目次
- 繊維以外も注力! 繊維業界の特徴を理解して就活を始めよう
- まずは繊維業界の仕組みについて理解しよう
- 繊維業界は繊維の製造から消費者への製品販売までの広範囲の業界
- 繊維業界のビジネスモデル
- 近年は製造から販売までを手がけるSPAが主流
- 繊維業界の現状と将来性
- 現状①衣料用繊維は新興国からの輸入が増えて市場は縮小
- 現状②高性能製品向けの産業用繊維に注力
- 将来性①培った技術力をもとに非繊維事業や医療分野に活路を見出す
- 将来性②脱炭素も繊維業界にとってはビジネスチャンス
- 繊維業界の5つの職種
- ①商品開発
- ②営業
- ③研究開発
- ④生産
- ⑤購買
- 繊維業界で求められるスキル
- 既存のやり方に捉われない柔軟な発想
- 流行に敏感に反応できるアンテナの高さ
- 海外でも活躍できる語学力
- 繊維業界に向いている人の特徴
- 新しい素材に関心がある人
- 自分の企画したものを世の中に生み出したい人
- グローバルな視点を持って活躍したい人
- 繊維業界のTOP企業
- 素材メーカー①東レ
- 素材メーカー②帝人
- 素材メーカー③旭化成
- アパレル①ファーストリテイリング
- アパレル②しまむら
- 繊維商社①東レインターナショナル
- 繊維商社②ワールド
- 繊維商社③帝人フロンティア
- 繊維業界の選考で差をつけるポイント
- 自己PRは柔軟性を発揮したエピソードを伝える
- 語学力の高さをアピールする
- その企業独自のビジョンや方向性を踏まえた志望動機にする
- 繊維業界の志望動機で盛り込むべきポイント
- ①なぜ繊維業界なのか
- ②繊維業界の中でもなぜその企業なのか
- ③入社後にどのように貢献したいか
- 繊維業界の特徴を理解して就活を成功させよう
繊維以外も注力! 繊維業界の特徴を理解して就活を始めよう
こんにちは。キャリアアドバイザーの北原です。
「繊維業界について詳しく知りたいです」
「繊維業界の将来性について気になるのですがどうなのでしょうか?」
よく学生からこのような質問をされますが、普段は繊維業界がどのような業界か知る機会は多くないでしょう。実は私たちが毎日身にまとう衣料品は、繊維業界が製造する繊維を用いて作られているため、繊維業界は私たちの生活を支える必要不可欠な存在と言えます。
この記事では、繊維業界の仕組みや将来性、仕事内容などについて詳しく紹介していきます。繊維業界と言っても、繊維以外の分野にも力を入れる企業もあるので、深い企業研究が欠かせません。特徴をよく理解したうえで対策し、繊維業界への就活を成功させましょう。
まずは繊維業界の仕組みについて理解しよう
繊維業界の研究を進めていくために、業界の仕組みについて解説していきます。
その前に、繊維の種類について確認しておきましょう。繊維とひと口に言っても、すべての繊維が同じように生み出されるわけではありません。
- 天然繊維
自然に繊維として存在するものを利用する。綿、麻、絹、羊毛など。 - 化学繊維
金属や石油、植物性の原料などを化学的に加工して作り出す。ポリエステル、レーヨンなど。
繊維業界では、製造したこれらの繊維を用いて糸や生地を作り、販売をおこなっています。これを踏まえて、繊維業界の仕組みを詳しく見ていきましょう。
繊維業界は繊維の製造から消費者への製品販売までの広範囲の業界
繊維業界と言ったとき、具体的に何をしている企業を指すのかわからないという人もいるでしょう。
繊維業界では、まず紡糸・紡績・製織などの工程を経て糸や生地の製造をおこないます。その糸や生地は縫製されて、衣料品として完成します。そして衣料品は私たち消費者に向けて販売されます。この記事では、ここまでの工程に関わる企業を繊維業界の企業として考えます。
繊維業界は、アパレル関係のメーカーや小売業界の企業まで含めた、広い範囲のさまざまな分野を手がける業界だと言えるでしょう。
繊維業界のビジネスモデル
繊維業界のビジネスモデルについて、もう少し深掘りしてみましょう。先ほど繊維業界は広範囲の業界だと述べましたが、それを図式化してみました。
これから、素材産業、アパレル産業、流通産業のそれぞれの段階について説明します。しっかり読んでビジネスモデルを把握してくださいね。
素材産業
繊維業界と聞くと、素材産業として示している部分をイメージする人が多いのではないでしょうか。素材産業の手がける分野は、繊維を用いて糸や生地を作り出すことです。
- 紡糸:ポリエステルなどの化学繊維を作る工程。原料を糸状に加工する。
- 製糸:絹の糸を作る工程。カイコの繭から生糸を作る。
