主体性と責任感が成長を後押しする|自分軸を貫くキャリアを

NEWONE 代表取締役社長 上林 周平さん
Shuhei Kambayashi・大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、シェイクで企業研修事業の立ち上げに携わり、2015年に同社の代表取締役に就任。2017年、NEWONEを設立。米国CCE.Inc.認定。キャリアカウンセラー
人生の岐路を前に「自分らしい生き方」を振り返った大学時代
学生時代は部活三昧。テニスに打ち込んでおり、大学でも体育会系のサークルで汗を流していました。しかし就職活動が近づいてくるにつれて芽生えたのは、「このままではいけない」という思い。
当時、私の大学では体育会系サークルの縦のつながりが強く、すでに卒業したOBがリクルーターとして後輩を自社に就職させるようなルートが主流でした。保険、証券、銀行などのOBが多く、体育会系サークルにいる限り自由に就職活動ができないと感じました。
そこで、就職活動を開始するより前の時点でサークルを辞めて、自分は何をしたいのか問い直しました。これまでの経験を振り返ると、自分らしい軸を持って生きたいと思ったからこそ人間科学部という学部を選んだことや、同窓会や交流会等のイベントを企画・運営したり、海外へバックパッカー旅行をしたりと、人と触れ合い、人を輝かせることが好きなのだということを改めて自覚しました。
「人を輝かせたい」という軸は社会人になった今もブレておらず、人材や教育分野でよりたくさんの人が自分らしく輝けるよう追求し続けています。このように自分らしさを追求して大切にすべき軸を持つことができれば、その後どんなキャリアを歩んだとしても納得して進んでいけると感じています。
就職活動は「成長した自分」に出会う最初のチャンス
自分らしいキャリアを求めて、就職活動には意気揚々と臨みました。就職活動は自分を見つめ直し成長できる、またとないビッグチャンスだと思います。自分と向き合う時間や、業界を問わず足を運んで人に会ったり実際に働く現場を見たりする機会は、意図的に作らない限りそうそうありません。この2つを並行させながら、人として成長する機会ととらえることができますよね。
また、就職活動を通して自分と社会を見つめて行き来するなかでは、自然にPDCAを回すことになります。
自分がやりたいことを定めて(Plan)、そのために情報収集や選考等を通して企業や人に向き合い(Do)、さらに自分や行動を見つめ直し(Check)、改めて挑戦する(Action)。
この繰り返しのなかで、たくさんの就活生が社会人として成長していきます。ぜひこのチャンスを逃さず、就職活動を通じて一歩大きくなった自分に出会ってください。

主体的な行動が何よりも成長曲線を押し上げる
私の就職活動は、ちょうど就職氷河期と言われる時期。そのようななかで先輩リクルーターのツテで入社する選択は取らず、自分らしさを追求し就職活動をした結果、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社することになりました。
本当は人材・教育系の企業を目指していたのですが、私が就職活動をした年は人材業界の大手企業でさえも採用がありませんでした。とにかく成長して、近い将来自分のやりたいことができるようになろうと、「3年在籍すれば10年分成長できる」と謳ったアンダーセンで働き始めました。
アンダーセンでクライアントの課題を解決していくのは非常に面白く、ハードなものの楽しい日々でした。私は若手主体のプロジェクトにかかわることが多く、チームのなかでさまざまな役割を任せてもらえました。そういった環境だったからこそ、自分から主体的にかかわっていくことができたと思います。
共に働く仲間もとても優秀で、学ぶことが多くありました。まさに「3年いれば10年分」を体現するような経験ばかりでしたね。
その頃の経験から学んだのは、同じようなプロジェクトにかかわったとしても、主体性のあるなしで成長スピードはまったく違うということ。「自分がやらないといけない、自分だからできる、自分だったらこうする」という自ら立ち向かう姿勢を学び、それによって大きく力を伸ばしてプロ意識を持てるようになりました。仕事の大小やポジションに一喜一憂せず、どんな仕事・どんな役職でも、主体性を育むことが成長への近道です。

主体性はこれからの時代、ますます重要になってくると思います。なぜなら、言われたことをやるだけならAI(人工知能)で事足りてしまうからです。
人間にしかできないことといえば、自分から何かをやろうとする、自発的に課題を見つける、みんなの前に立って動き出すということ。今以上を求めて探求したり、成長を求めたりするのも人間だからです。だからこそ自ら湧いてくる気持ちや、誰かに任せずにやり切りたいという思いを大切にしてください。
「幸せ」は自分の軸を曲げないキャリアにある
自律的にプロジェクトにかかわり、手応えを感じながらコンサルティングの仕事を続ける一方で、心の奥底には「人事や教育の仕事をしてみたい」という気持ちが変わらずにありました。しかし会社からは昇格を打診されていて、このままITや業務改革のスペシャリストとして成長していく道を歩むのだろうと思っていました。
そんなとき、起業した先輩から「一緒に事業をやらないか」と声をかけてもらいました。ちょうど教育系の事業を手掛けようとしているところで、渡りに船だと感じました。もちろん人事教育系の仕事なんてまるで経験もなく、新しく参画するその企業はまだまだ小さな会社。実際入社すると2倍以上働いて、給料は半分でした(笑)。それでもやりがいや楽しさ、充実感は大きかったです。ずっとやりたいと思っていることを、自らの手でやっているうれしさがありました。
自分の軸がしっかりと見えていれば、どんなときも決断しやすく、モチベーションが高い状態で働けます。私自身も客観的に見たら「小さな会社で給料も下がってしまって大変そう」と思われる状態だったと思いますが、本当に幸せに働くことができました。
どんな観点でもかまいません。これだけは譲れないという自分の軸を持ってキャリアを歩んでいけば、きっと充実した仕事ができるはずです。
役割が人を作り、責任が成長をうながす

先輩に誘われて入った会社では、自分も上に立って組織を大きくしていき、最終的には副社長にまでなりました。新卒を何名も採用し、「もう言い訳はできない、しっかりと事業を作り上げなければ」と決意したことを覚えています。
その後起業し、今度は自分が代表になったわけですが、さらに大きな責任を負ったことを感じました。代表になると、良いこともそうでないことも、すべてが「自分ごと」になります。とはいえその覚悟を決めたくて独立したような部分もあったので、身の引き締まる感じがして逆境すら心地良かったですね。

学生であっても、一度この感じを体験していると強いと思います。責任のある立場や、外部と接する役割、リーダーとして前に立つといった経験です。自分はまだ未熟だと二の足を踏まず、ぜひチャレンジしてみましょう。役割が人を作ります。
責任を負うからこそ、それに見合う人間へと成長するのです。覚悟を決めて、一歩だけ前に出ることから成長が始まります。
自分の背中を押すのは自分自身。肯定することで前を向こう
「どうしても一歩が踏み出せない」「なかなか自信が持てない」という人もいると思います。でも、もしあなたが友人からそんな相談を受けたら、なんと答えるか考えてみてください。「きっとできるよ」と背中を押してあげるのではないでしょうか。
それと同じように、自分が自分の友人になって、「大丈夫、できるよ、応援する」と言ってあげれば良いのです。

自分を褒めるのは難しいですよね。ついつい足りないことばかり気になって、自信を失ってしまうこともあると思います。それでもいくつかは、できたことがあるはず。相手を認めるように、自分を認め信じてみましょう。それが自己肯定となり、自分で自分をエンパワメントできるようになります。
いつか成長していく自分と未来を思いっきり信じて、前を向いて歩き出せると良いですね。

取材・執筆:鈴木満優子