目次
- 出版社に就職するなら一般的な対策だけでは不十分
- 斜陽産業というのは本当? 出版社のトレンド
- ①紙の出版物の減収で業界全体は縮小傾向
- ②電子雑誌・書籍、オーディオブックの売り上げが伸びている
- ③海外進出が進んでいる
- ④M&Aが加速している
- 出版社の仕事内容
- 編集
- 営業
- 校閲
- 出版社で求められるスキル
- ①コミュニケーション能力
- ②企画力
- ③交渉力
- ④柔軟な発想力
- ⑤情報収集力
- ⑥体力
- 出版社を検討している人必見! 出版社で働くメリット
- ①個人の裁量が大きく自由度が高い
- ②将来的に独立することもできる
- ③芸能人や著名人に会える
- 知らないと後悔? 出版社で働くにあたって留意すべきこと
- ①経営が右肩下がりの企業も多い
- ②仕事量が多い傾向にある
- 大手4社を比較してそれぞれの特徴を押さえよう
- ①講談社
- ②集英社
- ③KADOKAWA
- ④小学館
- 出版社への就職でおすすめの4つの対策
- ①文章を書く練習をする
- ②志望企業の本を幅広く読んでおく
- ③普段から幅広い情報収集をおこなう
- ④出版社でのアルバイトやインターンに申し込む
- 出版社の志望動機の構成
- ①その出版社を志望する理由
- ②①の根拠となるエピソード
- ③入社後実現したいこと
- 出版社の志望動機の例文
- 例文①編集職
- 例文②校閲職
- 業界研究を徹底して出版社の内定を掴もう
出版社に就職するなら一般的な対策だけでは不十分
こんにちは。キャリアアドバイザーの北原です。
「出版社ってどんな業界なんですか?」
「出版社に行きたいけど何をすればいいんだろう……」
業界研究を進める就活生から、このような質問を受けることがあります。就活生からの人気が高い出版社ですが、その分倍率も高いので、業界や仕事内容への知識が曖昧であったり、選考対策が不十分であると、内定を取ることが難しいです。
この記事では、出版社の内定を取得するために、出版業界のトレンドや仕事内容、必要な選考対策を解説していきます。
出版業界はどんな業界なのか、就職するとどんなメリット・デメリットがあるのか、どんなスキルが求められているのかを理解し、出版社の内定取得を目指しましょう。
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斜陽産業というのは本当? 出版社のトレンド
「出版業界」と聞くと、紙の出版物が縮小しているイメージで、今後衰退していく業界なのではないかと考える人もいると思います。
たしかに業界全体としては経済規模が縮小していますが、成長している分野もあり、今後はその分野を中心に売上を伸ばしていくことが予想されています。また、他にもある事業を推進することで、今後の拡大を目指しています。
出版業界が今どのような状況で、何を目指し、今後どのように成長していくのかを知り、出版社の選考を受けるべきか判断しましょう。また、業界への理解度の高さを示すことで、志望度の強さを伝えることができますよ。
業界研究の際はぜひ業界研究ノートを作ってみてくださいね。
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①紙の出版物の減収で業界全体は縮小傾向
紙の雑誌と書籍は、販売が縮小しています。特に雑誌はインターネットやスマートフォン・SNSの普及で、購入しなくても得られる情報が増えたことにより販売数が減少しています。消費税増税や少子高齢化も購買数の減少に影響を与えました。
出版科学研究所の出版指標 年報 2023年版を見ると、紙の出版物の売上は、年々減少していることがわかります。一方で、電子の出版物の売上が増加していることで、出版物全体としては大幅な減少は抑えられていることも見てとれますね。
今後も紙の出版物は売上が減少していくことが予想されるので、電子の出版物を活用するなどして新たなビジネスモデルを確立できるが出版社の課題となるでしょう。
- インターネット・スマートフォンの普及
- 消費税増税
- 少子高齢化
②電子雑誌・書籍、オーディオブックの売り上げが伸びている
紙の出版物が減少している中、売上を伸ばしているのが電子雑誌、電子書籍です。インプレス総合研究所の電子書籍ビジネス調査報告書2023によると、2020年度は、新型コロナウイルス感染症や大ヒットした漫画などの影響で、電子書籍の販売額は前年から大きく増加しました。また、2025年には10年前の約3.5倍の販売額を記録すると予想されています。
また、活字離れをしている若年層向けにオーディオブックが浸透しており、「何かをしながら」本を楽しめる電子書籍が現れています。