- 紡績:綿、麻、羊毛などから糸を作る工程。繊維によりをかけて長い糸を作る。
- 製織:縦糸と横糸で織物を作ること。
アパレル産業
上の図で2番目の段階にあるアパレル産業のメーカーが担う分野は、素材産業の企業から仕入れた糸や生地を縫製して衣料品として完成させることです。
仕入れは素材産業の企業から直接おこなうこともあれば、繊維商社や糸商、生地商を通しておこなうこともあります。
流通産業
流通産業は、完成した衣料品が消費者のもとに届くまでを担います。
アパレル産業のメーカーが製造した衣料品は、多くの場合は卸売業者を介して小売業者へと販売されます。そして、小売業者が百貨店や専門店などの店舗にて消費者に向けての販売をおこないます。
近年は製造から販売までを手がけるSPAが主流
すでに少し触れましたが、近年では商品の製造から消費者への販売までを手がける、SPAと呼ばれる業態が主流になってきています。
SPAとは「Specialty store retailer of Private label Apparel」の略称で、日本語では製造小売業と言われます。先ほどの図で考えると、繊維業界には素材産業から流通産業までのすべてを担う企業があるということです。また、糸や生地は素材産業に特化した繊維業界の企業から仕入れ、アパレル産業と流通産業の部分だけを手がけるSPA企業もあります。
ユニクロやワールドがその代表
繊維業界におけるSPA企業の代表としては、ユニクロやワールドが挙げられるでしょう。
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、縫製をおこなうアパレル産業から消費者への販売をおこなう流通産業までを手がける大手企業です。直営の店舗が全国各地、世界各国に存在するので有名ですね。
ワールドもファーストリテイリングと同様、縫製から販売までをおこなっています。ワールドという名前よりも、運営しているたくさんのブランドの名前を知っているという人も多いでしょう。
繊維業界の現状と将来性
ここまで、繊維業界の仕組みについて解説してきました。衣料品に関係することを中心にお伝えしましたが、繊維業界の中には産業用繊維や非繊維事業に力を入れる企業も多くあります。
製造や販売など広範囲のビジネスを手がけ、事業の幅も広い繊維業界に就職するためには、深い業界研究が必要です。これから繊維業界全体としての現状と将来性についてお伝えしますので、ぜひ分析に役立ててくださいね。
現状①衣料用繊維は新興国からの輸入が増えて市場は縮小
中国の繊維業界の成長はめざましく、日本やヨーロッパ諸国などに向けて安価な衣料用繊維を大量に輸出しています。これに加え、日本は東南アジアの新興国からも衣料用繊維を輸入しており、国内市場の縮小は続いていくと見られています。
この傾向を踏まえて、日本の繊維業界では衣料用繊維以外の分野へ注力するよう方針を変えていく動きが出てきています。
現状②高性能製品向けの産業用繊維に注力
衣料用繊維ではない繊維として、高性能製品向けの産業用繊維に力を入れる企業が増えてきました。
たとえば、航空機や自動車の材料などとして使用される炭素繊維や、警察や自衛隊の着用する防弾ベストなどに使用されるアラミド繊維といった産業用繊維が挙げられます。これらの繊維は高性能製品向けであるため価値が高く、国内だけでなく世界に輸出をおこなっています。
将来性①培った技術力をもとに非繊維事業や医療分野に活路を見出す
これまで、日本の繊維業界の生み出す製品は品質が高いと評価されてきました。これからは、この繊維の製造で培った技術力をもとに、非繊維事業や医療分野に活路を見出す企業が出てくるでしょう。
衣料用繊維の市場が縮小し、新興国の繊維メーカーが力をつけている今、日本の繊維業界は方針転換せざるを得ません。その例として、化学繊維の製造技術を活かし、光化学フィルムや樹脂といった非繊維製品の製造にシフトする企業があります。また、マスクなどの医療用品に使用される不織布の開発に注力する企業も増えています。
将来性②脱炭素も繊維業界にとってはビジネスチャンス
世界に広がる脱炭素の動きも、繊維業界にとってはビジネスチャンスになっていくでしょう。
脱炭素、つまり二酸化炭素の排出を削減するための取り組みは数多くあります。その中で、炭素繊維が大きく役立つのではないかと注目されています。たとえば、耐久性の良い炭素繊維を使用した自動車や建築物、産業機械などは長持ちするため、廃棄物の削減につながります。また、東レは炭素繊維のリサイクル技術の開発も始めています。
