目次
- 離職率の調べ方を理解して就職後の早期退職を回避しよう
- まずは「離職率」の定義を理解しよう
- 従業員のうち離職をした人の割合のこと
- 「離職率」はさまざま種類ある
- 離職率の高い企業の6つの特徴を押さえよう
- ①サービス残業が多い
- ②職場の人間関係が良くない
- ③風通しが悪い
- ④給与が低い
- ⑤企業の将来性に不安がある
- ⑥ハラスメントがまん延している
- 理由を確認しよう! 離職率の高いとされる業界3選
- ①宿泊業・飲食サービス業
- ②教育・学習支援業
- ③生活関連サービス業
- 参考にしよう! 離職率の低い業界3選
- ①金融業・保険業
- ②複合サービス事業(郵便局・協同組合)
- ③情報通信
- 離職率の7つの調べ方を理解して就活に役立てよう
- ①四季報で調べる
- ②有価証券報告書を見る
- ③帝国データバンクを活用する
- ④口コミサイトを活用する
- ⑤就活エージェントに聞いてみる
- ⑥企業に直接聞く
- ⑦自分で計算してみる
- 企業の取組みを確認しよう! 離職率の低い企業の特徴を解説
- 自己成長と学習の機会を提供している
- 福利厚生を充実させている
- 会社の目指すべきビジョンを社員に伝えている
- 柔軟な働き方ができる環境がある
- 上司部下間で定期的な面談がある
- 有給取得の奨励をおこなっている
- 女性のキャリアアップを支援している
離職率の調べ方を理解して就職後の早期退職を回避しよう
こんにちは。キャリアアドバイザーの北原です。学生からよく、
「離職率ってどのように算出されているんでしょうか? 」
「離職率ってどうやって調べればいいんですか? 」
といった質問を受けます。「離職率」といっても、さまざまな離職率があり、計算方法がそれぞれで大きく異なりますし、離職率の調べ方についてもいろいろな方法があります。
この記事では離職率の調べ方と、離職率が高い企業の特徴について解説します。離職率の調べ方を理解して、離職率の高い企業への就職を避けることで就職後の早期退職を回避することができます。
一般的に「離職率が高い=ブラック企業」という認識を持たれやすくなりますが、この記事を読めば、そのようなブラック企業に勤めるリスクが低くなり、長く勤められる企業選びに役立てることができるでしょう。
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まずは「離職率」の定義を理解しよう
実は「離職率」といっても下記のように、いくつか種類があります。
- 新卒入社3年以内の離職率
- 年度ごとの離職率
- 最終学歴ごとの離職率
- 企業規模別離職率
- 男女別離職率
計算方法が異なるため、同じ企業であってもそれぞれの項目で離職率を計算した場合、異なる数値が出てきます。「新卒入社3年以内の離職率」と「年度ごとの離職率」は特に重視すべき離職率のため、この2つの離職率についてはよくリサーチするようにしましょう。
企業研究をする際には、各企業が発表する離職率が、どの離職率を表しているのかを理解したうえで、どの離職率について自分が知りたいのかを考えましょう。
従業員のうち離職をした人の割合のこと
「離職率」とは「ある時点で働いていた人数のなかで、一定期間(1年または3年を指すことが多い)を経て職を離れた人の割合」を指します。離職率が低いということは、その企業で長く働いている人の割合が高いということを意味し、逆に離職率が高いということは、人材の流出が多いということを意味します。
また、業種・業界によって、離職率が大きく異なるということも知っておきましょう。自分が受験する企業の離職率をチェックしたら、同じ業界の競合他社数社の離職率も調べると良いです。ほかの企業と比較することで、自分が受験する企業の離職率が高いのか、低いのかを客観的に判断することが可能になります。
「離職率」はさまざま種類ある
「離職率」といっても、種類がいくつかあります。厚生労働省が用いる離職率は「国内の労働者全体のうち、新たに離職した人の割合」または「新卒が3年以内に退職する割合」を表すことが多いです。
それに対し、企業が用いる離職率とは、「従業員が一定期間内に職を離れる割合」を指しますし、就活サイトでは「新卒が3年以内に退職する割合」を指しています。
「新卒が3年以内に退職する割合」と「従業員が一定期間内に職を離れる割合」は大きく異なることが大半です。前者の割合が高くても、後者の割合が低いことも十分ありえます。その場合は、新卒社員はすぐに離職してしまう割合が多いが、3年以上勤務した社員は長く働き続けている人が多い企業であるといえます。