各出版社は、今後電子書籍市場のシェアをどう獲得していくかが成長のカギとなっています。紙から電子に移動することで、簡単に書籍を手に入れられるようになったことから、電子書籍を取り扱う媒体でどのようにして自社の書籍を選んでもらうか、新たなマーケティング戦略を練っています。
③海外進出が進んでいる
各出版社は漫画やアニメの海外進出を進めており、海外での漫画の売上を10年弱で約3倍伸ばした企業もあります。
Netflixなど、海外に日本のアニメを配信する動画プラットフォームサービスが増えたことで、結果的に原作の漫画のファンも増えています。
ただ、原作のニュアンスを出す難しさがあったり、漫画では縦書きから横書きに直さなければいけなかったりと、一筋縄では行かない面もあり、国ごとに工夫して対策を練っている企業が多いです。
④M&Aが加速している
出版業界は電子書籍が拡大している傾向にあり、今後の事業の継続をかけて、電子書籍をより拡大させていくために、もともと電子書籍などを手がけている企業をM&Aで買収する動きがあります。たとえば2019年4月に、株式会社KADOKAWAが、「ニコニコ動画」などのweb関連事業を手がける株式会社ドワンゴを完全子会社化しています。
なお、電子書籍を手がける企業に限らず、出版社同士で合併し競争力を強める戦略も取られています。例として、2021年8月に、株式会社インプレスホールディングスが、主に航空関連の雑誌を取り扱うイカロス出版株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。
キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーコメント塩田 健斗プロフィールをみる
出版社ではM&Aだけではなくジョイントベンチャーの設立や他の事業会社との業務提携もおこなわれています。その目的の多くはAIやその他何かしらのテクノロジーを導入するためと考えられます。自社内でテクノロジー人材を育成して、新たな技術を生み出すには時間もコストもかかってしまうため、すでにAIなどテクノロジー分野に明るい業界と手を組んだ方が双方にとってメリットを見出せます。
たとえば2021年、講談社・集英社・小学館が総合大手商社の丸紅と新会社設立の発表をおこないました。この取組みを通じて返本などにかかわる経済的損失を軽減させるためのICタグ設置および機械学習技術の導入をおこなおうとしています。
AIを使って出版社がどのようなビジョンを描いているのか掘り下げよう
ただし、出版社でAIやテクノロジーの導入が進んでいるとはいえ業界研究をする際には「AI」という単語に惑わされすぎないように注意しましょう。
AIはあくまでも基本的な技術の総称であり、単に「AIを導入している」だけではどの企業もおこなっていることなので出版社独自のトレンドを掴めているとは言えません。そこから企業がどのような世界を作ろうとしているのか、なぜその技術が必要なのか、というところまで掘り下げられるようにしましょう。
出版社の仕事内容
ここまで出版業界の状況やトレンドを説明しました。業界全体の動向ももちろん重要ですが、実際に働くイメージを持つためには、具体的に仕事内容を理解することが大切です。
出版社は、編集、営業、校閲などの仕事内容があります。1つの作品を作ること、またその作品で利益を出すことを目的に、それぞれが役割を担っています。
自分がどんな形で出版社で活躍できるのか具体的にイメージするために、自分に合った職種が何かを理解していきましょう。
編集
- 企画
- 記事作成(構成・レイアウト・記事の執筆)
- インタビューや写真撮影(交渉、場所の確保、QAの準備)
- 印刷所に製本を依頼
編集職は、書籍の総合プロデューサーのような役割を持っていて、1つの書籍の企画から製本までのすべての工程を管理します。
まずは企画を立案し、必要なライター、デザイナー、イラストレーター、カメラマンなどを手配します。上司から企画の承認が降りると、ライターに執筆を依頼したり、自らが書いて記事を作成します。
雑誌などで、インタビューや写真撮影がある場合は、モデルの交渉、撮影場所の確保やインタビュー内容の準備などをします。時期によっては、映画作品の世界観に合わせたイベントを企画することもあります。原稿の作成が終わったら、印刷所に製本を依頼して書籍を完成させます。
キャリアアドバイザー
納期に間に合わせられるよう、すべての工程に責任持つ仕事です。
営業
- 広告営業:出版社に出資してくれる広告主を探す
- 書店営業:書店に自社の出版物を置いてもらえるように交渉する