脱炭素に向けた取り組みで重要な役割を果たすであろう炭素繊維は、これから需要が高まると考えられます。
キャリアアドバイザーコメント根岸 佑莉子プロフィールをみる
SDGsという言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。環境改善や不平等をなくすなど国際的に掲げられている「持続可能な開発目標」のことですね。今紹介した脱炭素もこの取り組みの一環です。繊維業界は持続可能な事業としての移行が求められているため、開発目標の達成をすべく業界の課題へかかわることもできるのです。
脱炭素に加えてファッションロスゼロも繊維業界では課題として掲げられており、東レなどの大手企業を中心に解決に向けて動いています。具体的には、「次世代素材や新技術の活用」や『「不要となった衣料品を資源として活かす」ことが文化として定着』などがゴールとして掲げられています。
今説明したとおり現状の繊維業界は、業界として環境へ配慮した新しい文化を作っていく段階に立っています。企業内にとどまらず業界へ貢献し、変化を体感できることはやりがいを多く感じられるため魅力的ですね。
繊維業界の5つの職種
就活生
繊維業界の特徴がだんだんわかってきました。就職したらどのような仕事があるのでしょうか?
キャリア
アドバイザー
新しい製品や技術を開発し生産する技術系の仕事、必要な素材などの買い付けをおこなう購買の仕事、企業に製品を販売する営業の仕事などさまざまな仕事があります。
これから代表的な5つの職種について紹介するので、仕事内容をイメージしてみましょう。もちろん、SAP企業であるかどうかや、企業の規模などによって異なる部分もあるはずです。自分の志望する企業についてはそれぞれ確認してくださいね。
①商品開発
- 商品開発:新しい商品について案を出し、開発する仕事
衣料用繊維を利用するアパレル産業のメーカーや、産業用繊維を求める自動車メーカーなどの企業と連携し、必要とされる商品を開発します。一般の消費者への販売をおこなう企業の場合は、店舗でのニーズの調査なども必要になるでしょう。
キャリア
アドバイザー
世の中の動きを捉えながら、積極的に自分の考えを出せる人に向いている仕事だと言えます。
②営業
- 営業:自社の製品をメーカー企業や流通産業の企業に向けて売り込む
事務系の職種ではありますが、製品について自分が詳しく知り、市場の動向をおさえたうえで顧客となる企業に紹介しなければなりません。また、顧客との会話から得られたニーズなどの情報を開発職の社員と共有するのも営業の役目となります。ときには海外の顧客とのやり取りもありますから、英語力が求められるでしょう。
キャリア
アドバイザー
プレゼンテーションや交渉が円滑にできるコミュニケーション能力を持っていると高く評価されそうですね。
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③研究開発
- 研究開発:製品に関わる技術の開発や、品質・性能のチェック、実験・分析といった研究をおこなう
製品をより良いものにするためには、研究開発が欠かせません。新しい技術を用いて効率化を図ったり、製品の品質を向上させたりと改善を重ねることが、繊維業界の技術力の高さへの信頼を生み出しています。
キャリア
アドバイザー
冷静にコツコツと努力できる人、また新しい技術の開発に挑戦できる柔軟な人に向いているでしょう。
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④生産
- 生産:その名の通り製品の生産をおこなう
工場では、納期を守って正確に製品を生産していかなければなりません。このため、生産の仕事の中には生産管理が含まれます。製造のスケジュールを組み立て、生産ミスや製造の遅れが出たときには適切な対応をする必要があります。
キャリア
アドバイザー
その場の状況に合わせて臨機応変に行動できる力を持つ人が活躍できそうな仕事ですね。
⑤購買
- 購買:製品を作るのに必要な素材などを仕入れる
工場での生産をおこなうには材料が必要です。購買を担当する社員は、仕入れ先の企業から材料を予算内の価格かつ適切なタイミングで手に入れられるよう調整します。材料だけでなく、生産に必要な機械などの設備の購入も担当するため、責任の大きな仕事と言えます。
キャリア
アドバイザー
相手に自社の要望を伝えられる交渉力、予算やスケジュールなどを広い視野で把握できる力が必要でしょう。
繊維業界で求められるスキル