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新卒入社3年以内の離職率
「新卒社員の3割が3年以内に離職する」ということを聞いたことはあると思いますが、これは最近に限った傾向ではありません。
たとえば、厚生労働省の「新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率」によると、新卒入社3年以内の離職率は1998年で32.5%、2012年は32.3%、2019年は31.2%、という結果が出ています。そのため、新卒入社3年以内の離職率を調べるときは30%よりも多いかどうかという点で確認すると良いでしょう。
- 1年あたり100名の新卒社員を採用している企業において入社後3年以内に50名離職した場合「50 ÷(100×3) ×100=離職率16.6%」
年度ごとの離職率
毎年の離職率を把握したいのであれば年度ごとの離職率をチェックすると良いでしょう。厚生労働省が発表している「令和4年雇用動向調査結果の概況」によれば、2022年の平均離職率は15.0%でした。そのため、平均値よりも高いか低いかを見ることで、その企業の傾向がつかめるでしょう。
- 10,000人の従業員がいる企業において1年間で100名離職し、全従業員数が9,000名になってしまった場合
「100 ÷10,000 ×100=離職率1%」
最終学歴ごとの離職率
「七五三現象」という言葉がある通り、実は最終学歴ごとにも離職率は異なります。「七五三現象」とは就職して3年以内に離職する割合の平均を学歴別に並べたものです。
中卒の7割、高卒の5割、そして大卒の3割が、就職して3年以内に離職すると言われています。厚生労働省の「令和2年度における新規学卒就職者の離職状況」によると、2021年の学歴別の離職率は下記のようになっています。
- 中卒:55.01%
- 高卒:36.9%
- 短大卒:41.1%
- 大卒:31.2%
最新データでは「七五三現象」と言われている時代の数値には当てはまっておらず、中卒と高卒の入社3年以内の離職率はかなり改善されているということがわかるでしょう。
企業規模別離職率
企業規模別に離職率を把握することも重要で、自分が目指す企業の規模と比較することをおすすめします。厚生労働省の「雇用動向調査」によると2021年度の企業規模別離職率は以下の通りです。
このデータからは企業規模によって離職率に大きな差があるわけではないという点を把握することができます。多くの学生が「大企業の方が安定しているから長く勤めることができる」というイメージを持っていますが、実際のデータでは企業規模によってそこまで差はないということを理解しておきましょう。
男女別離職率
ライフステージの変化によって受ける影響が男女で異なることから男女別の離職率の違いも把握しておきましょう。厚生労働省の「雇用動向調査結果」によると、2021年度の男女別の入離職率は以下の通りです。
出産育児などの影響で女性の離職率の方が男性の離職率よりも若干高くなっていますが、大きな差はなくなってきています。女性の社会進出が進み、政府も働き方改革に力を入れていることも離職率に大差がなくなっている要因といえるでしょう。
キャリアアドバイザーコメント北浦 ひよりプロフィールをみる
就活時に離職率を把握することで、自分のキャリアプランを検討できるようになるでしょう。
たとえば、長期間同じ企業に勤めてキャリアアップを図りたいと考えている人が離職率の高い会社に入社をしてしまうと、価値観の違いに戸惑ってしまうかもしれません。反対に、積極的に転職をして自分のスキルを磨いていきたい人が離職率の低い会社に入社をすると、周囲との価値観の違いに悩んでしまう可能性もあるかもしれません。
もちろん、あくまでも離職率は目安です。そうではなくてさまざまな観点から検討を重ねて自分の価値観に合う会社に入社をすることが大切なことではあります。しかし、離職率はその会社の雰囲気を想像するための1つの材料になることは間違いないでしょう。就活時には、離職率を把握して自分に合った企業を見つけられるようにしていきましょう。
離職率の高い企業の6つの特徴を押さえよう
離職率が高い企業に要注意することはもちろんですが、離職率を公表していない企業もあります。しかし、離職率の高い企業には共通点がいくつかあります。
あなたが志望する企業が離職率を公表していなくても次の6つの特徴を持っていたら、長く働き続けるのは難しい企業かもしれないので、事前に特徴を把握しておきましょう。