雑誌の裏表紙に、企業の名前が並んでいるのを見たことがあると思います。その企業は出版社の広告主になっており、企業が出版社に出資するかわりに、出版社が企業の宣伝をするという契約を結んでいます。広告営業は、広告主になってくれる企業を探す仕事です。
また、書店に置ける本の数が多いほど、購入される機会が増え、利益につながります。書店営業により、書店に自社の本を置いてもらえないか交渉しています。
扱う額が大きいので交渉が難しく、調整力、粘り強さ、積極性に自信がある人に向いているといえるでしょう。ただ、仕事内容が他の業界にも通じるので、営業職を志望する場合は、「なぜ出版社の営業を志望するのか」を明確にしましょう。
また、自分には営業職は向いていないのではないかと考えている就活生もいると思います。営業職への適性の見極め方は以下の記事で紹介しているので、参考にしてみてくださいね。
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校閲
- 誤字脱字・日本語の誤りを確認する
- 事実との矛盾がないか確認する
校閲は、出版物に誤字脱字がないか、事実と異なる部分がないかなどを確認します。作品の信頼を担保する最後の砦となります。緻密で正確な作業が求められるうえに、膨大な量の仕事をこなさなくてはなりません。
細かい作業を集中力を持って続けられる人や責任感が強い人が向いていると言えます。
もし誤りを見落としてしまうと、広告企業や読者の信用を落としてしまうので、出版社にとって大きな打撃となるため、責任が大きい仕事です。
出版社で求められるスキル
面接では、企業で活躍できる人材であることをアピールすることが大切です。そのために、出版社がどんな人材を求めているのか確認していきましょう。
ここからは、出版社が求めるスキルを紹介していきます。自己PRを考えるにあたって、自分の強みと企業が求めるスキルが一致していると、効果的なアピールができるようになりますよ。
①コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、「人の気持ちや感情をくみ取り、スムーズに意思疎通ができる力」と考えましょう。
もしコミュニケーション能力がなければ、たとえば編集者は、ライターやデザイナーに正確に指示が伝わらず、意図とは異なる成果物を出され納期に間に合わなくなる可能性があります。営業では、相手が求めるものを把握できず契約を取ることが難しくなるでしょう。
キャリアアドバイザー
自己PRでコミュニケーション能力をアピールする場合は、人の気持ちに寄り添い何かを成し遂げた経験があると効果的ですよ。
コミュニケーション能力は必ず求められるスキルであるため、積極的にアピールしてみましょう。自己PRでのコミュニケーション能力のアピールの仕方は、以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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②企画力
企画力とは、現状の課題や潜在的なニーズを分析し、それを解決するための企画を実現させる力のことをいいます。
たとえば編集者は、読者が今求めているものは何か日々チェックしながら、ニーズとマッチする企画を実現させる必要があり、また営業は、自社の売り上げを増やすために何が必要か、どうアプローチすればいいか、と企業の課題を解決するための企画力が必要になります。
キャリアアドバイザー
企画力をアピールする場合は、たとえば「学園祭の集客が少なかったため、今人気の芸能人を呼んで盛り上げた」など目的達成のため何かを一から企画をした経験があると効果的なアピールとなるでしょう。
③交渉力
コミュニケーション能力と似ていますが、交渉力も出版社で勤務するうえで必要なスキルです。
たとえば編集者は総合プロデューサーのような役割を果たしていることから、作品作りにかかわるすべての人と交渉をする必要があります。また、社外だけでなく社内の営業や校正とも交渉し、1つの作品を作り上げる必要があります。
営業でも、自社の書籍をどれほど書店に置いてもらうか、どうしたら広告主になってもらえるのか、互いの利害を一致させるような交渉力が必要です。それぞれの事情を考慮しながら、目指す作品像に持っていくためには、交渉力が欠かせません。
キャリアアドバイザー
自己PRで交渉力をアピールする場合は、それぞれの事情をくみ1つの目標を達成した経験を伝えられると良いでしょう。
④柔軟な発想力
柔軟な発想力も、出版社で求められる重要なスキルの1つです。特に編集者は、何が読者のニーズなのか把握し、0から1を生み出すような発想力が必要になります。