繊維業界で自分はどのような仕事をしてみたいか、イメージができてきたという人もいるでしょう。ここからは、繊維業界で求められるスキルについて紹介していきます。
自分に当てはまるスキルがあったら、就活中に積極的にアピールすると良いでしょう。繊維業界を志望するか悩んでいるという人も、自分の強みや特技を活かすことのできる業界かどうか、しっかり考えてみてください。
既存のやり方に捉われない柔軟な発想
新興国が衣料用繊維の分野で力をつけたことで、日本の繊維業界が産業用繊維や非繊維事業への転換を迫られている今、新たなことを思いついてチャレンジできる人材は重宝されそうです。また、製品を改良していくにも、今までにない技術を生み出して活かしていくことが不可欠です。
豊かな発想力があること、それを実行に移すチャレンジ精神があることが求められるでしょう。
流行に敏感に反応できるアンテナの高さ
市場の動き、顧客となる企業や一般の消費者のニーズなどをいち早く把握して、商品開発や営業に役立てることができる人は高く評価されるでしょう。衣料用繊維ならばファッションのトレンド、産業用繊維ならば関連する時事ニュースなど、ポイントをおさえた情報収集をするのも良いですね。
常に世の中の動きにアンテナを張って、仕事に活かすことができるよう努力してください。
海外でも活躍できる語学力
繊維業界が注力している炭素繊維などの産業用繊維は、海外への輸出がとても多い製品です。海外の企業とのかかわりが多いため、コミュニケーションには英語が必要になります。企業によっては海外に駐在して働くことも考えられるため、学生のうちに英語力を身につけておくと良いでしょう。
TOEICやTOEFLなど、英語のスキルの証明として資格を取得するのもおすすめです。
英語力のアピール方法はこちらで解説しています。
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繊維業界に向いている人の特徴
就活生
繊維業界に就職したいという気持ちが強まってきました。どういう人が繊維業界で働くのに向いているのか気になります。
キャリア
アドバイザー
繊維業界では、産業用繊維の生産や非繊維事業への進出などの動きが活発です。新しいことにチャレンジしたい好奇心旺盛な人に向いていそうですね。
ほかに、繊維業界でグローバル化が進んでいることも鍵になりそうです。繊維業界に向いている人の特徴を3つ紹介しますから、解説を読んで参考にしてくださいね。
新しい素材に関心がある人
繊維業界が取り扱う繊維は、何かの材料、素材です。素材そのものに関心を持ち、新しい素材を生み出そうと想像をふくらませて実行できる人に向いている業界だと言えます。新しい素材の使い方や効率の良い生産方法、改良などをおこなう際にも、素材と真剣に向き合うことが大切になるでしょう。
自分の企画したものを世の中に生み出したい人
先ほど、繊維業界の職種として商品開発、研究開発の仕事を紹介しました。新しい製品や技術を開発し、それが活用される様子を見ることができるのは繊維業界の魅力の1つです。柔軟にたくさんのアイディアを出し、粘り強く挑戦できる人にはぴったりの業界ではないでしょうか。
グローバルな視点を持って活躍したい人
新興国からの輸入が主流になってきている衣料用繊維の分野でも、世界各地の企業に製品を輸出している産業用繊維の分野でも、グローバルな視点は必要不可欠です。世界の市場の動向を見極め、自社の製品の価値を高めるにはどうすれば良いか考えられることが重要です。
高い語学力とともにグローバルな視点を持つ人は活躍を期待されるでしょう。
キャリアアドバイザーコメント酒井 栞里プロフィールをみる
繊維で解決できる「企画を生み出したい気持ち」や「課題意識」を強く持っている人は、入社後に活躍している人が多く3つの特徴の中でも特に大切だと感じています。
繊維業界で取り扱っている商材は生活の三大要素「衣食住」の1つで、皆が利用している製品だからこそ業界の競争は激しくオリジナリティも求められます。そのため「世の中に生み出したい」という想いが弱いと、入社後なかなか成果が出ないときにストレスがかかってしまうのです。ですが、想いが強ければ強いほど粘り強く挑戦し成果が出てきます。
たとえば、アトピー性皮膚炎の人が自らの不の経験を活かして肌に優しい繊維の開発や新製品開発の部署を立ち上げた人もいます。このように自分の想いが原動力になりチャレンジし続けることで成果も出てくるので、採用担当者からは「世の中に生み出したい」という人はプラスの評価になるのです。
この想いが強い人は、エントリーシートや面接の志望動機で前面にアピールをしましょう。