①サービス残業が多い
日常的にサービス残業や長時間労働がおこなわれている企業が離職率が高い傾向にあります。人材不足や業績不振に苦しんでいる企業ほどサービス残業や長時間労働が横行している傾向があります。
このような企業で働くと早朝から深夜までずっと仕事をしたり、土日も勤務する必要が出てきたりする必要があるでしょう。ワークライフバランスがまったく取れませんし、最悪の場合は、心身ともに疲弊し健康でいられなくなる可能性もあります。
そのため、就活をする際は、企業の毎月の平均残業時間をチェックし、過度に過少な残業時間になっていないかを確認することは非常に大切です。
②職場の人間関係が良くない
リクルートが2023年に調査した「新人・若手の早期離職に関する実態調査 第1回」によると、労働環境や給与水準といった条件面に次いで、「職場の人間関係がよくない、合わない」が第3位という結果でした。人間関係が良くないことで、「上司や先輩に相談しづらい」「言いたいことが言えない」といったストレスが生まれ、社内での居心地の悪さにつながる可能性もあります。
人間関係が良い企業を見分けるためには、OB・OG訪問などで社員に対して直接人間関係について質問をしてみると良いでしょう。
③風通しが悪い
風通しが悪い企業とは仕事をするうえで重要な情報が社内全体できちんと共有されておらず、組織として機能できていない状態の企業のことを指します。
このような企業では、ベテラン中間職の権限が強い傾向にあるため、若手社員からの報告や彼らの実績がきちんと上層部に届かず、若手社員が正当な評価を受けられません。
また、このような企業では上下関係が厳しく、部下が上司に意見することが許されない雰囲気もあり、それゆえに、若手の社員がどんどん離職するという悪循環が引き起こされるのです。
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このような風通しの良さや悪さについても、入社前に知ることはかなり難しいですが、企業説明会やインターンなどで直接社員に触れる機会を増やすことで見極めることができるでしょう。
④給与が低い
本来、経験や実績を積むと、給与が上がっていくものです。そして、その給与が上がっていくことが従業員のモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、離職率が高い企業は、給料に関して下記のような特徴があります。
- 基本給が少ない
- 昇給がない
- ボーナスが少ない / 支払いが不定期
このような環境下で働いていて、高いモチベーションを維持することができないために、多くの社員が離職してしまうのです。
給与に関してはなかなかリサーチが難しいですし、OB・OGや社員の方にたずねるのも躊躇してしまいがちですが、企業の口コミサイトを活用することで給与についての情報を得られることができるので、ぜひ活用しましょう。
⑤企業の将来性に不安がある
企業の将来性に不安がある場合は当然離職をする社員も多くなります。入社してからその企業の将来性を考えるのではなく就活の段階で将来性のない企業の特徴を把握しておきましょう。
- 業績が悪い
- リストラなど人員の削減が激しい
- 給料が上がらない
- ロボット化やAIに奪われる可能性のある業種・職種である
これらの情報の調べ方は、就職四季報を活用するか、業界研究をすることがおすすめです。
業界研究についてはこちらで詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
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⑥ハラスメントがまん延している
日本労働組合総連合会が2021年に発表した「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」によると、「職場でハラスメントを受けたことがある」と回答した人の割合が32.4%にも昇りました。
ハラスメントを経験した人の中でも特にパワハラとセクハラを経験した割合が高く、このようなハラスメント被害にあった方の多くが仕事へのやる気を喪失し、結果的に「離職・退職」を選択する傾向があります。
ハラスメントがまん延している企業かどうかはなかなか把握が難しいのが現実ですが、こちらも社員の口コミサイトなどを活用して情報をつかむようにしましょう。
ハラスメントがまん延している企業はブラック企業の可能性があります。ブラック企業の特徴についてはこちらの記事で詳しく解説していますよ。