読者の層にもよりますが、ニーズは常に変わり続ける可能性があるので、柔軟な発想力が必要です。また、企画を上司に納得してもらえるまで再考するので、自分の考えに凝り固まらないという点でも柔軟性が求められます。
営業も、顧客ニーズに答えられるのはどのような手法か、あの手この手でアプローチする柔軟な発想力が求められます。校閲でも、直そうとしている文章がライターが書きたい意図と異なっている可能性はないか、自分が常に正しいと思わない柔軟性が必要です。
キャリアアドバイザー
柔軟な発想力をアピールする場合は、既存のルールを疑って変革した経験や、課題に感じたことに対して、誰もが思いつきにくい解決方法で取り組んだ経験をアピールできると良いですよ。
⑤情報収集力
世間が求めているものを知るために、情報収集力も出版社で必要な能力となります。自分の興味の範囲で情報収集するのではなく、世間のニーズは何か、という視点で広く収集する力が大切です。
特に編集者は、読者のニーズに沿った情報を提供するために、常に最新の情報を追いかけることが重要になるのです。営業職でも、企業や読者が何を求めているのか相手方について情報収集をして、ニーズに答えられるような提案をする必要があります。校閲でも、事実関係を把握するため、時事的な問題に常にアンテナを張っていることが重要です。
キャリアアドバイザー
情報収集力をアピールするためには、課題解決のために幅広く情報収集したエピソードがあるとアピールになりますよ。ただ闇雲に情報を集めた経験ではなく、何を目的に情報を集めて、どう役立てたのか話せるようにしましょう。
⑥体力
出版社の仕事は、膨大な量を長期的にこなすことになります。部署によっては休日出勤や残業も多く、どんなに能力が高くても体力がなければ続けることが難しいです。
また編集者は、納期に間に合わせるためすべての関係者の進捗を管理し、時には急かしたりする必要があるので、「精神的な体力」も必要です。営業も、1回の交渉で諦めない粘り強さ、校閲も膨大な量を集中力を途切れさせずチェックする辛抱強さが求められ、いずれもタフな人が合っているといえます。
キャリアアドバイザー
自己PRではタフさは他のスキルに付随して主張できると良いですね。たとえば、交渉力に付随させて「目標達成のために〇か月間粘り強く交渉した」などとアピールできると良いでしょう。
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当然ですが、非常に大切なスキルは「熱意」です。「熱意」と言うといかに自分がその出版社の書籍を読んできたのか、たとえば「〇〇という作品のこのシーンのこの腕の動きがすばらしくて」などと語ることだと思っている人がいるのですがそうではありません。
1つの目標を達成するためには何をすればいいのかを俯瞰して戦略立てる力、人に協力を仰ぐための言語化能力、探求心や好奇心、こうした力の源には、その目標に対してやりきりたい、そして好きだという「熱意」があるからです。
ビジネスの目標は基本的に利益を上げることです。そのためには「この腕の動きの描き方が素晴らしい」と語るだけの熱意ではなく、利益を上げるために、そして目標をやりきるために何ができるかを網羅的に考えられる熱意が必要です。この2つの違いがいまひとつピンとこない、という人は周囲の社会人にビジネスにおける熱意についてぜひ聞いてみましょう。
出版社を検討している人必見! 出版社で働くメリット
出版社を受けるべきかまだ決断できていない人もたくさんいると思います。そこで、出版社で働くとどのような利点があるのか、メリットを紹介していきます。ここで紹介する内容が自分にとってプラスだと感じられるか考え、選考を受けるか判断してみてくださいね。
出版社で働くことのモチベーションは何なのか、チェックしていきましょう。
同じ本を扱う仕事として図書館職員という選択肢もあります。もし図書館での仕事も興味がある人はこの記事も参考にしてみてくださいね。
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図書館の仕事は7つに分けられる! 司書資格の必要性と注意点を解説
図書館の仕事は主に7つに分けられます。図書館で働くためには、仕事内容の理解を深めることは必須です。こちらの記事では仕事内容はもちろん、おすすめの資格についても解説しますので、是非確認してみましょう。
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①個人の裁量が大きく自由度が高い
