ファーストキャリアはともに未来を描ける「人」を選べ|専門性を培う土壌は“吸収の20代”でつくる

GameWith 取締役(人事部門管掌、コーポレート部門管掌) 日吉 秀行さん

GameWith 取締役(人事部門管掌、コーポレート部門管掌) 日吉 秀行さん

大学卒業後、さまざまなジャンルの飲食店を手がける外食グループの大庄に入社し、本社勤務として情報システム管理や総務、経理財務、各種プロジェクト推進など多岐に渡る職種で事業の基盤にかかわる仕事に17年間携わる。2015年に人材サービスを提供するウィルグループに入社し、2018年にはGameWithへ。2020年にはグループ会社であるアットウィキ、2021年にはGameWith NFTの代表取締役社長を務め、 これまでの経験を活かしてGameWithの法務部長や財務経理部長なども兼任したのち、現職では人事部門およびコーポレート部門の取締役兼執行役員兼人材採用部長、総務部長を務めている

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「人を大切にする」。企業のあり方を知った20代

幼少期から「経営」に興味があった。こう言うと驚く人もいるかもしれません。というのも、実家の両親が日本料理店を営んでいて、お客さまのなかには会社を経営する社長や事業に携わる方々が多かったという背景があります。

食事をしながらあれやこれやと熱っぽく仕事の話をする、そんな姿を見ているうちに、子どもながらに「ビジネスって面白いんだ」と思うようになりました。幼少期からずっと経営者という存在を身近に感じているうちに、「自分も事業にかかわってみたい」という思いがいつしか芽生えていったのは、自然なことだったのかもしれません。

この熱は歳を重ねても冷めることはなく、大学は経営学部で学び、経営や労働におけるコミュニケーション、マーケティング、消費者心理などを本格的に勉強しました。

就職活動のときも思いは変わらず、事業にかかわる仕事がしたいと思っていました。「経営」という側面だけなら実家の店を継ぐという選択肢もありましたが、もっと広い世界にも目を向けてみたかったんです。そこで、なじみ深い飲食関連で事業にかかわれそうな、酒場やカフェなど多ジャンルの店を手広く展開している外食業界の企業に進むことにしました。

周囲には「あえての外食業界⁉」と驚かれもしましたが(笑)、会社の企業理念や社長の考え方、そしてお客様に対する考え方に惹かれたのが決め手でした。その企業では、将来的に自分で店を持ちたい人に対して独立開業を支援する制度を導入して、社員の意向を尊重しながらやりたいことを後押しする風土が醸成されていたんですね。

たとえば、入社して初めての配属先はなんと本社でした。一般的に、外食業界に入ったらまずは店頭に立って現場を知ることから始まります。希望の配属先は事業に携われるポジションでしたが、まずは現場だと考えていたので、「事業にかかわりたい」という私の思いを汲んでくれたことには感謝し切れません。また、アメリカで複数飲食店を展開し活躍する日本人経営者の元へ渡米させて頂いたことも忘れることは出来ません。

在籍していた17年で、情報システム部門からスタートして、経理財務、総務といったジョブローテーションを経験し、事業の根幹部分をさまざまな立場から多角的に学びました。

さらにこの会社の良いところは、お客さまファーストの接客方針が定まっていたこと。従業員一人ひとりとの向き合い方からもわかるように、「人を大切にする」という社長の考えが企業のあり方に浸透していて、“人を大切にする”とはどういうことかを一社目で見て、自らの内に養うことができました

日吉さんのキャリアストーリー

「良い会社」の正解はない。素直であることが未来を拓く

GameWith 取締役(人事部門管掌、コーポレート部門管掌) 日吉 秀行さん

そうして新卒で入った会社に17年間勤めたあと、転職という道を選びました。それは、最初の会社で自分ができることはほぼやり尽くしたと感じ、違う環境で、違う仕事をしてみたいと思ったからです。業界をまたいで仕事を探し、新天地として選んだのは人材サービスを提供する会社でした。

事業内容などももちろん見たうえでの判断でしたが、「この会社で働こう」と決断するに至る一番の決め手となったのは、一社目と同様に「人」です。社長の考え方には深く共感できたし、何より人柄に惹かれたんですね。