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キャリアアドバイザーコメント上村 京久プロフィールをみる
たとえ離職率が高かったとしても、それだけで不安を感じるのではなく自分のキャリアプランや価値観と照らし合わせられるように注意をしてみてください。たとえば離職率が高くても、「起業をしたい」「海外に留学をしたい」「学んだ知見を活かして家業を継ぎたい」などキャリアアップを理由に離職をする人が多い場合には、必ずしも上記のようなネガティブな雰囲気の会社ではないかもしれません。
数字を見ることは大切ですが、それだけに捉われるのではなくて定性的なデータも客観的に調べられるようにしていきましょう。1つの情報からだと判断が難しい場合には、周りの人にアドバイスをもとめるなどいろいろな人の意見を取り入れていきましょう。
理由を確認しよう! 離職率の高いとされる業界3選
働きやすさ、労働の難易度や条件の厳しさなどが異なるため、業種や業界によって離職率が大きく変わります。離職率が高い業種の特徴は「土日出勤」「長時間労働」「BtoCビジネス」です。
ここでは、厚生労働省が発表した「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」に記載されている産業別入職率と離職率のデータをもとに、離職率が高い業界を3つ紹介します。
①宿泊業・飲食サービス業
宿泊業・飲食サービス業の離職率が最も高く、15.6%となっています。宿泊業・飲食サービス業の離職率が高い主な原因は以下の通りです。
- 土日祝日に休みが取れない
- 長時間労働が慢性化する傾向にある
- 比較的給与が低い傾向にある
しかし、離職する理由の1つに、「他の店舗で、さまざまな経験を積むため」という肯定的な理由も含まれているため、一概に、離職率が高いから、ブラックな企業・業界であると決めつけないようにしましょう。
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②教育・学習支援業
教育・学習支援事業の離職率は全業界の中で2番目に高く、12.4%でした。教育・学習支援事業とは学校教師、学習塾の講師、英会話スクール、そして教材開発販売会社などのことを指します。この中でも特に塾講師の定着率が低い傾向があります。
この業界の離職率が高い主な理由は以下の通りです。
- 長時間労働が慢性化している
- 比較的給与が低い傾向にある
- 業務量が多い
- 生活が不規則になる
- ノルマが多い
- プレッシャーが大きい
比較的、教育・学習支援業は長時間労働による離職が高い傾向にあるといえるため、業務内容や就業規則などを入社前に確認することをおすすめします。
教育業界についてはこちらを参考にしてみてください。
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③生活関連サービス業
生活関連サービス業・娯楽業の離職率は11.0%でした。生活関連サービス業とは、クリーニングや美容業のような個人に日常生活に係る技能、技術、または施設を提供する業種です。
娯楽業とは、パチンコ店やテーマパークのような個人の余暇活動をするための施設やサービスを提供する業種のことを指します。これらの業界で離職率が高いのは以下の理由によるものです。
- 肉体労働で体力的に厳しい
- クレーム対応などの精神的負担が大きい
生活関連サービス業や娯楽業は、直接顧客とコミュニケーションを取る機会も多く、時にはクレームを受けることもあります。そのため、しっかりと新人教育や社員のケアをおこなえる制度が整っている企業を選ぶようにしましょう。
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当たり前ですが、上記に挙げた業界の中にもさまざまな企業があります。 離職率が高いイメージがあったとしても、経営者の考え方によっては自助努力で少しでも定着力を上げようとしている企業もゼロではありません。
一般的に離職率が高いと言われている業界を目指す場合には、「この業界だから絶対に離職率が高い」という決めつけをするのではなく、細分化をして企業ごとの特徴を調べられるようにしていきましょう。
離職率を下げるためにおこなわれる戦略として、たとえば手厚い福利厚生や人材育成制度の強化などが挙げられます。自分にとってそういった制度はどのような魅力を感じられるかという点を意識して考えてみてください。
参考にしよう! 離職率の低い業界3選