出版社の醍醐味といえば、個人の裁量が大きくやりたいことができる点です。たとえば編集者は、1冊の出版物を作り上げる企画から製本まで、すべての工程を自分の裁量で進めることができます。何をするか、どのように作り上げるかは自分で考えて進めていきます。
発想力を活かしたい、読者が求めているものを自分の力で実現させたい、人からの指示で動くのではなく主体的に働きたい、という人にはぴったりな仕事だと言えます。
②将来的に独立することもできる
編集職でキャリアを積めば、将来的に編集者として独立することも可能です。ライターやカメラマン、デザイナーなど、さまざまな分野のプロフェッショナルとの人脈があれば、独立後も活躍することができます。
もちろん出版社でキャリアを積むことも可能ですが、キャリアプランの幅が広がることで柔軟な将来設計ができますね。
③芸能人や著名人に会える
編集の仕事では、企画が通れば有名な芸能人や業界の著名人と一緒に仕事をし、非日常的な経験を積むことができます。ただ、読者にどんな価値を提供できるのか、あくまで読者目線の企画を立案する必要があります。
読者に刺さるものであれば、「好き」を題材に企画できる仕事なので、通常ならばかなわないことを実現させることができます。
知らないと後悔? 出版社で働くにあたって留意すべきこと
ここまで、出版社で働くことの良い面を見てきました。ですが、良いことがある反面、デメリットもあります。入社後にギャップがないように、どのような理由で悩む社員が多いのか、留意点を理解しておきましょう。
①経営が右肩下がりの企業も多い
紙の書籍や雑誌の販売が縮小している影響で、紙の出版物から電子化への移行への対応が難しい企業などでは、経営が右肩下がりになっている企業もあります。
電子化に対応できていない場合、経営が困難になるリスクが生じると言えます。
②仕事量が多い傾向にある
出版社の仕事では納期が存在するうえに、1冊を仕上げるための工程が多く、作業量は膨大です。それに対して採用数が少ないので社員1人当たりの負担が大きく、残業や休日出勤が当たり前になっている企業や部署も少なくありません。
また給与制度に裁量労働制を採用している企業では、仕事にかける時間や進め方を自分の裁量で調整できるメリットがある半面、残業時間にかかわらず給料が一定という特徴があります。
大手4社を比較してそれぞれの特徴を押さえよう
出版社にはどんな特徴がありどんな仕事があって、何が魅力的で何が大変なのか、大まかに理解できたのではないでしょうか。
業界研究の最後に、大手4社の社風や特徴を解説します。
自分らしく働くには、働く環境や雰囲気、モチベーションとなる作品も大切な要素です。自分に合いそうな企業はどこか、イメージしてみてくださいね。
①講談社
講談社は「おもしろくて、ためになる」をモットーに、世界中の読者にコンテンツを届けています。
また、クリエイターをサポートする米国の巨大クラウドファンディング・プラットフォーム「Kickstarter」と提携し、日本のクリエイターの海外進出を図っています。
業界動向サーチの売上高ランキングによると、講談社は出版業界の中で2位の売上高を誇り、また創立100年以上の歴史を持っています。資金力と培ったノウハウで、時代の流れや読者のニーズに柔軟に対応していることが強みです。
- ViVi
- 週刊少年マガジン
- 進撃の巨人
- のだめカンタービレ
- 逃げるは恥だが役に立つ
②集英社
集英社は、「創意」「自信」「協調」を社是とし、人が夢中になれるようなコンテンツやサービスを創ることを理念としています。大ブームを生んだ「鬼滅の刃」をはじめ、下記の人気作品を多数輩出しています。
また、出版物に留まらないさまざまな活動をおこなっています。たとえばバスケットボール選手として、将来アメリカの大学やプロでの活躍を目指すプレーヤーを支援する、「スラムダンク奨学金」という制度を運営しています。
集英社の強みとしては、週刊少年ジャンプで「鬼滅の刃」などの人気漫画を掲載していることから、根強い漫画ファンの支持を得られることが挙げられます。電子書籍としての販売も実施していることから、今後も幅広く読者が増えることが予想されます。
- non-no
- Seventeen
- 週刊少年ジャンプ
- 鬼滅の刃
- ONE PIECE
- HUNTER×HUNTER
③KADOKAWA
KADOKAWAは、「新しさを極め続ければ変わらないものが見えてくる」という意味の「不易流行」を理念に掲げており、電子書籍や映像部門など、多角的な分野に参入しています。
出版業界は今後、紙媒体以外の事業の強化が課題となっていますが、細田守監督作品をはじめとした映画制作や、インターネット事業に強いドワンゴとの統合による映像制作のノウハウなど、多角的な事業が強みとなっています。