そうして自ら望んで飛び込んだ新天地でしたが、いざ入社すると最初は仕事のやり方などで戸惑うこともあり……なにせ17年という長い期間、一つの企業に勤めていたのです。当たり前ですが、その会社ならではの独自のルールやカラーがあること、そしてそのどれもが前職とは違うということを感じるたびに新鮮な気持ちで、刺激を受けました。

これらの経験があって今思うのは、必ずしも一つの場所で長く働くことが正解ではないということ。

振り返れば、新卒で入った一社目では職種を横断して数々の挑戦ができて、とても恵まれた環境でした。あのときの経験が私のキャリアの土台をつくってくれたことは間違いありません。これは私にとっての「正解の一つ」です。でも、たとえ早期に転職していたとしても、その道にはその道ならではの学べることがあったはずで、仕事選びに「絶対の正解」はないのだと思います。

バックオフィスという仕事柄いろいろな人とかかわる機会があって思うのは、優秀であればあるほど、自分の中で「正解」を求めたり決めつけたりする傾向があること。でもそうなると視野は狭くなりがちで、自分のやり方に固執すればするほど、成長スピードは遅くなってしまいます。

新しい環境に適応しつつ活躍するためには、素直でいること、目の前のことを受け入れて吸収することが重要。それが、私が転職で学んだことの一つです。

新しい環境に飛び込むといった観点では、就活生のみなさんにも同じことがいえると思います。たとえば、新しい環境になかなか慣れないとき。まずはその会社で脈々と伝わる歴史、文化から独自のルールやカラーが形成されると理解し、一度受け入れ、吸収することが重要です。受け入れたうえでお互いのためにブラッシュアップできそうなところがあれば、提案して改善していくというアプローチをしてみましょう。

重要なのは、先人のやってきたことを否定するのではなく尊重すること。そこからより良いものを作り出そうとすることが、新しい環境で健全な関係性を築いていく秘訣なのかなと思いますね。

日吉さんからのメッセージ

ファーストキャリアのすすめ「会社は人で選んできた」

二社目を3年ほど勤めたのち、ご縁があってGameWithへ。辞めるつもりはなかったのですが、お世話になっている方から紹介してもらったGameWithのビジネスモデルや将来性に深く興味を持ちました。さらに代表の今泉卓也氏と話したこともきっかけになりました。

出会った当時、今泉氏はまだ20代の若い社長でした。当時の東証マザーズに上場した企業の中で最年少の経営者で、実際に話した際にそのフランクな人柄に惹かれたのと、「この人には先見の明がある」と直感的に感じたんですね。話せば話すほどその人柄に惹きこまれていって、最終的には「この人についていこう」と一緒に仕事をすることを決めました

一社目も二社目も三社目も、常に「人」を軸にして選んできました。企業の知名度や条件の良さといった一般的な判断基準よりも先に、その会社に心から惹かれた「その人」がいたから選んできた。振り返ってみて、深くそう感じています。

こうした経験があるからこそ、ファーストキャリアを選ぶうえでは、会社を人で選ぶという選択肢もあるよ、ということを就活生のみなさんに伝えたいですね。とくに、社長が人を大切にしているかどうかはじっくりと見極めたほうが良いポイントです。

ここでいう「人」を誰のことを指すかというのは、お客様や取引先や全てのステークホルダーはもちろんですが、その会社に入ろうとしている「あなた」のことでもあります。

そして、あなたのことを大切にしたいという意思があるかどうかは、会って話せば大体わかります。話を聞きにきたあなたを、ただの労働力としか見ていない様子が伝わってきたら、その人が、ひいてはその会社が「人」を大切にしているとはいえません。

反対に、「この人は、この会社は自分の未来のことも考えてくれているな」と感じられたら、それは人を大切にする会社だと思います。本当に人を大切にしている人が見ているのは、目先のことではなく、ともに歩んでいった先の、何年後かに自社で活躍するあなたの未来の姿です。その姿を描いているか、いないかで人を大切にしているかを見極めることができます。