繊維業界のTOP企業
ここまで、繊維業界の業界研究を深めてきました。自分が繊維業界に向いているか、活躍できそうかについても考えられたのではないかと思います。
ここからは、繊維業界でTOP企業とされる8つの企業について、個別に紹介していきます。素材産業に主力を置く素材メーカー、アパレル産業と流通産業のSAP企業に加え、繊維製品を専門に取り扱う繊維商社の3つの業態に分けて解説します。これを参考に、それぞれの特徴を捉えてくださいね。
素材メーカー①東レ
東レは、近年では炭素繊維に強みを持つ企業です。炭素繊維そのものの開発や、軽くて耐久性の良い炭素繊維複合材料の生産をおこない、その製品は世界で使用されています。アメリカのボーイング社の航空機にも、東レの炭素繊維が使用されていることが有名ですね。
東レの製品は炭素繊維だけではありません。東レが設立された1926年から始まる衣料用繊維の生産の歴史は長く、現在も天然繊維・化学繊維の両方を手がけています。また、繊維に関する技術力を活かし、樹脂やフィルムなどの非繊維事業も取り扱うなど幅広く活動しています。
- 企業名:東レ株式会社
- 設立:1926年
- 純利益:458億円(2020年度)
素材メーカー②帝人
帝人は、東レに続く業界シェアを誇る企業です。マテリアル事業とヘルスケア事業の2つの事業の柱を持ち、近年ではIT事業にも力を入れています。
マテリアル事業としては、アラミド繊維や炭素繊維、フィルムに樹脂と広範囲の素材の開発をおこなっています。ヘルスケア事業では、医薬品や人工関節などの医療機器を取り扱っています。
海外拠点も数多くあり、2021年10月にはフランスにて、自動車向け複合材料を生産する工場の稼働が始まっています。今後もグローバルに活動を展開することが予想されます。
- 企業名:帝人株式会社
- 設立:1918年
- 純利益:-67億円(2020年度)
素材メーカー③旭化成
旭化成は、身近なところで言えばサランラップなどの製品が有名ですね。ポリエチレンなどの合成繊維や、キュプラのような再生繊維を開発し、衣料品や医療用品、日用品など広範囲の分野に向けて生産しています。
繊維製品以外にも、東レや帝人と同じく樹脂やフィルム、センサー機器などの製品でも力を見せており、多角的な事業経営が特徴と言えるでしょう。事業分野はマテリアル領域、ヘルスケア領域、住宅領域の3つに分かれています。
素材メーカーへの就職を考えている方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみましょう。
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- 企業名:旭化成株式会社
- 設立:1931年
- 純利益:798億円(2020年度)
アパレル①ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、ユニクロやジーユーといった店舗を運営している企業です。誰もが一度は訪れたことがあると言っても良い、独自製品を安価で提供するブランドですね。
素材としての繊維製品の開発は、他社との共同でおこなっています。たとえば断熱効果の高いヒートテックは、東レと共同開発した高機能素材です。このように考えると、ファーストリテイリングは素材産業から流通産業までを一気通貫でおこなうSAP企業と捉えることができます。企業研究をする際は、商品開発から店舗経営まで幅広く扱う企業であることを念頭に置くと良いでしょう。
- 企業名:株式会社ファーストリテイリング
- 設立:1963年
- 純利益:1,698億円(2020年度)
アパレル②しまむら
しまむらは、企業名と同じ名前を持つファッションセンターしまむらなどの衣料品や日用雑貨を扱う店舗を運営する企業です。店舗は日本各地に加えて台湾にも存在し、安価で高品質な商品を提供しています。
素材にこだわった商品開発に力を入れており、プライベートブランドを複数展開しています。仕入れの際にはメーカーとの密なコミュニケーションが必要ですから、交渉力がある人が力を発揮できそうですね。
- 企業名:株式会社しまむら
- 設立:1953年
- 純利益:262億円(2020年度)
繊維商社①東レインターナショナル
東レインターナショナルは、東レの100%子会社である繊維商社です。
東レインターナショナルが取り扱う商品は、親会社である東レが製造している製品をはじめとした繊維製品や樹脂、フィルム、医療用品などです。国内外へ商品を販売する東レグループにおいて、商事部門を一手に引き受けています。海外拠点は世界各地に広がっており、グローバルに活動の舞台があるでしょう。