KADOKAWAのデジタル化は社内にも進んでおり、制約の少ない自由度の高い働き方ができること、一人ひとりの強い個性や「好き」な気持ちを発揮できることが特徴です。選考では、好きなものへの熱い気持ちや何をどう実現させたいか、具体的に話せるようにしましょう。
- 君の名は。
- おおかみこどもの雨と雪
- サマーウォーズ
- 時をかける少女
- 涼宮ハルヒの憂鬱
- 週刊ザテレビジョン
④小学館
「人生の中で大きく実となり、花開く種子をまく」ことを理念に掲げる小学館は、児童書に強みを持っています。
ドラえもんやポケットモンスターなど、人気キャラクターを多数持っていることから、まんが、ゲーム攻略本、アニメ・映画の関連本、絵本、知育・学習、趣味まで、キャラクターを軸に出版物の幅を広く持っていることが小学館の強みです。
またデジタル部門では、基本的に全部無料で読める漫画アプリ「マンガワン」を持っており、より幅広い読者を増やすチャンスを持っているという強みがあります。
子供の目線に立ってワクワクしながら考え続けられる人に向いている会社と言えるでしょう。
- CanCam
- 美的
- ドラえもん
- ポケットモンスター
- 妖怪ウォッチ
- 名探偵コナン
アニメ業界への就職を考えている方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみましょう。
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出版社への就職でおすすめの4つの対策
ここまで、業界のトレンドや仕事内容、各社の特徴について説明してきました。
「仕事は大変そうだけど、やりがいをもって働けそうだな」「あの人気作品に携わってみたいな」と少しでも前向きな気持ちを持てているのであれば、ぜひ出版社への就職にチャレンジしてみましょう。
ここからは、自己分析やWEBテストなどの一般的な対策に加えて、出版社に就職するために必要な選考対策を説明していきます。超難関と言われる出版社ですが、必要な対策を押さえ着実に準備していきましょう。
①文章を書く練習をする
まず、出版社は膨大な量のエントリーシート(ES)が課されます。A4サイズ4、5枚に、作文を課すという企業もあります。
そのため、普段から文章を書く練習をしておくことが大切です。志望する企業の過去数年のESや作文に取り組んでみましょう。
筆記試験やESで作文が課されることがありますが、筆記試験の場合制限時間が設けられているため、時間内に書ききれるように練習しておくことが大切です。
文章を書く練習は思考力を鍛えることになるので、面接対策にもなります。大学4年生になると選考が本格化するため、大学3年生の夏頃から準備するのがベストです。
作文の書き方については、以下の記事で説明しているので参考にしてみてくださいね。
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出版社によっては小論文を課す企業もあるため、その場合は以下の記事を参考に書き方を勉強しましょう。
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②志望企業の本を幅広く読んでおく
面接では、「好きな書籍」を問われることがよくあります。なぜ好きなのか、他の作品と比べてどうなのか、どこを改善すべきだと思うか、他に好きな作品はないのか、などと聞かれる可能性があります。
たとえば入社後に編集職につく場合、作者の信用を得るためには、作品への理解が欠かせません。営業職であっても、作品をアピールするためには作品の内容を知っていることが不可欠です。出版社で働くことの前提として、作品への深い理解を持つようにしましょう。
複数の作品を読んで、なぜ好きなのかという主観的な観点と、なぜヒットしたのかという客観的な観点でまとめておくと良いですね。
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他社の作品を挙げること自体は問題ありませんが、その企業よりも他社の志望度が高いと思われないよう注意が必要です。あくまでもその企業で働きたいことが伝わるようにしましょう。
また、「最近読んだ本は?」という聞かれ方をする可能性もあります。人柄が伝わる最近読んだ本の伝え方はこちらで紹介しているので、確認してみましょう。
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③普段から幅広い情報収集をおこなう
出版社の筆記試験では、幅広い知識が問われます。時事問題からエンターテインメントまで、日頃からアンテナを張って情報収集できているかどうかが評価対象になります。