離職率が低い業界の傾向は、ワークライフバランスが取れている、福利厚生が充実している、有休休暇が取りやすいことなどさまざまな要因が挙げられます。離職率が低い業界の特徴としてはBtoB企業である点と、繁忙期が少ない点です。
こうしたBtoB企業に目を向けることで、働きやすい企業と出会える可能性が高まるといえるでしょう。ここでも、2021年上半期に厚生労働省より発表された産業別入職率と離職率のデータをもとに、離職の低い業界ベスト3を紹介します。
①金融業・保険業
金融業・保険業の離職率が業界全体で最も低く、4.3%でした。金融業・保険業とはお金を取り扱う業界のことを指し、代表的なものとしては、銀行、証券会社、そして保険会社があります。
金融・保険業は「ノルマが厳しい」というデメリットはありますが、そのデメリットを上回るようなメリット、たとえば「高い給与」や「社員や労働環境に対する手厚いサポート体制」があるため、人気がある業界です。
また、デメリットである「厳しい営業ノルマ」についても、人によってはモチベーションにもなるため、一概に悪いことであるとは言えません。これらのことが、金融業と保険業における低い離職率につながっていると考えられます。
金融業界についてはこちらで詳しく解説しています。
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②複合サービス事業(郵便局・協同組合)
複合サービス事業とは、郵便局、農業協同組合や信用事業、そして保険事業などが含まれ、複合サービス事業における離職率は4.7%です。
複合サービス事業の特徴は、「労働時間の短さ」です。厚生労働省の「所定労働時間の結果概要」によると、複合サービス事業の1日の平均労働時間は7時間35分で、一週間の平均労働時間38時間33分で、全産業の中で2番目に短い労働時間となっています。
こうした働きやすさが離職率の低さにつながっているといえるでしょう。
こちらの記事では郵便局の志望動機について詳しく解説しています。郵便局で働く魅力についても紹介していますので、あわせて参考にしてみてくださいね。
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例文8選|郵便局の志望動機は地域貢献への意欲アピールがマスト!
郵便局の志望動機を作成する時、どのようなことを書けば良いのか、どうすればほかの学生と差別化できるのかが気になるポイントですよね。この記事では、キャリアアドバイザーが郵便局の志望動機作成のコツについて解説していきます。例文も紹介しているので、参考にしながら魅力的な志望動機を作成しましょう。
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③情報通信
情報通信事業は主に放送や、音声・映像といったマスメディアに関連した事業とIT業界のことを指し、離職率は5.0%となっています。
一般的にはIT業界は「平均年収は高いが、人材不足である」といったイメージを持たれがちなので、情報通信業界の離職率が低いというのは少し意外な結果に思えるかもしれません。
コロナ禍によってテレワーク化がますます進む昨今ですが、IT業界の人材不足は進んでいく一方です。限られたIT人材を逃さないように、労働時間や待遇といった労働条件を良くしていることも離職率が低いことに起因しているのでしょう。
離職率の7つの調べ方を理解して就活に役立てよう
- 四季報で調べる
- 有価証券報告書を見る
- 帝国データバンクを活用する
- 口コミサイトを活用する
- 就活エージェントに聞いてみる
- 企業に直接聞く
- 自分で計算してみる
就活生
離職率が低い業界については理解できたのですが、実際に就活を進める中でどのように離職率を調べたら良いのでしょうか。
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離職率を調べるのは意外と難しいですよね。ここでは7つの調べ方を紹介するのでぜひ参考にしてみてくださいね。
離職率の調べ方はさまざまですが、ここでは学生でも可能なおすすめの方法を7つ紹介します。ぜひ参考にして就活に活かしましょう。
①四季報で調べる
『就職四季報』とは東洋経済新報社が発行している企業のデータ集です。企業の広告やホームページではなく、記者が直接企業に取材して得られたデータをもとに作成されているため、信憑性が非常に高いです。
そして、有休消化状況や月々の平均残業時間など、学生が企業に聞きづらい情報が多く載っています。この就職四季報を使って、入社3年後の離職率や平均勤続年数を調べましょう。
