目次
- 薬学部卒のキャリアは就職先によって大きく変わる
- はじめに薬学部の就職状況を押さえよう
- 医薬分業によって薬局勤務の薬剤師が増加
- 医療系の比率は高めだがそれだけではない
- 知っておきたい! 薬学部生のリアルな就活事情
- 就活は4年生後半からスタート
- 就活の成功を決めるのはスケジュール管理
- 早めに決めると有利! 薬学部生が就活する前に知っておくべきこと
- 医療系ならライフワークバランスに合った就職先を検討しよう
- 研究開発職を目指すなら学会で功績を残す努力を
- 意外と多彩な薬学部の就職先
- 薬学部の就職先トップ3
- 他にもある! 薬学部卒業生が活躍できる就職先
- どんな仕事をしている?薬学部卒が目指す人気職種
- 調剤
- 研究・開発職
- MR
- CRA・CRC
- 就活で差がつく! 薬学部生におすすめの資格
- 甲種 危険物取扱者
- 放射線取扱主任者
- 日本化粧品検定
- 薬学部生必見! 自分に合った業界・職種の選ぶためには
- モチベーショングラフを用いた自己分析を徹底する
- インターンシップへの参加を怠らない
- OB・OG訪問や店舗見学会へ参加する
- 薬学部のさまざまな就職先から理想の道を探そう
薬学部卒のキャリアは就職先によって大きく変わる
こんにちは。キャリアアドバイザーの北原です。
「薬学部の就職先ってどんなところがあるのですか?」
「薬学部の就活ってどう進めていけばいいのですか?」
就活を控えた薬学部の学生からこのような質問が多く寄せられています。専門的な学部とはいえ、どうやって志望先を絞り込み、就活していけばいいのかわからず不安という人も多いのではないでしょうか。
「薬学部卒の就職率は他の学部より高い」ともいわれますが、そうだとしても油断は禁物です。薬学部卒の就職先は意外と多彩であり、早い段階から方向性を決めておくことで、自分に最も合った企業への就活を有利に進めることができます。
この記事では、薬学部卒に人気の就職先と職種を解説します。自分に合った業界・職種の選び方についても紹介するので、ぜひ志望先を決める際の参考にしてくださいね。
はじめに薬学部の就職状況を押さえよう
就活生
キャリアアドバイザー
本当にそうでしょうか? 近年の薬学部卒の就活状況を確認しておきましょう。
専門知識を身につけられる薬学部は就職率が高いというイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実際にはどのような状況にあるのでしょうか。
大学通信オンラインが発表した「2022年 学部系統別実就職率ランキング」(医科・歯科の単科大などを除く全国555大学から得た回答をもとに作成)をもとに、薬学部の就職状況を確かめてみましょう。
このランキングによると、2021年の平均実就職率(実就職率=就職者数÷⦅卒業生数-大学院進学者数⦆×100で算出)が最も高かったのは91.7%の「看護・保健・医療系」で、「薬学系」の平均実就職率は83.8%。
全11系統のうち最も低い「文・人文・外国語系」が81.8%ですから、薬学部卒の就職率は他の学部と比べてそれほど高くないことがわかります。
その原因の一つは、薬剤師国家試験の合格率が低い大学の実就職率が上がらないことにあるようです。
医薬分業によって薬局勤務の薬剤師が増加
薬学部卒の就職先としては、日本の医療制度を支える「医薬分業」が進み、薬局そのものの数が増えた結果、薬局勤務の薬剤師が増え続けている状況です。
厚生労働省が発表した「令和4年(2022年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、1982年には約4万人だった薬局勤務の薬剤師は、2000年に約9万人、2022年に約19万人と右肩上がりに増加し続けています。長期的に増加し続けていることから、今後もしばらく増加傾向が続いていきそうです。
医療系の比率は高めだがそれだけではない
出典:薬学教育協議会「令和5年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書」をもとに作成
薬学部の就職先は当然、薬局や病院・診療所などの医療系の比率が高めですが、それ以外の就職先を選ぶ学生も少なからず存在します。