出版社に就職した後も、幅広い知識が問われることになるので、その練習と考え、日頃から幅広く情報収集し筆記試験に備えましょう。選考が本格化すると情報収集に割ける時間が減るため、大学3年生の夏頃から開始できると良いですね。
講談社が、簡単にチャレンジできる筆記試験の練習問題(各10問、計30問、ここでは選択式)を掲載しています。動くイラスト付きで楽しみながら挑戦できるので、トライしてみてください。
④出版社でのアルバイトやインターンに申し込む
出版社への就職は難関であることから、周囲と差別化するには、アルバイトや長期インターンに申し込むのも1つの手段です。
ただ、他の業界に比べると、インターンの募集がかかる機会は少なく、開催する場合も倍率は非常に高いものとなります。
仕事内容を知るには、比較的選考のハードルが低い出版社でのアルバイトを経験することがおすすめです。出版社の編集アシスタントができるアルバイトなどがあります。
他にも就活が有利になるアルバイトを知りたい人はこちらの記事を参考にしましょう。
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キャリアアドバイザーコメント加藤 大智プロフィールをみる
出版社への選考を希望する学生は、普段のアルバイト、サークルやゼミ活動だけではなく、ビジネス感覚を掴む練習になる経験を積んでおくといいでしょう。出版業界はとにかく倍率が高いです。しかし、「ただ好きだから」「記念受験」で選考に挑む学生も少なくありません。
こうした他の学生との差別化をはかるためには、「自分は記念受験ではなくビジネスとしてこの業界を捉えています。そのためにビジネス感覚を身につける努力をしています」というアピールができることは好印象を与えられるでしょう。
内容は必ずしも出版業界に関連するものではなくても構いません。たとえば家が自営業の人は実家の手伝いを通じて何か商品開発に携わってみる、旅行が好きな人はヒッチハイクなどを活用して人に頼ることでお金をかけない旅をしてみるなどです。これは一見ビジネスと関係がないように見えますが、営業交渉能力という意味では立派なスキルが身に付きますよ。
出版社の志望動機の構成
出版社の仕事内容や働くメリットを押さえられたら、実際にどう志望動機を作成すれば良いのか考えていきましょう。
志望動機は、一緒に働きたいという意欲を伝えるものです。そのため熱意がわかりやすく伝わるように、構成方法を考えることが大切です。
なぜ志望するのか、どうしてそう考えるのか、何を目指しているのかを簡潔に、根拠を持って伝えられるように、志望動機の構成を考えていきましょう。
①その出版社を志望する理由
まず、その出版社を志望する理由を言い切りましょう。たとえば、コンテンツを通じてどんな価値を生み出したいかや、企業のどんなコンテンツに惹かれていて貢献したいと思ったかなどを伝えると良いでしょう。
志望理由を、「企業の作品が好きだから」「興味があるから」などの自分の興味関心を満たすことにとどめるのではなく、作品を通して読者に価値を届けたい、といった企業に貢献できる内容にすると、面接官に刺さる内容になりますよ。
②①の根拠となるエピソード
志望する理由に根拠を持たせるために、過去にどのような経験をして、どう考えたといったエピソードを話しましょう。
たとえば、自分でコンテンツを生み出して多くの人に影響を与えてやりがいを感じた、志望企業のコンテンツに影響されて苦難を乗り越えた、志望する仕事に求められる強みを発揮したなど、出版社の作品や仕事内容に通じるエピソードが効果的です。エピソードで志望動機の裏付けをし、熱意や説得力をプラスしましょう。
また、自分の強みとなるアピールポイントを発揮して価値を生み出した経験を話すと、自己PRにもつながります。
③入社後実現したいこと
最後に、具体的に入社後に実現したいことを説明しましょう。ここでは、下記のポイントを含めることが大切です。
- 企業が展開する事業と大幅に逸れないようにする
- その企業でなくては実現できないことを伝える
まず、企業が展開する事業から大幅に逸れた内容を伝えないようにしましょう。たとえば児童書を強みとする企業で、女性誌で活躍したいなど、企業の方針から逸れてしまう回答は避けましょう。
また、他の出版社では実現できないことを話しましょう。たとえば「〇〇社は〇〇事業に強みがあり、自分の〇〇の強みを活かして実現したい」や「〇〇雑誌の〇〇な点に魅力を感じ、〇〇の経験を活かして実現したい」といったように、企業の事業、コンテンツ、理念、社風などを絡めて具体的に話すことが大切です。