四季報は書店でもオンラインでも販売されているため、簡単に入手することができます。さらに、複数の企業のデータを簡単に比較することができるので、志望する業界全体の平均離職率についても知ることができる点もメリットです。
就職四季報の活用方法はこちらを参考にしてみてください。
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平均勤続年数についてはこちらの記事を参考にしてみてください。平均勤続年数の基礎知識などについても詳しく紹介しています。
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②有価証券報告書を見る
志望企業が上場企業の場合は有価証券報告書を見ることで離職率について調べることが可能です。有価証券報告書とは、会社の概況、財務諸表などの情報を公開した株主や投資家向けの報告書のことを指し、IR(Investor Relations)とも呼ばれています。
IR(Investor Relations)についてはこちらの記事でも解説していますので、ぜひ併せて参考にしてみてください。
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有価証券報告書に離職率が掲載されていなくても、企業の経営状況や社員の動向についての情報を得ることができるので、非常に有用です。
しかし、この報告書は株主を対象にしている資料なので、難解な言葉や専門用語も多いため、はじめは読むのが大変でしょう。それでも興味がある人は企業のホームページ、または金融庁のホームページにアクセスしてみてくださいね。
③帝国データバンクを活用する
帝国データバンクは「企業が活動をおこなううえで役立つ情報を提供している」民間企業です。帝国データバンク社員が各企業に赴き、調査をおこなっており、国内で最大級の企業情報データベースを持っています。
帝国データバンクの調査によって、下記のことがわかります。
- 業績
- 資本構成
- 企業規模
- 損益
- 経営者について
- 企業活力について
離職率について直接把握できるわけではありませんが、企業の経営状態がわかるので、あなたが志望する企業に将来性があるかどうかが判断できます。
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帝国データバンクのデータをみるためには、会員登録をし、情報使用料を支払う必要があるということを覚えておきましょう。
④口コミサイトを活用する
企業の口コミサイトを活用することが手軽でおすすめの方法の1つです。このようなWebサイトには、社員や元社員による会社の口コミが書かれており、離職率や社員の平均勤続年数といった情報だけでなく、企業文化や残業状況などさまざまな情報を得ることができます。
ただ、このようなWebサイトのデメリットとしては、情報の信憑性に欠けることが挙げられます。特に、元社員による口コミには注意が必要です。
「元」社員ということは、すでにその会社を離職したということです。離職した理由は人それぞれですが、会社や仕事が嫌になって辞めた人も多いでしょう。そのような人が書く口コミはネガティブで偏った内容が多いです。
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豊富にある情報の中から、どの情報を信頼するべきか見極める力が必要になりますね。
⑤就活エージェントに聞いてみる
『就職四季報』は非常に便利なのですが、残念ながらすべての企業が、離職率や平均勤続年数を公開しておらず、欲しいデータや情報が入手できないこともあります。
そのような場合、就活エージェントに聞いてみることで解決できる場合があります。就活エージェントは学生側だけではなく、企業側とも日々会話しているためその企業の離職状況を把握していることもあります。
離職率について知ることができるだけでなく、業界全体の平均からみてその離職率が高いのか低いのかを教えてもらえたり、相談に乗ってもらうことも可能でしょう。
⑥企業に直接聞く
企業によってはどこにも離職率を公表しておらず、自力では調べられない場合があります。そのような場合、どうしても離職率を知りたいのであれば「企業に直接聞く」という手もあります。
しかし、面接の場で、離職率や社員の平均勤続年数について面接で上手に聞かないと、「やる気がない」学生と見なされてしまうこともあるので、聞き方に十分注意しましょう。