国家・地方公務員の衛生行政職など行政関係に就職した学生も存在しており、全体の約20%の人が医療系以外の就職先を選んでいます。
就活生
薬学部に進学したから病院や薬に関する仕事以外は選べないのかな……。
と不安に感じている学生はそうではないので安心してくださいね。
キャリアアドバイザーコメント酒井 栞里プロフィールをみる
薬の処方と調剤を意志と薬剤師で分担しておこなう「医薬分業」が進んだことによる影響は大きいですよね。実際、薬学・薬剤師に詳しくない人でも感じるほど、街のいたるところに薬局が増えています。薬局、またドラッグストアの求人は多い状況が続いているため、資格を活かして働こうと考える人は多いといえます。医薬業界の専門職は参入障壁が高く、求人倍率も高い傾向があるため、薬学部生は大学での学びを活かしてそのまま薬局や病院・診療所への就職が多い印象です。
しかし、もちろん薬学部に限ったことではないですが、専門的な知識を学び資格を取得してもまったく違う分野に進む学生も見られます。特に近年は目の前の資格に縛られることなく自分のやりたいこと、求める働き方の実現を目指す傾向にあります。初めは薬学とは関係のない分野に就職をし、ライフステージに合わせて薬学部の資格や知識を活かせるような働き方を選ぶのも良いでしょう。
知っておきたい! 薬学部生のリアルな就活事情
薬剤師の資格取得を目指す学生が多い薬学部は、他の学部と比べて就活の優先度が下がりがちです。ある程度は国家試験の比重が高くなるのは仕方ありませんが、そちらばかりに気を取られすぎて就活がおろそかになっては本末転倒。
国家試験に合格し、さらに理想的な就活を進めるためにも、薬学部生がどんなスケジュールで就活を進めるべきなのかきちんと把握しておきましょう。
就活は4年生後半からスタート
6年制の薬学部では、説明会やエントリーが開始する5年生の3月1日が本格的な就活解禁日。その就活解禁日に向けて自己分析や業界・企業研究を進めなければならないため、遅くとも4年生後半には就活を始める必要があります。
具体的には、4年生の12月から1月の間に実施される共用試験終了後に就活を始めるのがおすすめです。それ以降は実務実習や国家試験対策、卒業研究など、やることが山積みなので余裕を持って就活を始めましょう。
- 自己分析
- 業界、企業研究
- インターンシップへの参加
- OBOG訪問
- 店舗見学会への参加
- ES対策
- 面接対策
こちらの記事ではより詳しく、解禁に向けた過ごし方や準備について解説しています。
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就活の成功を決めるのはスケジュール管理
実務実習や国家試験対策、卒業研究などと並行しながら就活を進めなければならない薬学部は、他の学部以上にスケジュール管理が重要です。ES・履歴書の締め切りや大切な就活イベントの開催を見逃さないためにも、予定があいまいなまま進めるのではなく、きちんとスケジュール管理をしながら就活を進めましょう。
スケジュール管理にはアナログとデジタルの2つの方法がありますが、どちらの方法も一長一短です。好みに合わせて選んだり、併用したりしてみてください。
・手書きなので記憶に残りやすい
・フォーマットにとらわれず自由に記述できる
・説明会中やインターン中でも、周囲の目を気にせずメモできるここに例文のテキストを記載
・フォーマットが統一されていて見やすい
・検索機能付きなら予定を確認しやすい
・予定を通知できる
アナログ管理の1つとして就活ノートの作成がおすすめ。作り方はこちらを読んでみてください。
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早めに決めると有利! 薬学部生が就活する前に知っておくべきこと
就活生
薬学部卒にはいろいろな就職先があるのですね! なんだか夢が広がってきました。
キャリアアドバイザー
とはいえ、薬学部生ならどの選択肢も選べるというわけではありません。やりたい仕事があるのなら、早めに準備を始めておくと良いでしょう。
薬学部卒の就職先は意外と幅広いとはいえ、選択肢を広げるには早めの準備が肝心です。