- 企業名:東レインターナショナル株式会社
- 設立:1986年
- 純利益:東レに連結
繊維商社②ワールド
ワールドは、数多くのアパレルブランドを保有し、主に百貨店などで店舗を展開していることで知られます。
製品の生産は、ワールドの子会社が素材となる糸や生地を仕入れ、自社工場にておこなっています。また、ワールドには製品を小売業界の企業へ卸売する卸売業者としての側面もあります。SAP企業として、生産から販売までをおこなう企業ということですね。
コロナ流行の影響で百貨店の営業が停止した時期もあり、現在は苦境に立たされています。今後の動向に注目したいところです。
- 企業名:株式会社ワールド
- 設立:1959年
- 純利益:-171億円(2020年度)
繊維商社③帝人フロンティア
帝人フロンティアは、帝人系の繊維商社です。素材としての繊維製品や衣料品、樹脂、フィルムなどの商品の販売をおこなうことが主要な事業です。
帝人フロンティアにはメーカーとしての役割もあります。市場の動向や顧客のニーズといった情報を商事活動を通して入手し、それを反映した研究開発をおこなうことを強みとしています。海外進出を強める帝人と同じく、帝人フロンティアも複数の海外拠点を持っています。
- 企業名:帝人フロンティア株式会社
- 設立:2012年
- 純利益:帝人に連結
繊維業界の選考で差をつけるポイント
繊維業界の企業の内定を獲得するために気になるのは、選考をうまく乗り切る方法ですよね。選考で効果的なアピールをして、ライバルに差をつけたいところです。
すでに、繊維業界で求められるスキルや、向いている人の特徴について紹介してきました。それを踏まえて、自分の強みを魅力的に伝えることが大切になってきます。自己分析をしっかりとおこなって、選考に向けて対策していきましょう。
自己PRは柔軟性を発揮したエピソードを伝える
自己PRでは、柔軟性を発揮したエピソードを伝えると良いでしょう。
新しい繊維製品の開発や非繊維の新事業の取り組みなど、繊維業界が変化に富んだ業界であることはこれまでにお伝えしてきた通りです。高い柔軟性を持っていることは、変化に対応して行動できることの証明になるでしょう。柔軟性を発揮してトラブルに対応したエピソードなどがある人は、ぜひアピールしてみてください。
柔軟性をアピールする方法はこちらを参考にしてみてください。
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臨機応変に対応する力を上手に自己PRする方法|例文あり
臨機応変に対応する力は自己PRに向いてる? こんにちは。キャリアアドバイザーの北原です。就活生から最近、こんな声を聞くことが多くあります。 「臨機応変なことって自己PRになりますか?」 「アピール内容を面接官に評価される […]
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語学力の高さをアピールする
産業用繊維を中心に海外への製品輸出を強める繊維業界においては、語学力は必須のスキルです。とはいえ「私は英語が得意です」と言うだけでは説得力がありませんから、留学経験など根拠となるエピソードとともに伝えると良いでしょう。履歴書やESには保有する資格を書く欄がありますから、資格を持っている場合は忘れずに記入してくださいね。
その企業独自のビジョンや方向性を踏まえた志望動機にする
繊維業界と言ったとき、対象となる企業は広範囲に及びます。そのため、将来のビジョンや事業内容は企業によってさまざまです。自分が志望する企業を決めたら、必ず企業研究をおこなって特徴を把握してください。それを踏まえた志望動機を書くことができれば、企業に対する熱意がしっかりと伝わるでしょう。
企業理念を志望動機に盛り込むポイントはこちらで解説しています。
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例文6選|志望動機で企業理念を盛り込む方法と失敗パターンを解説
志望動機に企業理念を盛り込む場合に気をつけたいのは、しっかりと事業内容や会社の沿革を調べることです。今回は企業理念を志望動機にする際の志望動機の作り方を、例文とともにキャリアアドバイザーが解説します。面接官が評価するポイントも紹介するので、参考にしてみてください。
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繊維業界の志望動機で盛り込むべきポイント