ただしストレートに聞かずに工夫して聞くことが大切
まず、離職率ついて聞く際は「御社の離職率を教えてください」とストレートに聞くのはおすすめしません。離職率を聞くのではなく、反対の定職率をたずねるなど工夫するようにしましょう。
質問をした際に、曖昧な回答をされたり、誤魔化そうとする様子が見られた場合は離職率が高いと捉えることもできるので、相手の反応もよく見ておきましょう。
⑦自分で計算してみる
「離職率」は法律で定められているわけではないため、指定された計算方法もありません。ただ、志望企業の離職者数と全従業員数がわかれば、離職率を自分で計算して算出することは可能です。
そのため、有価証券報告書などの公表資料をもとに自分で計算してみるのも良いでしょう。ただし、自分で計算する場合は必ず単年だけで計算するのではなく複数年に遡って計算して傾向をつかむようにしましょう。
「年間の離職者数÷常用雇用者数×100」で求められる
全社員のうち、ある一定期間内に離職した従業員数に対する離職率の算出の仕方は以下の通りで、厚生労働省のデータも、この計算式に基づいて算出されています。
- 年間離職率=退職者数÷全社員数×100(%)
たとえば、全社員が100人のうち、1年間に離職した人が8人いた場合は、8÷100×100で、年間離職率は8%となります。
また、新卒入社3年以内の離職者の割合を計算することもできます。
- 新卒入社3年以内の離職率=退職者数÷新入社員数(3年間の総数)×100(%)
たとえば、ある年の新入社員数が50人で、そのうち3年間に10人が退職した場合は、10÷50×100で、新卒入社3年以内の離職率は20%という計算になります。
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他にも転職サイトを確認するというのも離職率を調べる1つの手です。会員登録不要で誰でも検索ができるサイトの場合、気になる企業を探せる可能性があります。直接離職率が掲載されていることもあれば、頻繁に求人が掲載されていることから離職率が多く人員を募集をしていると予想できることもあるでしょう。
そのほかにも平均の継続勤務年数が書かれている場合もあります。2、3年の企業の場合には離職率が少し高めと考えてもいいかもしれません。また、平均年齢が若い場合にも離職率が高い可能性がゼロではありません。このように、たとえ数字を見つけることができなかったとしても、さまざまな観点から考えて離職率を想像できるということを覚えておきましょう。
企業の取組みを確認しよう! 離職率の低い企業の特徴を解説
就活生
就職するのであればできるだけ離職率の低い企業を目指したいのですが、離職率の低い企業へ就職するにはどうすれば良いでしょうか。
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離職率の低い企業を目指すのであれば、離職を防ぐための取組みを強化している企業を目指すと良いでしょう。
離職率の低い企業は、たまたま離職率が低いわけではなく、さまざまな工夫や努力をして離職率を下げています。
最後に離職率が低い企業がおこなっている7つの取組みについて詳しく解説します。取組みを理解して志望企業が取り組んでいる内容があるか確認しましょう。
自己成長と学習の機会を提供している
社員研修や社員教育にはコストがかかります。社員を大切にしていない企業や、売上や利益だけを追求する企業は、社員の自己成長や学習する機会の優先順位を下げる傾向にあります。
社員への教育や研修を充実させることは企業の成長だけでなく、社員個人の成長にもつながります。自身の成長を感じることで、仕事に対して自信がつき、結果的にやりがいへと変わっていくでしょう。自分の仕事にやりがいを感じるようになると、その仕事や企業への定着率が上がることにつながりますよ。
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アドバイザー
最近では社会人になってからの学び直しの一種である「リカレント教育」にも注力している企業もあるのでチェックしてみましょう。
福利厚生を充実させている
福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つにわけられます。法定福利厚生は、その名の通り、「法で定められた」福利厚生で、健康保険、介護保険、労災などのことを指します。
一方、法定外福利厚生とは、各企業が取り入れている独自の福利厚生です。「福利厚生を充実させている」とは、この法定外福利厚生のことを指します。法定外福利厚生の例は以下の通りです。