薬学部生が就活を進める際の選択肢として、大きく分けて医療系の就職先を決める検討方法と、企業の研究開発職に就くために必要な準備を紹介します。
医療系ならライフワークバランスに合った就職先を検討しよう
医療系といえば、夜勤や日直当番など、勤務形態が変動しやすいことで知られる職種です。薬局や病院・診療所を就職先として考えている人は、ワークライフバランスを就活の軸の一つとして考えるのも一つの方法です。
医療に貢献することを目指して薬学部に入った人なら、医療系の就職先で知識を活かしてやりがいを得ることができるでしょう。しかし、医療系の仕事の特徴として身体的・精神的負担が大きい場合があり、ワークライフバランスが自分に合った就職先を選ぶと長く続けやすくなります。
時短勤務や在宅ワークなど、どの企業にも共通するような取り組みのほか、働きやすい環境作りなど企業独自の取り組みにも注目しながら企業研究を進めることが大切です。
研究開発職を目指すなら学会で功績を残す努力を
企業の研究開発職を目指すのであれば、学会での功績が他の学生との大きな差別化ポイントとなります。
自分たちの研究成果を世に問い、人にわかりやすく説明する能力が求められる学会発表は、研究開発職を目指す人にとって非常に重大なイベントです。
学会発表の経験を通じて身につくプレゼンテーション能力や専門分野に関する高度な知識は、選考時にもアピールポイントの一つとなるでしょう。
キャリアアドバイザー
国際学会への参加経験や何かしらの賞の受賞歴があれば、なおさら選考でのアピールポイントになります。
研究職など理系の就職先の見極め方はこちらの記事を参照してください。
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就職先を意識することで勉強意欲も上がる
始めから一つの企業だけを目標にする必要はありませんが、やはり志望業界は早めに目星をつけておくのがおすすめです。就職先を意識して就活を進めることで、業界研究や企業研究を効率的に進められるようになり、他の勉強に使える時間も増えます。
・就活を効率的に進められる
・特定の業界や企業の研究を深められる
・目標が決まればモチベーションも上がる
・実務実習や国家試験対策に使える時間が増える
就活の方向性が明確になれば、企業研究や選考対策にも具体性を持って取り組めます。視野が狭まらないよう注意しつつ、志望業界は早めに絞っていきましょう。
意外と多彩な薬学部の就職先
先ほどもお伝えしたとおり、薬学部の就職先には多くの選択肢があります。薬学部といえば医療系のイメージがありますが、医療系だけにこだわらず、その他の就職先候補にも目を向けてみましょう。ここからは、薬学部の就職先の具体例を解説していきます。
- 医療機関
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 製薬会社
- 化粧品メーカー
- 食品メーカー
- 公的機関
- 学校
薬学部の就職先トップ3
薬学教育協議会の「令和5年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書」によると、令和5年3月における6年制学科卒業生の就職先は、「保険薬局」「ドラッグストア」「病院・診療所」がトップ3にランクイン。
- 保険薬局:28.6%
- 病院・診療所:20.8%
- ドラッグストアの調剤部門:19.7%
※6年制学科卒業生7,932人が調査対象
就職先トップ3を合計した割合は約7割と、多くの薬学部生が医療系の施設を就職先に選んでいることがわかります。
保険薬局
調剤薬局は医薬品の調剤をおこなう薬局全般を指し、薬剤師が健康保険法に基づいて保険調剤業務を取り扱う薬局を特に保険薬局と呼びます。
- 調剤薬局:医薬品の調剤をする薬局全般
- 保険薬局:公的保険に基づく調剤をする薬局。病院の近くにある薬局は、ほぼすべてこちらに当てはまる
保険医が保険医療をおこなうため患者に交付した処方箋を受け取り、その処方箋に基づいて医薬品を調剤するのが主な仕事です。
保険薬局は医療機関に比べて求人が多いため、希望の働き方に合った就職先を見つけやすい傾向にあります。
ドラッグストア
