3つのステップがありますよね。そのなかで、今以上の改善やトライできる余地があるものを洗い出しましょう。それが見つかったらまず数をこなしてみて、結果を見ながら次の打ち手を考えていく。これを繰り返すことで壁を越えるきっかけが見えたり、自然と壁を乗り越えていたりすることが多いです。
社会人として事業を任されたときもそう。たとえば当社でも数多くの新規事業、新規施策に失敗してきました。一方で、メディア事業、SEO・AIO・LLMO対策事業、SNS運用といった事業や、大阪・福岡の展開など今でも継続している施策があります。こうしたイメージで、数をこなしていけば結果的に見えるモノ、残るモノがあるのだと思います。

もちろん綺麗に分解できるような問題ばかりではないでしょう。だからといってすぐにあきらめる癖はつけるべきではありません。
わからないなりに手を動かして、数をこなす。完璧に考えを固めてから動こうとせず、小さく試し、失敗を繰り返しながらどうすれば成功するのかを見極めていけば良いと思います。結局成功は失敗の上にしかないと思って、何度でも挑戦してみてください。
そのうえでさらに一段階視座を上げるとしたら、「売上の向上や今の事業全体には何が必要か」まで考えてみる癖をつけると良いでしょう。最初はわからなくても問題ありません。考え続けることで少しずつ自分の考えが生まれるようになります。ここまで考えられる人はなかなかいないので、必ず強力な武器になるはずです。
仕事をするうえでは、企業や上司に答えを求めるばかりでなく自分なりの考えや案を持って相談する姿勢も大切で、それが何よりも大きな成長につながります。気づいたら途方もなく大きく見えていた壁を軽々乗り越えている、ということもあるはず。その繰り返しが、あなたのキャリアを大きく飛躍させるのです。
人生を運に左右させない
キャリアに関するもう一つのアドバイスとして「運に左右される範囲をできるだけ小さくする」ということもぜひ意識してみてほしいです。
これは自身のキャリアでも一貫してきた考え方で、たとえば社員が数百人規模かそれ以上の組織に所属するとなると、かかわる上司も配属先も、昇進後のポジションも運に左右される要素が多くなると思うんですよね。そういった良い運が巡ってくるのを待つような働き方では、自分の希望を実現できるかどうかわかりません。いつまでたっても人生の安定を手に入れられないんですね。
安定性を求める人こそ大企業を目指しがちですが、今の時代、どこにいたって業績不振やそれにともなうリストラ、社会情勢や技術の革新による大きな変化は日常的に起きます。そういった大きな流れ、ある種運任せな環境に身を置くうえでの真の安定とは、どこでも通用するスキルを身に付けて「自分自身ができること」を増やすことだと思います。
キャリアのなかで大きな決断をしなければならない時、常に正解を選び続けるのは難しいでしょう。むしろ正解なんてものは、キャリアにおいては存在しないのかもしれません。だからこそ選択を後悔しないだけの材料を集めて、自分で決断をし、それを正解に近づけていくことが大切です。
そのうえで、ファーストキャリアの選択をするとしたらぜひ皆さんには「企業に根付いているもの」を見てほしいと思います。
給与や福利厚生、労働時間ももちろん重要ですが、これらは社会の変化によって大きく変動する可能性がある不確定要素。そうではなく、企業の持つ遺伝子として受け継がれるもの、変わる可能性の少ないものを見てください。たとえば成果を出した人にきちんと仕事とポジションを渡すのか、提案が事業に反映されるのか、などですね。

どこで働くのかではなく、自分は将来どのような力を身に付けたいのか、どのようなキャリアを描いていくのかを始点にし、そのために必要な経験が得られるかどうかを決め手にすると良いでしょう。それこそが、「人生を運任せにしない」ということです。
とは言っても、正直なところ「就活がうまくいこうがいくまいが人生はそこまで変わらない」というのが本音です。大切なのはどこに入社するかでなく、入社後に何をするのか。並べた条件を照らし合わせて「これが理想だ!」と思える企業に入社したとしても、その後何が起きるかは誰にもわかりません。倒産してしまったり、自分の体力が削られて働けなくなったり、出世できても全然幸せじゃない、というのはよくあることです。
なので、ファーストキャリアにこだわりすぎず最低限「ここは絶対に違う」というところさえ選ばなければ良いのではないでしょうか。就活においては肩肘張りすぎず、それくらいフラットな気持ちで臨んでも良いと思います。
就活の時点で全力を出しすぎて燃え尽きてしまっては本末転倒です。内定をゴールにせず、あくまで「その先のキャリアで何をするか」を大切にしてください。皆さんには本当に多くの可能性と選択肢があります。どのような企業に行っても後悔のない選択はできるはず。実りのある、心から楽しいと思えるキャリアを描いていけることを祈っています。

取材・執筆:瀧ヶ平史織
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