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出版社の志望動機の典型的なパターンとして、「〇〇という作品のおかげで苦難を乗り越えられた。自分も他者にそうした経験を与えたい」という流れが挙げられます。悪くはないのですが、ともすれば採用担当者に「またこのパターンか」と思われてしまうリスクがあります。
このように出版社を志望する学生の多くは自分がどんなにそのコンテンツを好きかどうかをアピールしがちですが、それはその企業への知識が試される筆記試験で高得点を目指す、ESのその他の項目で記載する、などで十分示すことができるはずです。
もしこのような流れで志望動機を書きたい場合には、自分だけではなく友人や家族も同様の経験をしたことがあるという第三者の情報を入れたり、他者に同様の経験を与えるために自分はどのようなスキルを貢献することができるのか、という入社後がイメージできる情報を入れたりすることを忘れないでください。
出版社の志望動機の例文
志望動機の構成の仕方について説明してきました。では実際に、どのように作れば良いのか、具体例を挙げていきます。どんな回答が面接官に伝わりやすいのか、ぜひ参考にしてみてください。
出版社に限らない志望動機の例文はこちらを参考にしましょう。
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例文①編集職
まずは、ファッション誌の編集職を志望する場合の志望動機の具体例を紹介します。
サブカルチャーファッションのディープな魅力を多くの人に伝えたく、貴社を志望します。
私は、マイナーですがディープな魅力を持つものを広く知ってもらうことに価値を感じています。大学のサークル活動で、長い歴史と、重厚な音色が特徴な「バンドネオン」という楽器を演奏しています。
多くの人に魅力を届けたいと思い、企画力を活かしてSNSでショート動画を毎週流したところ、拡散され、学園祭では講堂を貸切って演奏することができました。マイナーなものが自分の力でメジャーに近づくことに、強くやりがいを感じました。
私は、貴社に入社し自分が大好きなサブカルファッションを広めたいと感じています。貴社の雑誌〇〇でサブカルファッションの取り上げ方に魅力を感じ、また貴社は事業提携によって電子化を強化していることから、幅広い層に受け入れられる強固なプラットフォームがあると感じ、入社してファッション誌の成長に貢献したいです。
この例文は、志望する理由をエピソードで根拠づけ、また実現したいことをその企業でならではの内容で締めている点が良いですね。志望動機全体に説得力があります。
例文②校閲職
次に小説の校閲を志望する場合の例文を紹介します。
貴社の作品の臨場感やリアルさに魅力を感じ、校閲職として携わりたいと考え志望します。
私は日本文学史ゼミの幹事長を務めており、大学合同のプレゼンのため、代表グループの論文をチェックしました。源氏物語を題材にした論文でしたが、紫式部が何を思って書いたか、他者の解釈と大幅にずれているところはないか、紫式部の他の書物と通じる解釈はできないか、ゼミ生の考察は歴史上の事実とずれているところはないかなど、発表の信頼性を高めるために多角的にチェックをおこないました。
発表後は、「場面がリアルに想像できる」「持っていなかった視点での解釈が新鮮だ」「源氏物語の新たな一面を知った」との感想をもらい、原作の良さをさらに広げられる校閲の仕事に興味を持ちました。
貴社の作品はどれも臨場感やリアルさがあり感情移入しやすく、それは校閲の方が丁寧に事実関係や文章を確認されているからなのではと感じています。私も校閲職につき、読者が物語の中に入っているような感覚を味わってもらえる作品作りに携わりたく、貴社を志望します。
校閲の仕事は、出版物の信頼性を高めるものであり、粘り強さ、正確な情報を突き止める力、柔軟な思考が求められます。また、作者の意図に合わせて修正する必要があり、地道に研究する力も問われます。この例では、そのような強みをアピールしていることがポイントです。
業界研究を徹底して出版社の内定を掴もう
出版社のトレンドや仕事内容、社風を理解し、選考対策のイメージができましたか。倍率が高く、広く深い業界研究、企業研究が必要になるので選考対策はかなり大変になるでしょう。ただ、携われる仕事やメリットに強く惹かれた人もいるのではないでしょうか。
難易度が高いといえど、業界研究や出版社ならではの選考対策を徹底することで選考突破は可能です。今回解説した内容を実践して、内定の獲得を目指しましょう。
中小企業では、経営者の高齢化により後継者が存在せず、事業を継続する目的でM&Aをおこなう動きもありますよ。