ドラッグストアは、医薬品や化粧品、日用品、食料品などを販売する店舗です。要指導医薬品と第一類医薬品は薬剤師がいないと販売できないため、薬剤師を募集するドラッグストアが多く、薬学部卒の就職先の一つになっています。
会社の方針によっては調剤だけでなく、レジ打ちや品出しなどの業務が組み込まれていることも珍しくありません。また、ドラッグストア内の調剤部門へのほか、販売職として就職する例も見られます。
- 要指導医薬品:医療用医薬品から市販薬になったばかりの医薬品で、取り扱いに十分な注意が必要。
- 第一類医薬品:まれに副作用を起こす可能性があり、使用に関しては特に注意が必要な医薬品。要指導医薬品よりは使用経験が多い。
病院・診療所などの医療機関
医療機関は病院や診療所などの施設。医薬品に関する知識・スキルを活かしやすく、最も患者に近い環境で働ける職場として人気の就職先です。
患者それぞれのアレルギーや飲み合わせに応じた医薬品の調合、注射や点滴の調整などが主な仕事です。医師や看護師と一緒にチームとなり、患者の治療を手助けできるのが医療機関の働きがいといえるでしょう。
キャリアアドバイザー
医療機関にある薬剤部への就職がほとんどですが、薬学部から臨床・検査に就職するケースもあります。
病院の志望動機の書き方はこちらの記事で確認してください。
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他にもある! 薬学部卒業生が活躍できる就職先
先程解説をしたTOP3と比較すると少ないものの、上記以外の就職先を選ぶ人も増えつつあります。製薬会社や化学系企業、公務員、学校などがその代表例です。
製薬会社
製薬会社は医薬品の開発や改良、生産・販売などをおこなう企業です。医薬品に関する知識が仕事で役立つため、薬学部卒にもぴったりな就職先です。
製薬会社には薬学部卒が狙えるいくつかの職種があります。
- 研究開発職
- DI(Drug Information:医薬品情報室)
- MR(Medical Representatives:医療情報担当者)
いずれも高度な専門知識が求められるのは確かですが、薬剤師の資格がなくても、医薬品に関わる仕事をできるのは製薬会社の魅力です。
製薬業界についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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化粧品メーカー
新製品の製造管理や品質保証管理などの業務において、医薬品に関する知識を活かせる化学系企業も就職先の一つです。中でも注目が高まっているのが、化粧品を開発・販売する化粧品メーカーです。
近年は安全性の高い化粧品や環境にやさしい化粧品の開発が進み、医薬品に関する知識を持った人材の需要が高まっています。
- 研究開発職
- 営業
- マーケティング部門
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食品メーカー
食品メーカーも化粧品メーカーと同じく、高品質かつ安全性の高い商品の需要が高まっている分野です。
高齢化や巣ごもり需要の高まりから消費者の「健康志向」が進んでおり、特に健康食品の市場が拡大しています。それに伴い、安全性に対する専門的な知識を持つ薬学部生が、食品メーカーで求められているのです。
キャリアアドバイザー
健康食品のパッケージデザインや広告表現には、薬機法などで定められた制約があるため、研究開発職以外でも医薬品の知識が活かせるでしょう。
公的機関
公的機関で働く「公務員薬剤師」は、国家公務員薬剤師、地方公務員薬剤師、麻薬取締官の3種類に分かれます。勤務先によって業務内容が大きく異なるので確認しておきましょう。
- 中央官庁・・・国家公務員薬剤師と麻薬取締官の職場。国家公務員薬剤師は「医薬品や医療機器の承認」や「メーカーに対する監視指導」、麻薬取締官であれば「違法薬物に関する情報収集」や「薬物依存者の更生支援」などの業務にあたる。
- 保健所・・・地域における保健管理や衛生管理をおこなう施設。地方公務員薬剤師として、「地域の施設に対する開設許可・立入検査」「食品に含まれる添加物の規格基準検査」などの業務にあたる。
- 衛生研究所・・・地域の衛生についての研究をする施設。地方公務員薬剤師として、「細菌の検査・研究」「食品や医薬品の安全確保」などの業務にあたる。