- 通勤手当・住宅ローン補助
- 人間ドックやスポーツジムの補助
- 男性社員の育児休暇取得の推進
- 充実した育児・介護休暇
- 社内保育所・託児所の設置
- 結婚祝い金
- 資格取得補助
- 社員旅行
このような法定外福利厚生を充実させることで、社員のプライベートがより充実したものになり、企業への満足度も上がり、結果として離職率の低下につながります。
会社の目指すべきビジョンを社員に伝えている
企業が目指すビジョンが明確であるということは、会社の方向性が可視化されている、つまり、会社の将来性が感じられるということです。
会社のビジョンを社員一人ひとりに伝えることで、社員に安心感を与えるだけでなく、そのビジョンに向かって一緒に頑張っていこうというメッセージにもつながります。
面接や会社説明会で「御社の今年度のビジネス目標はなんですか? 」といった質問を人事以外の社員にしてみることで、その会社のビジョンや目標が社員全体に浸透しているかを確認することができるでしょう。
柔軟な働き方ができる環境がある
最近はライフスタイルが多様化が進んでいることに加え、女性の社会進出が進んできています。さまざまなワークスタイルを許容することで、優秀な人材が次々と離職するリスクは減るでしょう。企業もその変化に合わせてフレックスタイム制、在宅勤務などさまざまなスタイルの働き方を導入するようになりました。
特に女性は、出産・育児の関係で、柔軟性のある働き方が認められるかどうかは、会社を選ぶ際に重要なポイントになってくるでしょう。
在宅勤務ができる職種についてはこちらの記事で詳しく解説しています。メリット・デメリットについても紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
職種30選|在宅ワークの種類から自分に最適な仕事の探し方まで伝授
上司部下間で定期的な面談がある
上司とのコミュニケーションが不十分であると、自分が目指す方向性と会社からの期待にズレが生じることがあります。そして、そのズレは時間とともにどんどん大きくなっていき、やがては「自分が目指すものと違う」と会社に対して不満を感じてしまうことで離職につながっていきます。
このようなことを防ぐために、離職率の低い企業は定期的に、上司と部下が定期的に面談をする機会を設けています。特に新入社員のうちは、会社に慣れてきたかどうか、仕事量と能力が見合っているかといったことを確認するためにも、頻繁に面談をする機会が設けられていることが多いです。
有給取得の奨励をおこなっている
近年、長時間労働による「過労死」が深刻な社会問題化し、ワークライフバランスが重視されるようになりました。ワークライフバランスが取れることで、心身ともにリフレッシュできるとともに、豊かな人生を送ることにもつながります。
また、2019年4月に施行された働き方改革関連法案によって年5日以上は有給休暇の取得が義務化されたこともあり、有給休暇を消化することを奨励する企業が増えてきました。
有給休暇は社員全員に与えられた権利であるため、本来は使いたいときに使い、すべて消化できるのが望ましいですが、実際にはそういうわけにはいかないことが多いものです。そのため、社員の定着率を向上させる努力をおこなっている企業は積極的に有給休暇取得の奨励を実施しています。
女性のキャリアアップを支援している
女性の社会進出だけでなく女性を管理職に登用したり、女性に大きな仕事を任せたりする企業が増えてきました。そのような上昇志向がある女性に向けて研修をおこなったり、女性の昇格や昇給に力を入れる企業もあります。
女性に長く勤めてもらおうという会社は、女性にとって働きやすい環境を提供するとともに、女性のキャリアアップを全力で応援してくれます。
キャリアアドバイザー
多様性を受け入れる努力をおこなっている企業は、働く側の社員としても安心ですよね。
離職率の調べ方を理解して優良企業への就職を目指そう
せっかく苦労して入社した企業であっても「こんなはずではなかった」「思い描いていた会社と違う」と感じて、3年以内に離職してしまう人は多いのが現実です。
そのようなことを防ぐためにも会社選びをする際の基準の1つとして離職率についても考えること、離職率の調べ方を把握することは大切です。また、離職率の低い企業がおこなっている取組みについても理解しておくことで、企業を選ぶ際の選択肢が増えてきますよ。
離職率をチェックする際には、どの離職率の割合を表しているのかをよく確認するようにしましょうね。