日吉さんの企業選びの判断軸

もちろん、どんな会社でも社長に会って話すことができるわけではありませんよね。ただ、これは一つひとつの面接でもいえる話です。

面接官の態度から、「目の前にいる就活生が、3年後、5年後に自社でどのように活躍できそうか」「どのような人物に育てられそうか」「数年後までにどのくらいのポジションまで持っていきたいか」と、真摯に考えてくれていることが伝わってくるかどうか。この点に着目して会社を選ぶのも一つの選択肢だと思います。

日吉さんからのメッセージ-1

「ここで自分はなにができるだろう」と未来を見る

もし自分の可能性を最大限活かせる会社に出会いたいのなら、「社長が人を大切にしているか」という点に加え、「この会社で自分はなにをやらせてもらえるんだろう」という点にもフォーカスすることをおすすめします。

これはつまり、「この会社に入ったらどんなことを経験させてもらえそうか」を“具体的にイメージできる場所”を選んでみてほしいということです。うまくイメージができない環境に飛び込んでしまうと、想定とは違ったことを任されたりして、結果的に考えていた通りの成長曲線は描けないかもしれません。そもそも企業研究を進めてもうまくイメージできないなら、その環境がマッチしているとは言いづらいですよね。

入社後にこんな仕事を任せてもらえそうで、それなら自分の可能性を伸ばしていくことができるかもしれない──詳細にそう感じ取れる環境に出会えたなら、それはあなたにマッチしている環境といえるでしょう。

プラスアルファで、会社がやっている事業の将来的な市場価値も見ておくと安泰です。良くも悪くも、身を置く環境は自身の成長スピードや将来性に大きな影響を与えます。今後も価値は高まり、伸びていく事業なのか? という視点はぜひ持ってみてください。

経験上、新しい分野の原石に目を向けてそれを磨いているような人、先見の明があると感じる人と一緒に働くと、学べることはとても多いですよ。

企業を見極める際に着目するポイント

20代の土壌づくりは「アンテナを張ること」と「吸収すること」

私はこれまで、一社目は外食業界、二社目は人材業界、そして現職はゲーム業界と、ジャンルの違う世界を渡り歩いてきました。その意思決定には、実家が日本料理屋を経営していたことや、労働コミュニケーションやビジネスに興味があること、ゲームが好きなことなどの背景が少なからず影響しています。

自分の経験から言えるのは、仕事ではある程度自分が興味を持っているものとかかわることが大事だということです。業界に入ればその業界や扱っているテーマについて話すことが日常茶飯事で、やはり興味がないとモチベ-ションを維持できません。

「『好き』を仕事にしなさい」とまでは言いませんが、どこかのポイントを面白いと思えたり、楽しめる要素がある仕事を選ぶことは、結果的にマッチ度の高い選択につながるはずです。

とはいえ、若手のうちはあまりこだわらず、まずは目の前の世界に飛び込んでみることも同じくらい大切なのは間違いありません。そもそも多くのことを知らないと、自分に向いていることややりたいことを見極め、専門性を育むことは難しいですから。

チャンスが来たらいつでも飛び込めるようにするためにも、アンテナは常に張っておきましょう。幼少期に実家の店でビジネスの世界を見聞きした経験が、自分のキャリア選択に影響を与えたように、日常のなんてことない会話やふとした瞬間に物事の「きっかけ」があります。それを逃さないことが望む未来を手繰り寄せることになりますし、そうした感度を高く持つ姿勢は、あなた自身の視野を広げ、人としての成長を促すことにもつながりますよ。

将来的に活躍するための20代の土壌づくり

就活生の皆さんに伝えたいことがもう一つ。新卒や第二新卒といったフレッシュな若手に求められているのは、とにかく目の前の仕事に夢中で取り組み、吸収することです。たとえば、入社1年目ならまずは会社のカルチャーを知って、受け入れて、理解しましょう。そのうえで業務に取り組んで新しいことを素直に吸収できると、今後の活躍の幅が広がります。

まだ社会人として入り口に立ったばかりの時期に焦る必要はありません。アンテナを張って常に新しい挑戦をし続け、素直に吸収できる柔軟さを武器に今後も歩んでいってください。

日吉さんが贈るキャリア指針

取材:小林駿平
執筆:青木南凪子

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