学校
大学や高校、中学校、小学校などの学校も就職先の一つです。
中でも薬学部卒に人気なのが「学校薬剤師」という職種です。日本では大学以外の学校に学校薬剤師を設置することが学校保健安全法で義務付けられており、医薬品に関する知識を持った薬学部出身者が学校薬剤師として活躍しています。
キャリアアドバイザー
教室の環境や水泳プールの水質の衛生維持管理のほか、生徒たちを対象にした健康相談や保健指導などが主な仕事です。
また、他の進路先としては知識が活かせるMR職なども挙げられます。MR職の具体的な内容についてはこちらの記事が参考になりますよ。
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キャリアアドバイザーコメント吉川 智也プロフィールをみる
職種でいえば、研究開発職は花形と考える人は多いでしょう。理系で4年生学部卒では研究開発部門に所属するのは難しいため、6年間薬学を学んできた学生には魅力的に映りますよね。メーカーの就職先としては、化粧品は不動の人気です。学生にとって身近であり、商品に触れる機会の多いものは真っ先に思い浮かびますので、toB専門の企業よりも人気が高いというのは毎年どの学部生でもいえることです。
民間企業が思い浮かぶことが多いかと思いますが、薬学部から公務員へ就職するという道もあります。国家公務員でも地方公務員でも募集がありますので、活躍できる場所は多岐にわたります。
副業が可能な会社も増えてきているので、薬機法に詳しいライターが重宝されるという場面にも遭遇しますね。働く場所や時間を問わない働き方は注目されているので、こういった仕事も増えていくものと思います。
どんな仕事をしている?薬学部卒が目指す人気職種
ここからは、薬学部卒の学生に人気の仕事を職種別に解説します。自分が持っている専門知識を活かせる職種や、やりがいを持って働いていけそうな職種を見つけてみてください。
薬剤師の資格がなくても、入社後に研修や認定資格試験を受ければ働ける職種もあります。
調剤
医療機関や薬局に勤務し、医師の処方箋に基づいて薬を調剤・服薬指導する仕事です。薬剤師として働くには、薬学部の卒業見込みまたは卒業後、薬剤師国家試験に合格する必要があります。
- 医師の処方箋に基づいて薬を調剤する
- 薬の副作用や飲み合わせによる弊害のチェック
- 患者への服薬指導や管理指導
医療機関や薬局のほか、製薬会社、卸売業の企業、公的機関などでも薬剤師は活躍しています。医薬品の調合ミスは取り返しのつかない事態につながるため、医薬品に関する正しい知識を持つことはもちろん、高い集中力と注意力が不可欠です。
研究・開発職
製薬会社や各種メーカーに勤務し、新製品の開発と既存製品の改良をおこなう仕事です。薬剤師の資格は必須ではありませんが、高度な専門知識が求められるのは言うまでもありません。
- 新たな知識や法則、仮説の発見(基礎研究)
- 基礎研究による成果をもとに、実際の製品に活かすための方法を模索する(応用研究)
- 研究部門で確認された成分に対する治験をおこなう
- 治験で得られたデータを論文にまとめ、承認機関に提出する
研究職や開発職といっても、常に部屋にこもって研究開発に没頭しているわけではありません。関係機関との連絡・調整や書類作成なども、研究・開発職の重要な業務です。
MR
MR(Medical Representatives)は日本語では医薬情報担当者を意味し、製薬会社で働く営業・広報担当として、医療機関や卸売業の企業を訪問し、自社製品の説明と売り込みをする仕事です。
- 医療機関や卸業者に自社製品を売り込む
- 医薬品の副作用や適応症などの情報を伝える
- 既存医薬品の情報を収集する
薬剤師の資格がなくても、製薬会社に入社して研修を受け、MR認定センター主催の「MR認定資格試験」に合格すればMRとして働くことが可能です。
仕事をするうえでは医薬品の高度な専門知識が欠かせないため、熱心に学び続ける姿勢や情報をわかりやすく伝える能力が求められます。
CRA・CRC
CRAは「Clinical Research Associate」の略称で、日本語では「臨床開発モニター」という意味。新薬開発の最終段階である臨床開発の「治験」が、正しくおこなわれているか監視する仕事です。