最後に、繊維業界の企業の選考を勝ち抜くために、志望動機に盛り込むべきポイントを3つお伝えします。
志望動機は、企業に対して入社意欲をアピールする大切なものです。自分がなぜ繊維業界の企業を志望しているのか、そして入社後はどう活躍できると思っているのか、論理的に説明するようにしましょう。
志望動機全般の作り方はこちらを参考にしてみてください。
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人事に響く志望動機の作り方を徹底解説! 業界・職種ごとの例文付き
志望動機の重要性 選考突破に向けて志望動機は非常に重要です。リクルートがおこなった就職活動・採用活動に関する振り返り調査によると、8割近くの企業が選考で重視する項目に「自社への熱意」を挙げています。 志望動機の内容によっ […]
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①なぜ繊維業界なのか
まず、なぜ繊維業界を志望しているのか明らかにしましょう。広範囲の事業をおこなう繊維業界を志望する場合、明確な理由がないと
面接官
鉄鋼業界などの他の業界のメーカーでも良いのでは?
などと疑問を持たれてしまう可能性があります。繊維業界の特徴を踏まえて、業界選びの理由をわかりやすく伝えるようにしてくださいね。
②繊維業界の中でもなぜその企業なのか
先ほど、繊維業界の選考で差をつけるポイントとして、その企業独自のビジョンや方向性を踏まえた志望動機にすることが大切だとお伝えしました。これが企業選びの理由に当たります。企業によって注力している事業分野はさまざまで、社風も異なります。自分がどういう点に共感したのか、企業のどのような面を魅力に感じたのかについてまとめましょう。
③入社後にどのように貢献したいか
最後に、入社後に自分がどのように貢献したいかを伝えて締めくくりましょう。
幅広い事業をおこなう繊維業界の企業ですから、自分が働いている姿をイメージするのは難しいと思うかもしれません。ですが、自分の強みを活かして力を発揮できそうな職種は何か考えて、できるだけ具体的に将来のイメージをしてみましょう。真剣に仕事について考えたことは、企業にも熱意として伝わるはずですよ。
志望動機の締め方のポイントはこちらで解説しています。
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志望動機のしめの文では、入社してやりたいことをしっかりと伝えることで面接官に熱意を伝えることができます! 今回は熱意の伝わる志望動機のしめ方をOK例文とNG例文とともに紹介していきます。キャリアアドバイザー監修のもと、魅力的なしめを作るポイントも紹介するので参考にしてみてください。
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繊維業界の特徴を理解して就活を成功させよう
繊維業界は、広範囲に事業を展開するグローバルな業界です。繊維業界の手がける繊維・非繊維事業はどちらも、新たな製品や技術を求めて挑戦していく変化に富んだものです。このような特徴を把握したうえで、自分が活躍できる業界なのか考えていきましょう。
選考ではこの記事で紹介したポイントを押さえて、柔軟性や語学力など自分の強みをしっかりとアピールしてください。繊維業界の企業への熱意が伝われば、きっと就活を成功させることができるでしょう。
キャリアアドバイザーコメント津田 祥矢プロフィールをみる
繊維業界には限りませんが、商品の流通経路を川に例えて表現されることがビジネスシーンではよくあり、たとえば食品業界や出版業界でも同じ表現がされています。この特徴を就職活動時から知っておくことで、他業界との比較や繊維業界の課題を知るきっかけになります。
繊維業界においては、素材産業が川上でアパレル産業が川中、流通産業が川下と表現されています。糸から生地が製造されて、製品へと工程が進み消費者へ行き渡る流れを表しています。
SPAが主流になる前は、川上から川下まで企業が異なり各企業間で売買が発生していたために洋服の値段が高くなっているということがありました。一般消費者へ流通するまでに長い期間があったのですが、SPAが一般化したことでトレンドに合わせた繊維素材の生産から商品流通までも可能になったのです。
川上から川下の視点を持ち合わせて業界研究をすると、繊維業界の良いところ・改善できる課題が見つけられるので、きちんと理解しておきましょう。