- 治験を実施する医療機関や担当医師の選定
- 治験実施状況の調査、確認
- 治験薬の回収
CRAとよく混同されやすいのが、CRC(Clinical Research coordinator/治験コーディネーター)という職種。製薬会社の代表として治験の実施をモニタリングするCRAに対し、医療機関、被験者、製薬会社の三者を取り持つのがCRCの役目です。
- 治験業務フローの作成
- 関係機関との連絡、調整
- 被験者への説明や相談対応
就活で差がつく! 薬学部生におすすめの資格
- 甲種 危険物取扱者
- 放射線取扱主任者
- 日本化粧品検定
薬学部というと薬剤師の資格がすぐに思い浮かびますが、実はそれ以外にも薬学部で学んだ知識が役立つ資格があります。
できることの幅を増やして就活での自分の価値を高めるためにも、興味のある資格取得にぜひ挑戦してみてください。ここでは薬学部在学中に取得可能な資格を3つ紹介します。
甲種 危険物取扱者
全種類の危険物の取り扱いと定期点検、保安の監督ができるようになる国家資格です。この資格を取ることで、より化学に関する知識が豊富であることの証明になります。
一定数量以上の危険物を貯蔵、取り扱っている施設には危険物取扱者の設置が義務づけられているため、製薬会社や化学メーカーなどの選考で有利になる場合があります。
- 主催団体:一般財団法人 消防試験研究センター
- 資格種類:国家資格
- 受験資格:大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 試験日:都道府県ごとに異なる
- 試験形式:マークシート方式
放射線取扱主任者
放射線障害防止法に基づき、放射線についての監督ができるようになる国家資格です。第一種、第二種、第三種の3種類があり、最も取得難度の高い第1種が対応できる業務の幅も一番広くなっています。
医療機関や製薬会社、食品メーカーなど、放射線を扱う施設は多岐にわたるため、どんな就職先を選ぶにしてもプラスアルファのアピール材料になります。
- 主催団体:公益財団法人 原子力安全技術センター
- 資格種類:国家資格
- 受験資格:なし
- 試験日:8月下旬頃
- 試験形式:マークシート方式
日本化粧品検定
日本化粧品検定は化粧品や美容に関する知識の向上を目指す検定で、通称「コスメ検定」とも呼ばれる民間資格です。1〜3級の検定があり、難度の高い検定では化粧品の歴史や成分、法律に関する問題など、非常に幅広い知識を問われます。
危険物取扱者や放射線取扱主任者などと比べると取得の優先度は低めですが、化粧品メーカーへの就職を目指す人は取っておいて損はない資格です。
- 主催団体:一般社団法人 日本化粧品検定協会
- 資格種類:民間資格
- 受験資格:なし
- 試験日:5月、11月
- 試験形式:マークシート方式
薬学部生必見! 自分に合った業界・職種の選ぶためには
薬学部は専門性が高いうえに、卒業後に活躍できる業界や職種が多彩な学部です。やみくもに探すのは効率的でないため、まずは自分に合った業界・職種を見つけることから始めましょう。
明確な意図をもって就活を進めることで、具体的な就職先が見えてきますよ。ここでは自分に合った業界・職種を見つける方法を3つ紹介します。
モチベーショングラフを用いた自己分析を徹底する
自分に合った業界・職種を見つけるためには、まずは自分自身の特徴を正しく把握することから始めましょう。同じ薬学部で得た知識を活かしたいというスタートでも、徹底した自己分析で自分の強みや弱み、価値観、仕事に求めるものなどを明らかにすることにより、自分が最も活躍できるフィールドを見つけやすくなります。
具体的な自己分析の方法としては、モチベーショングラフを用いるのがおすすめです。
モチベーショングラフとは、これまでの人生におけるモチベーションの上下をグラフ化したもの。自分はどんな場面でモチベーションが高くなるのか視覚的に理解できるので、自分に合った業界・職種を選ぶ際のヒントになります。
薬学にかかわることだけでなく、
就活生
仲間と取り組んだことがモチベーションとなった!
就活生
自分の興味・関心に打ち込むことで達成感が得られた!
など、物事の取り組み方による違いを知ることで、どんな働き方が合っているのか見えてきます。
自己分析ノートの活用法はこちらの記事で解説しています。
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自己分析ノートの活用術を伝授! 基本の作り方から徹底解説
自己分析をするときはノートを活用すると、しっかり整理できるので就活の成功につながりますよ。 この記事では自己分析に効果的な自分史の作り方やノートの活用方法をキャリアアドバイザーが解説します。 解説動画も参考に、分析により自分の強み・弱みや適性を把握してくださいね。
記事を読む
インターンシップへの参加を怠らない
薬学部には実務実習があるので参加の意義を感じにくい人もいるかもしれませんが、インターンシップには積極的に参加しましょう。
インターンシップは職場の雰囲気や実際の業務内容を肌で体感できる、またとない貴重な機会です。また、業界や企業への理解につながり、自分が仕事に求めるものの確認にもなります。薬学部生の就活に役立つ経験と知識を得られますよ。
キャリアアドバイザー
「実務実習が忙しすぎて行く暇がない」という人でも、日程調整可能なインターンシップや、1日で終わるようなインターンシップもあるので情報収集してみましょう。
インターンシップを充実させるコツはこちらの記事で解説しています
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インターンの目的とは|持つべき心構えや充実度アップのコツを解説
インターンは目的を明確にして参加することで、格段に有意義なものになります! この記事ではインターンの目的、確認しておきたいこと、充実度を上げるコツをキャリアアドバイザーが解説します。 貴重な機会を活かして今後の就活に良い影響を与えましょう。
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OB・OG訪問や店舗見学会へ参加する
興味のある業界・職種がある程度見えてきたら、OB・OG訪問や店舗見学会への参加を通じて、より詳しい情報を集めていきましょう。
インターネットでも情報は収集できますが、実際に働いている人から聞く話や自分の目で見た情報は、インターネット上では得られない有益な情報です。
入社後に「自分のイメージと違った」という事態に陥らないよう、インターネットや企業パンフレットの情報だけを鵜吞みにせず、自分の目でも情報の信頼性を確かめましょう。
・実際の職場環境を見せてもらえる
・現場の様子や業務内容を細かく確認できる
・一緒に働く人の雰囲気を知ることができる
キャリアアドバイザーコメント乾 花穂子プロフィールをみる
「一生モノの薬剤師という資格」という観点を外して自己分析をしてみるのもおすすめします。たとえば自己分析のためのライフラインチャートを作成するのが幼少期から現在までの時間軸だとして、自分が何に喜びを感じるか、周囲とどういう関係性を構築してきたかなどはそのときどきのことであって、「薬学を学んでいる自分」ではないですよね。資格があるから活かそう、または活かさなければ、ではなく、何か将来的にやりたいことがあって実現のために必要だったから学んできているわけです。
ひとりで自己分析をおこなうことももちろん良いですが、誰かと話をして客観的に自分を見てみるのも違う発見があるでしょう。自分よりも、他人のほうが自分のことをよくわかっているというのは、よくあることです。特に自己分析は後回しにしがちでやり方がわからない人も多いので、キャリアセンターで手伝ってもらうのはもちろん、同じ学びを共にしてきた友人や専門知識を有する教授に協力してもらうのも有効です。就職活動がうまくいかない人こそ、利用してみてください。
OB・OG訪問のやり方や質問の考え方についてこちらの記事で確認してください。
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OB・OG訪問をおこなう最適な時期についてはこちらで解説しています。
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薬学部のさまざまな就職先から理想の道を探そう
今回は薬学部卒に人気の業界と職種を紹介してきました。医療機関や調剤薬局への就職が多いものの、薬学部の就職先は意外と多彩です。
自己分析を通して「自分はどんな強みを持っているのか」「どんなフィールドで活躍したいのか」を明らかにし、さまざまな就職先から自分に合う道を探しましょう。
また、国家試験対策が重要な薬学部は、どうしても就活が後回しになりがちです。限りある時間を使って効率的に就活を進めるためにも、早めのスタートと徹底的なスケジュール管理を心掛けましょう。
薬学部って就職率は高いんですよね?